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第百四十七話 回収した機器の検証

 アイドナが回収した端末の情報を全て確認し、これが何の起動装置なのかをつきとめた。そして俺に告げた内容は、想像を超えた物だった。


《王都の地下にあったような文明の施設が、リバンレイ山のどこかにあるようです》


 なんだと? ということは、これはその施設の起動装置か。


《そのようです》


 そこで死んでいる二体は、その施設を起動しに来たという事だ。


《はい》


 あの小屋を拠点にして、その施設を探していた?


《その可能性が高いです》


 まだその施設を見つけていないのだろうか?


《この端末に起動した履歴がありませんので、そう推察するのが正しいです》


 なんの施設だろうか?


《王都にあった衛星兵器のコントロールシステムであれば、仲間を呼ぶという表現はしないでしょう。王都やパルダーシュに出現した魔獣を、どこからか呼び寄せるシステムと推測》


 なるほどな…。あと、その武器やソーラーパネルは、この世界の文明には似つかわしくない。俺のように、この世界の外から来たのか?


《確定ではありません。その確率もありますが、また他の可能性もあります》


 どんな?


《異星人やタイムリープなどが考えられます》


 そうか。確証はないという事だな?


《はい》


 だが、この世界の生き物ではないと判断するんだな?


《はい。王都を襲った魔獣や、そこの死体は、明らかにこの世界の生物とは遺伝子構造が違います。テロメアがかなり短く、活動を停止すると直ぐに崩壊してしまうようです》


 その二体は、戦いの終わりに尻尾を生やしていたが、あれはなんだ?


《生体活動を継続する為の、エネルギー吸収機関と考えられます》


 闘技場の安置室でも血を吸ったらしいな。


《正確には体組織を取り込んだという事でしょう》


 死にそうになって、俺の体組織を吸収しようとした……か。それで復活する可能性があると。


《はい》


 俺は次に、回収した武器の使用感を確かめる。


 まずはレーザー剣を操作してみたが、これはこの世界の人間が扱うにはかなり危険なものだ。アイドナのガイドマーカー通りに使えばそれほど危険ではないが、これが万が一自分の体に触れたら、自分で自分を真っ二つにしてしまうだろう。アイドナが解析し、ようやく持ったまま光を出し入れできるようになった。


 また、ジェット斧は予め軌道を考えながら振らなければ、まったく違う方向に向かってしまう。扱いを間違えば、周りにいる味方を殺してしまうかもしれない。


 この武器は根本的に、この世界の物とは違う。


《その二体は、この武器を完璧に使いこなしていたようです》


 俺のような機能でもあるんだろうか?


《武器に安全装置のようなものが付いていませんが、体の方に何らかの対策があったのかもしれません。ほとんど崩壊していますが、死体を調べますか?》


 みてみよう。


 俺が女の死体に近づく。既に崩壊はかなり進んでいて、じきに灰になってしまうだろう。


《腹部を切って手を入れてください》


 女の腹を切って手を入れ、アイドナが分析し始めた。


《AIの存在は確認できません。ナノマシンなど無機物も確認できません。通常の生体のようです。脳を確認しましょう》


 頭を割ったデカブツの頭の中に手を入れる。


《こちらも同じです》


 何か分からないかな?


《服を脱がせましょう》


 俺は二体の死体を脱がせた。そこで初めてアイドナが気づいた。


《生殖機器がありません》


 ならば、俺のように保管器から生まれたのではないのか?


《可能性はありますが、あなたには生殖機能があります。それはあなたが人間という生物だからですが、これに生殖機能のないとなると、純粋な生物だと判別する事も出来ません》


 生物じゃない?


《ですが、さサイボーグでもアンドロイドでもなく、生体組織を持っています》

 

 ならなんだ?


《作られた物かもしれません》


 それは俺も同じこと。


《製造工程が全く違うと想定されます》


 どういうことだ?


《あなたは機械の中で受精し細胞分裂を経て生まれました。これはその工程とは違う可能性が高い》


 違う作られ方をした?


《はい》


 だから直ぐに崩壊するのか?


《そのように推定します》


 目の前で干からびた死体を見て、普通の生物よりも早く傷んでいる事は分かる。


 何のために誰が作ったんだ?


