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亜人の王 〜異世界転移した僕が平和なもんむすハーレムを勝ち取るまで〜  作者: 藤枝止木
15章 深き群青に潜むもの

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334/511

第334話 海底遺跡

週の初めから更新が大変遅くなり、申し訳ございませんm(_ _)m

なぜかめちゃくちゃ難産でした……


 カサンドラさんと再会してから一週間ほどが経った。

 魔導具の準備、装備の改造、海中活動の練習など、諸々の準備を整え、僕らはようやく海底遺跡探索に乗り出した。

 ただ、港から遺跡のある海域までは結構距離がある。

 水棲亜人でない冒険者は、舟でその海域まで行ってから潜るのが一般的らしく、僕らもそれに倣って港で小舟を借りる事にした。

 今は港の桟橋から全員船に乗り込み、(もやい)を解いた所だ。


「それじゃあキアニィさん、お願いします」


 配置は、身体強化可能なメンツが両舷でオールを持ち、魔法型のロスニアさんとプルーナさんは真ん中に座り、キアニィさんが船尾側から立っている。

 沿岸と言えど、周囲の地形等から自己位置を推定したり、ルールに基づいて舵を取ったり、適切な信号旗を掲げたりと、操船にはかなり知識が必要だった。

 なので、前職の影響で操船経験があるキアニィさんに船長をお願いする事にした。多才な人だよなぁ、ほんと。


「ええ。ではみんな、出発しますわよぉ!」


「「応!」」


 彼女の号令に合わせてオールを漕ぎ始めると、小舟は大きな水音を立てて高速で進み始めた。

 僕、ヴァイオレット様、シャム、ゼルさん。漕ぎ手全員が緑鋼級以上なので、小さな船に巨大なエンジンが付いてる感じだ。

 何隻かの同業者らしき船を追い抜きながら進むこと数十分。目的の海域が見えてきた。


「うわぁ…… 船がいっぱいですね」


「ええ。みんな、漕ぐの止めていいですわよぉ。船って急には止まれませんから」


 減速した僕らの船は、ゆっくりと海底遺跡が存在する海域に侵入した。

 周囲には結構な密度で小型の船が存在していて、中には言い争いをしている船もある。ガラが悪い。

 ここの辺はまだ魔物の領域としては浅く、プギタ島からも近い。

 僕らのような海底遺跡初心者や、低位階の冒険者パーティーでごった返しているようだ。

 

 ちなみにこの海域に入る前、僕らはプギタ島海軍の哨戒船からとても高圧的に呼び止められた。

 屈強な蛸人族(たこじんぞく)から構成された彼女達は、最初、外国人オンリーの新参パーティーである僕らをかなり怪しんだ。

 しかし、カサンドラさんと島主さん連盟の許可証を提示した瞬間、その顔色が変わった。

 彼女達は途端に態度を丁寧なものに変えると、ビシリと敬礼して僕らを解放してくれた。

 マジで何者なんだ、カサンドラさん…… さておき。

 

「目的の遺跡はもっと先だと思うが…… 練習のため、この辺で一回潜ってみるのはどうだろうか。

 向こうの方が水深があって魔物も強い筈だ」


 ヴァイオレット様の提案に、全員が頷いた。


「いいですね、賛成です。そしたら、各自魔導具を起動してください。シャム、おいで」


「はいであります! お願いするであります!」


 元気よく僕の方に寄ってきて、ん、上を向くシャム。可愛い。

 その首元には、紐のついたマウスピースのようなものがかかっていた。

 これは、周囲の空気を圧縮して溜め込むことで、水中での呼吸を可能とする魔導具だ。

 僕らのような水棲亜人でない冒険者にとって、海底遺跡探索における必須のアイテムだ。この場の全員が同じものを首からぶら下げている。

 魔法が使える僕、ロスニアさん、プルーナさんの三人で全ての魔導具を起動し、全員がそれを口に咥える。

 さらに水中眼鏡を装着し、耳に短距離通話も可能な翻訳装具をつければ準備完了だ。

 

