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第百四十三話 鉱山に潜む正体不明の人型

 ロックサラマンダーは岩のようなウロコを持った大型の蜥蜴で、内燃機関を持っており炎を吐くらしい。普段は岩に擬態しているために、知らずに近づいてしまうのだそうだ。俺達が遭遇した時は移動中で、餌のある所に移動しようとでもしてたらしい。


 王都で見た岩蜥蜴と似ているな。


《違う種類のようですが似ています》


 王都の魔獣と、これはどう違うんだ?


《不明です》


 俺が八メートル級のロックサラマンダーに近づいて行くと、サーモグラフィで見える喉元の温度が上昇してきた。


《龍翔飛脚発動》


 俺は、ボッ! とその場から消え、八メートルロックサラマンダーの喉元をえぐり取った。


 ボフゥl!


 ロックサラマンダーの腹が破裂し火炎をまき散らしたが、俺は既に離脱している。ボルトを見ると丁度火炎を喰らっているところで、俺はすぐにそのロックサラマンダーに飛びつき、同じように喉元を切り裂く。


 ぼたぼたと何かが出て来たぞ。


《燃料です》


「フィラミウス! 火魔法を放て!」


 フィラミウスがファイヤーボールを放つと、ロックサラマンダーがまき散らした燃料に引火した。一気に炎に包まれていくロックサラマンダーを尻目に、直ぐにガロロとベントゥラが相手している四メートル級に飛びつく。


 スパン! と首を落とすとロックサラマンダーが崩れ落ちる。小型はウロコがそれほど硬くないようで、身体強化の剣で易々と斬り落とす事が出来た。三体の大型魔獣を討伐した事で、もりもりと魔力が吸収されていく。


 俺は、すぐにボルトに聞いた。


「ボルト! 大丈夫か!」


「炎は防げたようだぜ。だが大きく魔力を消化したようで、鎧が重くなった」


「よし。魔石を取り換えよう。みんな集まってくれ」


 ボルトとガロロとベントゥラの鎧を開けて、空になりそうな魔石を取り出し新しいのを入れる。空のはメルナの袋に詰めて、夜に補充するようにしておく。


 するとボルトが俺に言う。


「なんか、王都でも似たような魔獣がいたよな」


「いた。少し種類が違うようだが、あれはもっと大きくて火力が強かった」


「リバンレイの中腹に出るような魔獣が、王都にいきなり出るってなあ、どんなカラクリなんだよ」


「わからん。無関係ではなさそうだが」


《魔獣の体組織を調べる必要があるかもしれません》


「マージ、ロックサラマンダーは食えたりするのか?」


「食べられるはずだよ」


「よし。丁度、良い感じに焼けたのがある。食ってみよう」


「「「「えっ! これを食べるの?」」」」


「焼く手間が省けた」


 そう言って俺は、焼けた六メートル級の焦げた部分を剣で斬り落とし、がぶりと食らいつく。


 鶏肉に似ている。


《組織は似ています。危険な物質は含まれておりません》


 俺は皆に言った。


「美味いぞ」


「まあ食ってみっか」


 また焦げた部分を切り落とし、俺はボルトに差し出した。ボルトがそれにかぶりつくと、目の色が変わって皆に言う。


「鶏肉だ。しかも上質の」


「まじかよ」

「じゃあ食べてみようかしら」

「うむ」


 俺がスパスパと切り出して、皆が肉を食い始める。


「おお。美味いな」


「本当ね。調味料が欲しい所だけど」


「ちょっとまつのじゃ!」


 そしてガロロが背負子から、塩を取り出してそれぞれの肉に振りかけた。


「うんま! こりゃ絶品だ」


「だな」


 そしてアイドナが脳内で言う。


《普通の生体です。恐らくは王都の魔獣のように、直ぐには風化しないでしょう》


 龍とは違うか?


