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亜人の王 〜異世界転移した僕が平和なもんむすハーレムを勝ち取るまで〜  作者: 藤枝止木
16章 天に舞う黒翼

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第394話 長老集会(1)

ちょっと短めです。


 僕らが帰ってきた翌日以降、アゥル村にはアツァー族のお客さんが次々にやって来た。

 気の早い村の代表の方々が、早くも長老集会の会場であるアゥル村へ集まって来たのだ。

 そしてお客さんが来るのは空からだけではなかった。今回の集会はナパ全体に関わるものなので、地表の方から地の民であるナァズィ族の方々もお越しだった。


 ナァズィ族は、前評判通り土竜人族(もぐらじんぞく)といった感じの種族だった。

 柔らかそうな体毛に包まれた小柄な体躯で動き回る姿は、思わず後ろからハグしたくなるくらいに可愛い。

 一番の特徴は、体に対してやや大きめな手足と、その指先に生えた頑丈そうな爪だ。

 彼女達は土魔法を多く発現するそうだけど、この手足のおかげで種族全体が穴掘り名人なのだとか。

 あとやっぱり地表が眩しいのか、横長の板にスリットを何本か開けた感じのゴーグルをしていた。


 それで、ナァズィ族の方々には当然飛行能力がないので、アツァー族の人達のように颯爽と村の発着場に降り立つことはできない。

 高さ300mの位置にある村まで、えっちらおっちら長い階段を登る必要があるのだ。

 しかも今回は長老集会。いらっしゃるのは当然高齢の方々なので、かなり大変だろう。

 そこに気づいた心優しいプルーナさんは、自らエレベーターガール的な仕事を買って出た。

 ナァズィ族のお客さんが来ると岩棚を昇降させ、地表に居た彼女達をほんの数十秒で村までご案内するのだ。

 村に来たナァズィ族のお客さん達は、プルーナさんの心遣いに深く感謝し、優れた技術を絶賛してくれていた。

 

 そんな感じで、褒められて照れ照れしているプルーナさんを愛でたり、来客対応を手伝ったりしている内に数日が過ぎ去り、長老集会の日がやって来た。






 集会の会場である村の中央広場に集まっているのは、ナパ全土からお越しの数百人にもご老人方だ。

 ナパには全部で300程の村があるそうだけど、いくつかの村の代表として来ている人達もいるらしい。

 会場の雰囲気は、ざわざわと不安げな人々が半分、もう半分は年の功なのか静かに静かに時が来るのを待っている感じだ。

 こうして集まってくれているのだから、大陸茸樹怪(テラ・ファンガス)の脅威はちゃんと伝わっていると信じたいけど……


 一方。僕ら『白の狩人』とティルヒルさん、それからナーツィリド長老を始めとしたアゥル村の主だった面々は、広場に併設された大きな櫓の裾に控えている。

 会場の様子に、ナーツィリド長老は安心したように頷き、ティルヒルさんは少しは楽しそうだ。


「どうやら、主だった村の代表は殆ど集まってくれたようじゃな。重畳」


「うわぁ……! あーし、こんなに沢山のおばあちゃん達初めて見た!」


 長老さんはティルヒルさんの様子に少し頬を歪めた後、櫓の裾に控えた面々の顔を見回した。


「さてお主達。ナパ全土に及ぶほどの集会は儂とて初めてじゃ。念の為、もう一度流れを確認しておこうぞ。

 まず儂が挨拶した後、タツヒトとティルヒルには大陸茸樹怪(テラ・ファンガス)について語ってもらう。ここにいる者達にはすでに伝えてある筈じゃがの。

 その後は問いかけや話し合いの時間を設け、十分に言葉が尽くされたのならば、最後に投票にて決を取る。

 此度の脅威に対し、踏みとどまって防衛するか、それともこの地を捨て去るのか…… そのどちらかをだ。良いな?」


 真剣な様子で語りかける長老さんに、僕らは神妙に頷いた。


「よし…… では、始めるとしよう。タツヒト、お主も一緒に来るのじゃ。ティルヒルよ、儂の側で遠声(とおごえ)の術を頼むぞよ」


「分かりました……!」


「うん!」

 

