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第百四十六話 謎の電子機器を解析する

 正体不明の二人がここで何をやっていたのかを探る為、小屋を物色する。すると鉄の箱のようなものが、テーブルの下に置いてあるようだ。


「何だこれは?」


 その鉄の箱からワイヤーが繋がっていて、それが天井の角辺りの壁の中に繋がっていた。


《屋根を見ましょう》


 俺が外に出て行き、ジャンプして屋根に乗る。


「これは…」


《ソーラーパネルです。電気を供給しているようですね》


 そこで屋根の上にいる俺に、下からメルナが話しかけて来た。


「何してるの?」


「ああ。おかしなものが屋根にあった」


「おかしなもの?」


 すると風来燕達もやって来る。


「屋根の上になんかあんのか?」


「ある。だけど外し方が分からんから、ちょっと調べてみる」


 そしてそのパネルの下を覗き込むと、配線が屋根の中に繋がっているようだった。


《配線を切れば使い物にならなくなりそうです。この木の小屋を壊してしまいましょう》


 わかった。


 俺が屋根から飛び降りて、小屋の中にあるアタッシュケースを運び出した。それを小屋から離れた所に置いてから風来燕に言う。


「中に入ってくれ」


「わかった」


「ここに線がある。これが屋根の上の板に繋がってるんだが、切り離すと壊れてしまいそうだ。だからベントゥラが屋根に上ってパネルを守り、俺がこの鉄の塊と配線を守る。皆でこの小屋を壊して機械を取り出そう。屋根と壁に沿って破壊してくれ」


 皆が頷く。ベントゥラが屋根に上って聞いて来た。


「この光る板かい?」


「そうだ。それを壊さないように見ててくれ」


「あいよ」


「じゃあボルト、ガロロ、フィラミウス! やってくれ!」


「「「わかった」」」


 俺が内側で鉄の塊と配線を守っていると、ガンガンと強化鎧のパワーを使って小屋を破壊し始めた。


「ヒモが出て来たぞ!」


「それを切るな!」


「あいよ!」


 しばらく悪戦苦闘して小屋から鉄の箱を取り出し、繋がったソーラーパネルをみんなで下ろした。


「なんだこりゃあ」


《魔道具の一種なんじゃないかとでも言ってください》


「魔道具じゃないか?」


「なるほど」


 それを地面に置いて、俺が最初に壊したステルス管と他の二本も地面から取り出した。


 レーザー剣、ジェット斧、ステルス管三本、アタッシュケース、ソーラーパネルを並べる。


「変な物ばっかだな」

「見た事は無いわね」

「なんじゃろうなあ」

「これをどうする?」


 それに俺が答える。


「持ち帰る」


 するとマージが言った。


「いずれにせよ。もううろつける時間は無くなったからねえ。先の避難所に戻るよ」


「死体はどうしやす?」


《念のため運びましょう》


「運ぶ」


 俺達は回収した機器と、殺した二体を避難所まで持って来た。そしてベントゥラが言う。


「死体が、もうシワシワだ」


「確かにそうだな」


 そのうちに辺りが暗くなってきて、俺達は小さな穴に身を隠して休んだ。皆が寝静まり、まずは俺が見張りとして起きている。俺の手先ではアイドナがアタッシュケースを探っており、視界には周辺に置いてある武器や鉄の箱が映っていた。アイドナが手で探りながら、同時進行でエックス線透過とサーモグラフィで確認しているのだ。


《鉄の箱に、生体反応があります》


 なんだと。


《恐らくは王都地下で見た、半有機動力に似たものだと思います》


 無関係では、なさそうだな。


《無関係ではないでしょう、古代遺跡の物と文明レベルが非常に近いと感じますが、この世界の文明とはかけ離れすぎています》


 するとマージが話しかけて来る。


「いったい、それがなんだか分ったかい?」


「はっきりとした事は言えないが、恐らくは王都地下で見た古代遺跡と無関係ではない」


「やっぱりそうなんだね」


「それに、死体が風化して半分くらいになった」


「王都の灰になった奴と同じだね」


「仲間を呼ぶとか言っていたが、まだほかにもいるようだ」


「なるほどねえ? その手提げみたいなのはなんなんだろうねえ?」


「わからん」


 陽が落ち、辺りが暗くなったことで斧と筒が点滅しているのが分かる。


《単純な武器ではありません》


 炎に光にジェット…。この世界にある武器じゃないのは分かる。だがこれらは何処から来たのか。


《ケースの解錠方法が分かりました。死体の所に持って行ってください》


 わかった。


 俺は立ち上がって、アタッシュケースをルクステリアの死体の元に持って行く。


《目はありますか?》


 ある。


《手を持ち手に沿え、目を開いてアタッシュケースに合わせてください》


 言われたとおりに死体の手を取っ手につけ、閉じた目をこじ開けた。するとアタッシュケースから、レーザーのようなものが出て目にあてられる。


 ピーピーピーピー。カチッ。


《解錠しました》


 パカリと開いたアタッシュケースは、ただの箱ではなく、どちらの蓋もパネルのようになっている。


《操作系とディスプレイです》


 なるほど。


 そこにアタッシュケースを置くと、アイドナが片方のパネルに手を下ろした。


《ここにも。その手を付けてください》


 シワシワになったルクステリアの手をパネルにつけると、パネルがスッと点灯する。


《操作出来そうです。籠手を外してください》


 俺が領の手の籠手を外すと、アイドナが勝手に俺の指を操作した。


 ピッピピピピピピピ!


