第百四十八話 隠された古代の機械設備
ロックサラマンダーの肉を保存できるように、棒に刺して干しながら持って行くようにする。俺が敵から奪った斧を肩にかけて、薄く切ったロックサラマンダーの生肉に塩をまぶし、それをぶら下げて干しているのだ。ソーラーパネルはデカいので、帰りに回収しようという事になった。
「やっぱり朝には死体が灰になってたな」
「王都の奴と同じだ」
「いったいなんだったんだかな」
俺が殺した二つの死体は、朝には灰になって風化してしまった。
「アイツらの弱点は尻尾だ。尻尾で生物からエネルギーを吸って体を治したりするようだ」
「吸血ってことか?」
「まあそんなところだ」
小屋の周辺を辿っているうちに、頭を下げた白い花が咲いている場所に出る。
「白い花が咲いている」
するとマージが言った。
「ダマの花だねえ。ぶら下がった花の中を見ておくれ」
花の中を見ると、玉のような物があった。
《珍しい植物です》
そうだな。
「玉がある」
「それがダマの実さね」
ボルトが言う。
「結構広くにありますぜ」
「袋一つあればいいさね」
「もっといっぱい取ったらいいんじゃねえですか?」
「全部取っちまうと、次に咲かなくなっちまうからね」
「わかりやした」
そして俺達は、ダマの実をとり麻袋に詰め始める。それぞれの袋がいっぱいになったところで、大きな岩に腰かけて水袋から水を飲み始めた。
「本来ならこれで戻るところなんだけどねえ。その施設とやらが見つからないねえ」
《恐らく地上にあるような施設ではない可能性があります》
「また地下にあるのかもしれない」
「これだけ探しても見つからないという事は、きっとそう言う事さね」
そこでベントゥラが言った。
「渓谷の方を見てない」
「渓谷に降りるしかないか」
「だな」
深い渓谷があり、俺達はそこを後回しにしていた。マージ曰く、渓谷には渓谷の魔獣が出るらしく、充分に警戒する必要があると言っている。何故ならば渓谷を歩いている時に、上から降ってくるらしいのだ。
「鎧の魔石を替えよう」
俺は皆の鎧から、魔力が半分ぐらいになった魔石を取り新しい魔石を補充した。これで万が一魔獣が降ってきたとしても、死んでしまったりすることは無いだろう。
慎重に渓谷に降りていくと、そこには沢が流れており皆がそこで水をくむ。
「川に沿って登るぞ」
「「「「おう」」」」
俺達はその沢の脇を進み始める。上に注意しながら一時間ほど登っていくと、俺のサーモグラフィーに映るものがあった。崖の壁面に、ひょこひょこと顔を出しているのが見える。
「マージ。何か細長いのが岩肌にいる」
「お、先に見つけたのかい? それは良かった」
「あれが魔獣か?」
「だねえ」
「結構な数がいるようだぞ」
「フライヴァイパー。毒を吐くのさ。腐食系の毒だから粘膜についたりすると危険だよ」
「わかった。メルナ、みんなの鎧を密封しよう」
「うん」
防炎用の仕掛けを施しているので、毒が入り込む隙間を塞いだ。そして俺がマージに聞く。
「とりあえず、毒は防げるだろう。あと注意する事は?」
「飛ぶんだよ。だから近づいた時に斬るしかないねえ」
「だそうだ」
「「「おう」」」
俺は干し肉を、背負子から取り出した皮袋にしまった。これが毒にやられてしまうと、食えなくなってしまう。それと引き換えに、レーザー剣を取り出して皆に告げる。
「俺が先に行く。皆は様子を見てついて来てくれ」
そう言って俺は先を進んで行く。魔獣の下に来た時、マージが言ってた通りに上からボトボトと蛇が降りかかって来た。
シュオォォォォ!