 僕は長老さんとティルヒルさんに続いて櫓に登り、二人と一緒にざわつく広場を見下ろした。


『--聞こえるか、ナパの同胞達よ。儂はこの村の長老、ナーツィリドじゃ』


 増幅された長老さんの声が広場に行き渡り、眼下の人達が一斉にこちらに注目する。

 ティルヒルさんが風魔法を応用し、長老さんの声を拡声したようだ。


『この地に降り掛かりつつある未曾有の危機に際し、皆、遠方よりよくぞ集まってくれた。感謝する。

 この集会は、その危機の元凶である強大な魔物、大陸茸樹怪(テラ・ファンガス)への対応を話し合う場じゃ。今日は存分に言葉を交わし、我らの未来を決めるとしようぞ。

 じゃがその前に、大陸茸樹怪(テラ・ファンガス)に詳しい者達の話を聞いて欲しい。

 外なる世界の戦士にして、雷の神鳥(トゥルイ・イェイ)御使(みつかい)たるタツヒトよ。これへ』


 長老さんに促され、僕は眼下の人達からよく見えるように前に出た。


『ご紹介に預かりましたタツヒトです。僕はこの大陸の外、はるか西の海から来ました。

 これから、大陸茸樹怪(テラ・ファンガス)について今分かっている事をお伝えします』


 不安げに、あるいは疑わしげにこちらを見上げる人達に、僕は大陸茸樹怪(テラ・ファンガス)について知る限りの事を話した。

 語ったのは、以前ナーツィリド長老に話した内容に、奴がナパへ到達する時期の最新予想と、逃げる場合の撤退計画を加えたものだ。

 この最新予想は、ここ数日の内にティルヒルさん確認してもらった奴の現在位置と、シャムの計算から割り出されたものだ。

 結果、奴は後三ヶ月から半年の間にナパへ到達する可能性が非常に高いと出た。思ったよりも僕らに残された時間は少ないらしい。


 撤退計画については、南にひたすら下ると海を隔てた別大陸、西ゴンド大陸があるので、そこに逃げましょうという話だ。

 西ゴンド大陸には僕らの盟友、悪徳商人のコメルケルさんがいるので、彼女に頼らせてもらおうという魂胆だ。

 相当迷惑をかけてしまうだろうけど、良い方の商人であるメームさんとのチョコレート事業で、僕は結構莫大なマージンをもらっている。

 そのお金とコメルケルさんの手腕があれば、年単位でナパの全人口、10万人くらいなら養うことができるはずなのだ。

 そこから先は自活してもらう必要があるけれど、大陸茸樹怪(テラ・ファンガス)に立ち向かうよりはるかに現実的だと思う。

 ちなみに、僕が雷の神鳥(トゥルイ・イェイ)御使(みつかい)だという話は否定しないでおいた。だって話がややこしくなり過ぎるんだもの…… 違うと言っても伝わらないし……


 僕の次は、実際に大陸茸樹怪(テラ・ファンガス)と立ち会ったティルヒルさんが、その実体験を克明に語った。

 彼女がナパ最強の勇者だというのは伊達では無いらしく、手も足も出ずに殺されかけたという話に、聴衆の皆さんは絶望の表情を浮かべていた。


『--さて。今の二人の話で、我らがどれほどの脅威に晒されているのか分かったことじゃろう。

 その脅威に対して踏みとどまって防衛するか、それともこの地を捨てて逃げるのか…… これより話し合いの時間とする。

 何か問い掛けや、述べておきたい事のあるものは居るじゃろうか?』


 僕らの話の後、ナーツィリド長老が広場の人達に水を向けると、すぐに何十本もの手が上がった。

 これ、もしかしたら今日中には終わらないかもしれないな……


お読み頂きありがとうございます。

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【月〜金曜日の19時以降に投稿予定】


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