《データ不足です》


 そうか。もっと情報を取れるか?


《既に遺伝子情報は全て獲得しました。これ以上は意味がありません》


 それを聞いて俺は死体から離れる。そして今度はソーラーパネルに繋がっている、鉄の箱をエックス線透過で見る。心臓のように内部で蠢く物があり、その周りに電子機器らしいものが繋がっていた。


《エネルギー供給だけに使われるものです》


 この動力は不思議なものだ。


《その武器やあのステルス管を周辺に置いておくと、エネルギーが供給されて補充できるようになっているようです》


 充電器のようなものか?


《はい》


 明らかにこの世界の技術じゃない。


《そのようです》


 全ての検証が終わった頃、東の空が明るくなり日が昇って来た。


《ステルス管を切って、皆を起こしましょう》


 よし。


 俺は皆が眠っている窪みに行って、ステルス管を引っこ抜いた。すると皆がそれに気が付き、ゆっくりと目覚め始める。


「おお。寒みいな」


 ボルトがブルっと震えた。そして股間をおさえて言う。


「用を足さないとだな」

「わしもじゃ」

「俺もだ」

「私もね…」

「私も!」


 なるほど不便だ。俺はアイドナが処理をしているようだが、皆はやはり排泄行為が必要だった。


 俺が言う。


「周囲に危険な気配はない。岩陰で用を足すと良い、俺が護衛する」


 するとマージが言った。


「それじゃあ、メルナとフィラミウスが先にだねえ。男連中はよそでしてきな」


「へいへい」

「そうじゃな」

「わかってるって」


 そうして男達は右に、フィラミウスとメルナが左に行く。俺は左側の近くに立って、レーザー剣を左手に片手剣を右手に持つ。岩の裏手から湯気が上がり、少しするとボーッと火柱が上がった。それから、しばらくしてフィラミウスとメルナが戻ってくる。


「いつもごめんなさいね、コハク」

「ごめん」


「問題ない。むしろお前達に何かあった方がまずいからな」


 すると男達が言う。


「おーい。こっちの糞を焼いてくれ。魔獣が寄って来ちまう」


「わかったわ」


 フィラミウスは男が用を足した方に行って、火魔法で排泄物を焼いた。


 皆が戻って来たので、俺は夜に調べた機械の事を説明する。皆が神妙な面持ちで聞いていた。


 マージが言う。


「なるほどねえ。そりゃ、ダマの実どころの発見じゃないねえ」


「ダマの実も必要だ」


 それにボルトが答える。


「そりゃそうだが、そいつらの話が本当だとすると、その施設に仲間がいるんじゃないのか?」


「そうかもしれん」


「ならそれを先に潰さねえとだめだろ」


「なるほど」


「だとすれば、食料を確保する必要があるぜ。長丁場になるかもしれねえ」


 するとベントゥラが言う。


「昨日狩った、ロックサラマンダーがまだあるかな? 寒いから腐ってはいねえと思うぜ」


「見に行こう」


「あと水も確保しなくちゃいけないわ」


「「「おう」」」


 そして俺達は、昨日の午後に狩ったロックサラマンダーを置いた場所を見にいく。するとロックサラマンダーは、甲殻虫に食われる事無く残っていた。ベントゥラが言うとおりに、寒さの為、腐ってはいないようだった。


 そしてボルトが言う。


「んじゃ解体して、食えるところを分別すっか。あと焼かねえとな」


 そこで俺が言った。


「ならあの小屋に持って行こう。あの小屋を壊せば薪になるぞ」


「だな」


 そうして俺達は、小屋にロックサラマンダーを運び解体した。皆が解体している間に、俺がソーラーパネルや武器を小屋に持って来る。ステルス管とレーザー剣も背負子に仕舞いこみ、それを小屋の側に置いた。小屋を破壊して薪にして火をつけ、燃え盛る火の側に岩を並べた。岩が十分熱せられたところで、ロックサラマンダーの肉を並べていく。


 ジュゥゥゥゥ! と音をたてて焼ける肉に、ガロロが塩を振りかけた。


「まずは食おうぜ。保存用は残った奴だ」


「おう」


 そして俺達は焼いたロックサラマンダーを食い始めるのだった。

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