『--よし、下に人も魔物もいないですね。では行きましょう!』


『『応!』』


 水音を立てて全員が海に飛び込む。

 一瞬泡に覆われた視界が晴れると、そこには水上の景色とは別種の美しさが広がっていた。

 周囲は見渡す限り透明度の高い青。その中を僕らのような冒険者が雑多に泳ぎ回っているけど、それすらも優雅に見える。

 目下には起伏に富んだ岩場や珊瑚礁があり、色とりどりの熱帯魚が群れを成して泳いでいる。

 何度見てもその度に見惚れてしまう。本当に綺麗な光景だ。 --おっと、仕事しないと。


『みんな、特に問題はなさそうですね』


 僕は周囲を漂うみんなを見渡し、様子や装備に異常がない事を確認した。

 海中におけるみんなの装備は、地上とはかなり違ったものになっている。

 高位の海藻系樹怪(トレント)素材から作られたウェットスーツっぽいインナーに、各部に邪神の甲殻製の部分鎧をつけている感じだ。

 加えて足や尻尾の先には(ひれ)を付けていて、海中で活動しやすいようにしてある。

 そんで手にはそれぞれ武器を持っているので、なんというか物騒なダイバーって感じの見た目だ。


 僕らはやらないけど、この辺の熟練冒険者の中には、ビキニアーマーのような装備で潜る人もいるらしい。

 見る分には嬉しい限りだけど、あえて防御力を減らす理由が分からない…… 多分、見栄とかの問題なんだろうな。


『お? あのピカピカしてるのがカサンドラの言ってたやつかにゃ?』


 ゼルさんが指す方をみると、そこには入り組んだ形状の巨大な珊瑚礁があった。

 目を凝らすと、珊瑚礁の所々が小さく、規則正しく点滅している。とても人工的な印象の光だ。

 そこへ別の冒険者の一団が接近し、そのまま珊瑚礁の中へと姿を消してしまった。

 

『なるほど…… 確かに、これならどれが遺跡なのか一目瞭然ですね。魔導具の発掘量が増える訳です』


 プルーナさんが納得したように呟く。

 カサンドラさんによると、この海域に古代遺跡が点在していることは以前から判明していたらしい。

 ただ、それらは年月を経て海流や珊瑚に侵食され、非常にわかりづらくなっていた。

 しかし最近になって、こうしてただの岩礁や珊瑚礁だと思っていたものが光り始め、沢山の古代遺跡が存在することが分かったのだ。

 結果この海域は、一攫千金を夢見る冒険者達が集う場所になったのだ。

 古代遺跡から出土する魔導具や魔法薬って高く売れるからなぁ……


 試しに、光る岩礁の一つに近づいてみると、誰かが雑にぶち抜いたらしい大穴が開いていた。

 そのまま中に入ると、人工的な印象の四角い大きな空間が広がっていた。

 元は倉庫か何かだったのだろう。のっぺりとした石壁に囲まれたそこには、すでに何も残されていなかった。

 きっと、中身はすでに根こそぎ持ち出された後なんだ。ちょっとがっかり。






 その後僕らは、休憩を挟みつつ徐々にポイントを沖の方に移し、何度も潜って海底の様子を確認した。

 繰り返すうち、出現する魔物は強力になっていき、逆に冒険者の数は減っていった。魔物の領域の深い所に入り始めたのだ。

 その分、魔導具が残されている古代遺跡もいくつか見つけることができた。

 見つかる遺跡は、僕らが探している古代遺跡とは造りがかなり違ってたので、作られた年代が違うのかもしれない。


 そこからさらに沖へ進み、半島の先端付近と思われる海域まで来た。

 ここまで来ると僕らの他に冒険者の姿は無く、ちょっと寂しいような不安なような気持ちになる。

 しかしそれよりも、目的とする古代遺跡どころか、これまでみてきたような他の遺跡すら全く見当たらない事が気になる。

 海底には小規模な珊瑚礁や岩礁があるけど、光っているものは無い。いつもの銀色に光るドーム状の建物だってもちろん見当たらない。


『ねぇシャム。この辺て、そろそろ目的地…… 沈没した半島の先端付近のはずだよね……?』


 隣を漂うシャムに問いかけると、彼女も難しい表情で海底を見回していた。


『そ、そのはずでありますが…… 土砂の堆積や海流のによる侵食が激しいので、地形を読み違えた可能性があるであります。

 加えて、遺跡が海流に流されたり、砂に埋もれていることも考えられるであります』


『なるほど、確かになぁ……』


 さてどうしよう。やっぱり今回も遺跡を見つけるのは簡単じゃなさそうだ。

 もう少し探索を続けてみてもいいけど……


『こ、この辺まで来ると、結構水深が深くて怖いですね』


『ええ…… それに、ちょっと冷えてきましたわぁ』


 ロスニアさんとキアニィさんが、あたりを見回しながら揃って体をさする。

 あ…… そういえば彼女達、種族的に冷え性だった。確かに海水温が下がってきている。

 日も傾いてきたし、今日の所は早めに帰って作戦会議でもするかぁ……

 みんなにそう提案しようとした時、視界の端に何かを見つけた。


 慌ててそちらを振り向くと、ほんの数十mほどの距離の所に、いつの間にか小柄な人影が漂っていた。

 顔までははっきりと見えないけど、シルエットからしておそらく蛸人族(たこじんぞく)だ。他に人影は無く、一人だけのように見える。

 

 同業者だろうか。でも、この海域でソロの冒険者はかなり珍しいし……

 不思議に思ってみんなに注意喚起しようとした瞬間、その人影が僕らの方に向けて手を掲げた。

 人影が緑色の放射光を発し、強力な魔法の気配が生じる。まずい……!


 ゴバッ!


 突然生じた凄まじい海流によって、僕らの体は一気に海底へ引きずり込まれた。


お読み頂きありがとうございます。

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【月〜金曜日の19時以降に投稿予定】


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