《違います。できれば岩蜥蜴との比較が必要です》


 そうか。


《この遺伝子情報は記録しました》


 了解だ。


 メルナにも肉を与え、俺達は肉で腹を満たす。


「よし。ガロロ、魔石を確保しよう」


「わかったのじゃ。とりあえずひっくり返しておくれ」


 ひっくり返した腹から、ガロロが大きな斧で魔石を切り出す。


「爆発した奴は魔石が燃えちょる。こっちの二体は取れたぞ」


《どうやら、個体の大きさで魔石の大きさも変わって来るようです》


 俺の前に並んだ魔石は、それぞれ大きさが違っていた。


「小さい方はすぐに使えそうだな。大きなのは加工が必要だ」


「うむ。大きい方を、わしの背負子にしまうとするのじゃ」


 大きな方をガロロの背負子に入れ、小さな方は俺の魔石袋に入れる。取れたてなので魔力が充填されており、すぐにでも鎧に使う事が出来そうだった。


 マージが言う。


「二体もいらないよ。どっちか一体を持って行きな」


 そこで俺が答える。


「なら四メートル級を俺が持って行く」


「わかった」


 歩きながら俺はボルトに聞いた。


「火炎はどうだった?」


「熱さは感じないが、火炎を浴びている間は魔力が減るようだ」


「魔石がきれれば、火炎の熱は中に通るか…」


「だろうな」


《防炎防熱加工が必要です》


 そうだな。火を吐く魔獣は普通の人間には厄介だ。


《装甲に使う材になにかを混ぜ込みつつ、強度を上げましょう》


 たとえば?


《セラミックを作りそれを内部に貼り付けます》


 また重くなるな。


《ならば当面は、防火化合物を練り込むことを検討します》


 素材を探さなきゃな。


《はい》


 ロックサラマンダーを引きずりつつ、半日歩いていると岩肌にちらほらと植物が生えているのが見えて来る。


「マージ。高山植物が生えてるぞ」


「だいぶ高い所に登ってきたようだねえ。どんな植物だい?」


 するとメルナが答えた。


「黄色くて小さい花が咲いてるよ!」


「バレン草だねえ。この山のあちこちに咲いているよ」


「ダマの実は何処で採れる?」


「バレン草があるってことは、そんなに遠くは無いがねえ。太陽はどのあたりにある?」


「西に傾いている」


「避難所を探した方が良いねえ」


 ボルトがマージに聞いた。


「もうかい?」


「ここからが危険なのさね。本来はこの上にロックサラマンダーが出るはずなのさ。だけど追いやられて下にいるって事は、もっと強い魔獣が居る可能性があるって事だよ」


「なるほど」


 そして俺達は周辺に隠れられそうな岩陰を見つけ、そこでいったん荷物を降ろして休息した。


 そこでまたマージが言う。


「念のため、魔石を交換しておこうかねえ」


「わかった」


 さほど使ったとは思えないが、ひとまず全員の鎧の魔石を交換した。


「あと一回分しかないぞ」


「ならば、最後のを使う前に魔力を補充して休む事さね。ここを拠点にしつつ探しに行くよ」


「わかった。ならばここに荷物を置いて行くか。こんなところに人は来ないだろう?」


「そうした方が良いねえ」


《マッピングは完了しています。いざとなれば真っすぐにここに戻れます》


 よし。


 そうして俺達はそこに荷物を置き、岩を積み上げて荷物を隠した。


「じゃあ行こう」


「ならまずは、左手を探すとするかねえ」


 そうして俺達は四メートルのロックサラマンダーを引きずりながら、武器だけを持ち左手を上に登っていく。だが空が曇り天候が崩れてきそうだった。


「雲が出て来た…」


「なら、一度戻った方がいいねえ」


 そして俺達が戻ろうとした時、その雲が山肌を下りて来て急激に視界が悪くなる。


「霧で見えねえ」


 そこで俺はサーモグラフィー機能を使い、皆を確認しつつ声がけしながら降りる事にする。


「場所は覚えている。皆固まって降りよう」


 そうして俺達が進み始めた時、俺の視界に温度の高い場所が映った。


「まて」


「どうした」


 アイドナがそちらの方を望遠して、サーモグラフィ機能で見る。


《人型です》


 こんなところで?


《はい》


 そして俺はマージに言う。


「マージ。こんなところに人の形をした奴がいるぞ」


「なんだって?」


 皆が俺を中心に固まった。


「どうするんだコハク」


「こちらには気づかれていない。少し近づいてみるか」


「だが…リバンレイに人がいるかぁ? ヤベエだろ」


「接触はしない」


 俺達は固まりながら、霧の中を正体不明の人型に向かって近づいて行く。


 霧のおかげで見つけたが、晴れている時は見えなかったぞ。


《地下。もしくは偽装した場所に隠れていると考えられます》


 なるほど。


 俺達が近づいて行くと、霧が少し薄くなってきた。


「なんも見えねえぞ」


「だがいる」


 近づいた事で分かったが、どうやら人型は二人いるようだった。


「厄介だねえ」


「こんなところで正体不明の存在がいるとなれば、ダマの実収集の妨げになる」


 俺達は立ち止まり、次に何をすべきかを模索し始めるのだった。

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