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第百三十七話 ギルドマスターとの情報交換

 確かにこの町の冒険者ギルドは賑わっているようで、エントランスには大勢の冒険者がいた。風来燕が入っていくと、直ぐに冒険者から声をかけられる。


「よう。ボルト! しばらくぶりだなあ」


「おお。デミ、元気にしてたか」


「ぼちぼちな。皆も元気そうで何よりだ」


 他の三人も適当に挨拶をする。そしてボルトがデミという冒険者に聞く。


「だいぶ賑わってんなあ!」


「そりゃそうだ。パルダーシュがあんなことになって、物資が不足してるんだからな。今なら高値で買い取ってくれるらしいし、皆が躍起になってんのよ」


「なるほどな」


「ボルトらは、今何してんだ?」


「実は、そのパルダーシュで活動してるんだ。だが、あの周辺では大した素材が取れないからな、こうして足を延ばして来たって訳よ」


「パルダーシュ周辺の状況はどうなんだ?」


「騒ぎに乗じて、細かい魔獣が都市に入り込んでたんだが、それを餌にする大型の魔獣が周辺まで降りて来てた。だけど今は冒険者が集中してて、そろそろ周辺に大型の魔獣はいなくなってる。とはいえ低ランクの仕事は山ほどあるから、Eランク以下の奴らは行った方が良いと思うけどな」


「なるほどねえ」


「このあたりはどうだい?」


「多分それも影響してるんだろうな。大型の魔獣が戻りつつあるようだぜ」


「そうか」


「まあ、結構怪我人も出てるしな、お前らも気を付けろよ」


「怪我人?」


「こっちに大型の魔獣が流れ込んだことで、更に強いのが入り込んでるって噂だ。既に何人か死んでるやつもいるらしいし、用心するにこした事はねえ」


「わかった。助言感謝するぜ」


「そのうち、パルダーシュ方面の話を聞かせてくれよ」


「わかった」


 そう言ってデミは行ってしまった。するとボルトが俺達に言う。


「おりゃ窓口に行って、パルダーシュの情報を流してくる。呼ばれるまで待っててくれ」


 するとフィラミウスが俺とメルナに言う。


「掲示板でも見に行きましょう」


「わかった」

「うん」


 フィラミウスに連れていかれた所に掲示板があり、そこにピンにひっかけた紙がチラホラと張り付けてある。それを見てフィラミウスが言う。


「なるほどね」


「薬草採取みたいなのは無いな」


「簡単なものは、駆け出しの冒険者がすぐに持って行ってしまうわ。日銭を稼ぐのでいっぱいいっぱいな人達がいっぱい居るから、彼らの仕事を上の者は取らない。というよりも見返りが安いから、上級者は簡単な依頼は取らないわね。程よく自分達でこなせるレベルの依頼を受けてるのよ。旅の護衛とか中型の魔獣の素材収拾とかね」


「それで風来燕は、商人の護衛を受けていたのか?」


「あれは指名依頼。あの商人が、私達を名指しで指名したから受けたのよ」


「じゃあ、ここに残っている依頼はなんだ?」


「これは受けれるランクの人がいないか、割に合わないかで残っているの。命の保証が無かったり、出来るかもしれないけど危なかったりとか、ギリギリの線のものが残っているわ」


《ソーシャルワーキングサービスみたいな物です。需要と供給が合わない物は避けられるのでしょう》


 そりゃそうだ。


 そこにボルトが来る。


「いいぜ。ギルマスが、パルダーシュの状況を聞きたいみてえだ」


「はーい」

「うむ」

「了解」


 俺達がボルトについて行くと、別室に連れていかれた。そこに険しい表情をした男が座っており、俺達が入っていくと座れと言われる。その男が俺とメルナを見て言う。


「あんたらがパルダーシュ辺境伯様の所の人なのかい?」


「そうだ」


「見た事の無い、髪と目の色だな。異国の人間か?」


「まあそんなところだ」


「ボルトがお世話になっていると聞いてね。ギルドとしてもパルダーシュの状況を知りたい所なんだ」


「なにが知りたい?」


「あそこには、ここから派遣したギルド員もいるんだ。あちらのギルドからはある程度情報は入っているんだが、どちらかと言うと冒険者寄りの情報が多いのさ。だからもし行政などについて聞けたらありがたい。こちらもあんたらが必要な情報は流す」