 アイドナがパネルを高速で触ると、目の前の画面に何かが浮かび上がった。


《十一億七千百八万四百二十一通りのセキュリティ構造がありましたが解除出来ました》


 これはなんだ?


《計測の結果、恐らくこのケースは起動装置です》


 なんの?


《分かりません。ですが、あの古代文明の機器と同等の時代かその先の技術です》


 そうなんだな。


《あの鉄の塊はいわば動力で、ソーラーパネルはそれに動力エネルギーを送っているようです。この端末で、それが操作できるようになっています》


 武器はどうだ?


《アドミニストレータ―権限で、武器の使用者権限も行えるようです》


 管理者権限をこちらに移せ。


《十八億二千八百五十三万に八千九百十三通りのセキュリティ解除中。解除しました。アドミニストレーターの権限を取得。使用権限をあなたに変更しますか?》


 してくれ。


《変更しました》


 そして俺は銀の筒を手にしてみる。


 ピーピーピー! シュオオオオオ!


 光の剣が出て来た。それを振ってみるが、重さは全くなく自由自在に振れそうだ。それを地面に置いて手を離すとシュン! 光の剣が消える。今度は斧を持ってみるが、それはかなりの重量だった。


《身体強化》


 スッと持ち上がる。


 ピーピーピー! ゴオオオオオ!


 すると斧のてっぺんからジェットが噴き出した。フッと振って見ると、制御が利かずに地面に振り下ろしてしまう。


 ドッゴオオオオオ!


「なっ! なんだ! 敵か!」

「ど、どこから!」

「お、俺の斧!」

「弓はどこだ!」


 俺がみんなに言う。


「すまん。敵の武器を手にしたら勝手に動き出した。おこして申し訳ない」


「動いたのか?」


「この通りだ」


 レーザーの筒を拾う。ピーピーピー。シュオオオオオオ!


「すげえ。光の剣が出て来た」


「かなり危険なものだ」


 そう言ってその剣を地面に突き立てると、突き立った地面が沸騰し始める。


「あぶねえな」


「ああ」


 すると俺の脳内でアイドナが言う。


《あのステルス機器を、みんなが休む窪みの左右の地面に刺してください》


 俺がステルス管を拾うと、ピーピーピー! となった。


 皆が寝ている窪みの左側の地面に光の剣を刺し穴を穿って、ステルス機器の管を入れる。そしてもう一つのステルス管を拾い上げた。同じように音が鳴り響き、右側に穴を穿ってそれを差し入れた。


 ブン!


「コハクが見えなくなったぞ! それになんだか温かいぞ」


 そして俺はその筒を引っこ抜く。


「出て来た!」


「これは身を隠すための道具らしい。だがここにぶつかったりすると危険だ」


「なるほどな」


「だからお前達は鎧を脱いで良いぞ。俺は外でやる事がある。声は通るようだから、何かあったら声をかけてくれ」


「いいのか?」


「この武器と機器を調べたい」


「わかった」


 そしてまた筒を入れると、ブンッ! と光の膜が現れて穴を塞いだ。


「あったけえ」

「本当だわ」

「こりゃ凄いわい」

「本当に鎧脱いで大丈夫なのか?」


「石を投げてみろ」


 ブン!パシィ!


「石が粉々になったぞ!」


「侵入者も防ぐようだ。これで中は暖かくなる。鎧を脱いでいいぞ」


「すまねえ。流石に俺達も鎧を着っぱなしはきついんだ」


「メルナとフィラミウスは良く寝てくれ」


「わかった!」

「そうさせてもらうわ」


 そして俺はそのステルスの膜の前で、アタッシュケース型の端末に手を置く。するとアイドナが勝手に俺の手を動かして、端末の解析を始めた。


《直接データを直結すれば一瞬なのですが》


 古代遺跡のようなネットワークは無いのか?


《この端末には備わっていないようです》


 仕方がない。俺の手は普通の人間の指だからな。


《データ連携できるファイバーなどがあれば良いのですが》


 まずは地道にやるしかないだろう。


 俺の手をアイドナが勝手に動かして、端末情報をくまなく調べていく。


《保護対象がステルスの中にいますので、一旦守る必要が無くなりました。異常があれば起こします。あなたも眠ってください》


 全てをアイドナに任せ、目をつぶって休み始めるのだった。

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