俺はレーザー剣を出して構える。落ちて来る蛇にはひれみたいなものが付いていて、それで浮力を得て飛んでいるようだ。俺に向かって飛んで来たので、レーザー剣をガイドマーカーに沿って振った。
ジュン。
手ごたえ無く切れた。次々に俺に降りかかってくるが、一匹も逃がすことなく斬る事が出来た。
凄い性能だ。
《エネルギー切れを注意してください》
確かにそうだな。
ヒュンヒュンと振り回しているが、今の所エネルギー切れを起こす事は無い。次第に魔獣の数が減り飛んでこなくなる。俺が後ろを振り向くと、仲間達が俺の方に来た。
「その剣凄いな」
「そうだがかなり危ない。使い方を間違えば自分を切ってしまうだろう」
「怖えな」
「とにかく進もう」
「おう」
その蛇の巣窟を抜けると、ザーッと音が聞こえて来る。
「どうやら先に滝があるようだな」
ベントゥラが言い皆で進んで行くと、そこに滝が現れた。俺の強化した聴覚に、何かの電子音のようなものが聞こえてくる。
「滝の奥から音が聞こえる」
「音? 何だろう」
するとマージが言った。
「見つけたんじゃないのかい?」
「行ってみよう」
滝の前に行ってみると、その奥に洞窟が透けて見える。
「横から行かないとダメだな」
「そうしよう」
滝の側に行くと激しい水の流れの奥に、明らかに洞窟がある。
「流れが強い。皆を縄でつなごう!」
「わかった」
一人一人を縄でつないでいき、俺が先頭になって滝に入った。ジャバジャバと水圧がかかるが、強化鎧のおかげで水がしみこむ事も無い。全員が中に入ったので、綱を解いて洞窟の奥を眺める。
「そんなに深くねえみてえだぞ」
少し奥に進むと、直ぐに突きあたりになっていた。
《端末を》
アイドナに言われ、俺が背負子から端末を取り出し開く。
《籠手を外してください》
俺が籠手を外してパネルに手を置くと、アイドナが勝手に操作し始めた。
ピーピーピーピー!
音が鳴り出した。
「な、なんだ?」
「岩が…」
「動いてるのじゃ」
「どういうことだ?」
目の前の岩が開きだし、その奥に通路が見えてくる。
「見つけた」
そこには近代的な鉄で出来たような床と壁があり、それが奥まで続いているのだった。
俺はマージに言う。
「古代遺跡と似たような場所に出た」
「行くしかないだろうねえ。仲間を呼ぶとか言われちゃ放っておけない」
「わかった。皆行こう」
「なんかおっかねえな」
「万が一がある。みんなは後ろを突いて来てくれ」
皆が頷き、俺達はその中へと進みだした。薄っすらと明かりがついていて、エネルギーが通っているのが分かる。その時、俺達が入って来た入り口が閉じてしまった。
「おわ。閉じ込められたぜ」
そしてベントゥラも言う。
「こんなダンジョン見たことねえ」
「とにかく先を確認するしかない」
そのまま先に進んで行くと、自動ドアのような場所に出た。
《壁際にパネルがあります》
俺がそこに行くと、端末と似たようなパネルが壁にあった。
《パネルに触れてください》
俺が手を触れると、アイドナが指を動かす。
《解錠しました》
ピー。ウィィィィィ!
「開いたぜ!」
「入ろう」
その自動ドアを中に入ると、またすぐに閉まった。外とは厳重に隔離されているらしく、決められた者しか入れないようになっているようだ。
恐る恐る入っていくと、やはり王都のようなシステムがあった。
「これが探していた物で間違いないらしい」
《エネルギーが循環しているようです》
ソーラーか。
《恐らくは》
「恐らくこれが仲間を呼び寄せる物だ」
「これでか…」
「下手に触るわけにはいかんが。少し調べてみたい」
「まあ俺達にゃ、ちんぷんかんぷんだ。コハクに任せるしかねえ」
「わかった。その辺に座って休んでいてくれ」
「そうさせてもらうか」
俺が端末を持って操作パネルらしきところに行くと、丁度アタッシュケースが収まりそうな窪みがあった。そこに俺が回収したアタッシュケースを収めてみると、一気にその施設にエネルギーが通い始めるのだった。