「なるほど」


 どうやらギブアンドテイクらしい。


「単刀直入に聞くが、パルダーシュはこれから復興しそうかい?」


「する」


「根拠はあるのかい?」


「パルダーシュ辺境伯が、国家に対して大きく貢献した事が認められ、王宮から多大な援助がなされるようになったからだ」


 するとギルドマスターが目を丸くして言う。


「そうなのか? パルダーシュ辺境伯はお亡くなりになったと聞いているが?」


「子息が王から直々に爵位を継承した。今は彼が領主だ」


「そうか! それは間違いないんだな」


「もちろんだ。目の前で見て来たからな」


「わかった。という事は、あんたはそれなりに地位があるのかな?」


「俺は、ど…」


 するとそれを遮るようにボルトが言う。


「彼は男爵だ」


「男爵様でしたか、それはそれは無礼な口をきいてしまいましたね」


「そのままでいい」


「わかった。だが復興した後のパルダーシュの資源はどうなるだろうか? 今はこちらから物資を買い上げているようだが、これは継続しそうかね?」


《男は自分の受け持つギルドの売り上げを考えてます。もちろん素材の状況次第では、こちらから物資を買う事があるでしょう。マージの地図通りなら、ここでは重要な素材が入手できるはずです》


「継続するはずだ。ある特定の素材は、これからも一定の割合で買い付けられる」


「ある特定の素材?」


 俺はギルドマスターに言う。


「ペンと羊皮紙をくれ」


「わかった」


 ギルドマスターは自分のデスクの引き出しから紙を、テーブルの上からインクとペンを持ってくる。


「借りるぞ」


「どうぞ」


 そして俺は地図データにある、この地で採れる素材を書き記した。それをギルドマスターに渡すと、それを見てギルドマスターは言った。


「なるほど。確かにこれらはこの周辺で採れるが、一つ困ったものがあるな」


「なんだ?」


「リバンレイの高所に咲くこれだ」


 指をさしたところに書いてあるのは、ダマという植物の名前だった。


「ダマの実が必要なんだが」


「うーん。最近は強い魔獣が奥地に出ているんだ。確かにダマは希少価値の高い植物だが、ただでさえ高所に登るのは危険だ。さらに強い魔獣が出たら、帰って来れなくなる可能性が高い。高ランクの冒険者ならいざ知らず、数日かけてそこまで行く奴がいないだろう」


「なるほど」


 そして俺達は風来燕を見渡す。するとボルトが言う。


「じゃあ、依頼をだすか」

 

 するとギルドマスターがキョトンとした顔で言う。


「今の話を聞いていたのか?」


「ダマが咲く場所までの安全ルートや、魔獣の位置をマッピングして来るのと、ついでに魔獣を狩って来る奴がいればいいんだろう?」


「だから行く奴がいないんだよ」


 それに俺が答える。


「ボルト達、風来燕が行くさ」


 するとギルドマスターが風来燕に言う。


「Bランクのお前らじゃ無理だ」


 するとボルトが苦笑いして言う。


「まあそう言われるわな」


「死にに行くようなものだぞ」


 だがボルトは真面目な顔で言う。


「いや。俺達はやらなきゃならないんだよギルマス。どうしてもパルダーシュの復興の為に、命がけでやる必要があるんだ」


「ならば、Bランクを少なくとも三パーティーは集めんといかん」


「俺達だけで行くよ」


「どういうことだ?」


 するとフィラミウスが言う。


「よろしいかしら? ギルマス」


「なんだ」


「ここにいるコハク男爵はね、ギルドにこそ登録してないけど凄く強いの」


 だがギルドマスターは俺を見て首をかしげる。


「失礼ながら、そうは見えない」


 フィラミウスが楽しそうに笑う。


「うふふ。そうでしょう?」


「ああ」


「でも強いのよ。だって、今回の王覧武闘会の優勝者ですもの」


「えっ! 王覧武闘会と言えば、剣聖なども出る大会だぞ? 彼のような闘気のかけらも感じない男が、そんな大会で優勝するわけがない」


「あら残念。その証である、優勝者の盃が見せられればよかったんだけどね。あんなもの持って歩くわけにはいかないしねえ」


 そこでボルトが言う。


「とにかくこの、コハク男爵がパルダーシュの代理で依頼を出す。それを俺達が受けるって事で了承してほしいんだが」


 ギルドマスターは考え込んでしまった。


「…みすみす優秀な冒険者を死なせるわけにはイカン…」


「俺達の事をそう思ってくれるのはありがたいけどよ。俺達なら大丈夫だぜ」


 するとギルドマスターは顔を挙げてボルトに言う。


「なら力試しをさせてくれ。コハク男爵様と手合わせ願いたい」


 俺が答える。


「いいよ。いつやる?」


「すぐにだ」


 俺はいきなりギルドマスターと手合わせする事になった。

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