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亜人の王 〜異世界転移した僕が平和なもんむすハーレムを勝ち取るまで〜  作者: 藤枝止木
13章 陽光と冥闇の魔導国

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第262話 砂上の都市(1)

土曜分ですm(_ _)m


 王城との連絡役を任された僕らは、お頭さんに一筆書いてもらった後、すぐに魔導大学に向かった。

 僕らが持っている王城への伝手は、この国の次期女王であるルフィーナ王女殿下だけだからだ。

 魔導大学の学生である彼女は、平日は大学に併設された学生寮の貴族棟で寝泊まりしている。

 何故かというと、彼女の婚約者であるヒュー先輩も寮生だからだ。

 もちろん男女で建物は分かれているけど、こういったものには文字通り抜け穴があるのだ。多分。


 時刻はすでに深夜手前。女子寮貴族棟の門に押しかけた僕らは、殺気立つ門番の方々を真摯に説得し、何とか王女殿下に繋いでもらうことに成功した。

 そして、流石に女子寮の中で会うことはできないので、いつも昼食会に使う食堂に場所を移して話すことになった。

 僕は殿下への挨拶もそこそこに、お頭さんから書いてもらった書状を彼女に渡した。

 鬼の形相で僕を睨みつけてくる護衛官や側付きの方々の視線に耐えること暫し。書状を読み終わった殿下が、深刻な表情で息を吐いた。


「こんな時間に一体どうされたのかと思いましたが…… 確かに、これが事実ならば寝ている場合ではありませんわね」


「はい。深夜に押しかける無礼を働いてしまい、本当に申し訳ありませんでした。朝を待つ手もあったのですが……」


「いえ、よくぞ知らせてくれました。 --しかし意外でした。あなた方が地下街の、しかも夜曲(やきょく)と繋がりがあったとは……

 先日の昼食会で少しあなた方の雰囲気が固かったのは、このせいだったのですね」


「はい。少し事情があって、住民の皆さんを守る仕事を手伝っているんです。

 あの、夜曲(やきょく)の中にも良い人はいるんです。真剣に人の命を守ろうとする人達が……!」


「そうであります! 夜曲(やきょく)のお頭は街全体を心配しているであります! その手紙に嘘が無いことは、シャム達が保証するであります!」


 プルーナさんとシャムの言葉に、殿下は暫く沈黙した後で大きく頷いた。


「そうですか…… 分かりました。認識を改めましょう。そして時刻は一刻を争います。カイラ」


「はっ」


 殿下に声を掛けられ、いつも彼女のそばに控えている武官の人が前に出た。


「わたくしはこれから女王陛下に会いに行きます。先触れを出し、馬車を用意してくださる?」


「い、今からにございますか……!?」


「ええ、もちろんです。それとも、朝を待って、街が崩落した後で陛下に会いに行った方が良いでしょうか?」


「し、失礼いたしました! すぐに!」


 指示を受けた殿下のお付きの方々が慌ただしく動き始める中、殿下は真っ直ぐに僕を見た。

 その顔つきは、普段ヒュー先輩と過ごしている恋する乙女で無く、国を背負う為政者のものだった。


「タツヒト。あなた方は、地下街の代表の方々を王城へ連れてきて下さいますか?

 そうですね…… 今から三時間後。それまでに場を整えておきますわ」






 殿下の言葉を信じた僕らは、急いで地下街にとって返し、お頭以下地下街の重要人物を引き連れて王城に向かった。

 ちなみに、王城側に存在がバレたらまずいエリネンは不参加である。

 みんなでぞろぞろと魔導大学の隣に聳える王城の門に向かうと、ちゃんと話が来ていたのだろう、門番の人達はすぐに僕らを通してくれたばかりか、迎えの馬車まで用意してあった。

 もう少しで空が白み始めるといった時間だというのに、殿下をはじめとした王城の人々は迅速に動いてくれたようだ。

 

 そして通された大きな会議室には、部屋の規模に見合った円卓に殿下達王城の重鎮らしき人達と、なんと仮面の魔導士、アシャフ学長とガートルード副学長までいらっしゃった。

 どうやら殿下が気を回してくれたらしい。確かに、彼女達にも参加してもらった方がいいだろう。

 侍従の方に案内されるまま、僕ら『白の狩人』と地下街の重鎮の人達も円卓に着席した。すると--


「「……」」


 沈黙が訪れた。殿下やお頭さんからちらちらと視線を感じる。あ。もしかしてこれ、僕が仕切る感じですか?

 そりゃそうか。王城と夜曲(やきょく)なんて水と油だ。アシャフ学長は絶対やらないだろうし……

 僕は慌てて席から立ち上がった。


「み、皆様、このようなお時間にお集まり頂き、誠にありがとうございます。

 私は、緑鋼級冒険者パーティー『白の狩人』のリーダー、タツヒトと申します。

 有難くもルフィーナ王女殿下と共に魔導大学で学ぶ栄誉に浴し、地下街の皆様とも交流を持たせていただいている身にございます。

 もし宜しければ、本会議の進行をさせて頂ければと思うのですが……」


 会議室を見回すと、皆どこかホッとした様子で頷いてくれている。よかった。


「ありがとうございます。ではまず、地下街の皆様からご紹介させて頂きたく--」


 地下街から来たのは、この国最大にしてこの都市唯一の夜曲(やきょく)、ポブルマナズの頭であるリアノンさん、その娘で若頭のレジーナさん、そして警備部の部長だという屈強なお姉様が一人。

 加えて、お頭の屋敷に呼び出されていた鉱精族(こうせいぞく)、ヨゼフィーネさんを筆頭とした工婦組合の親方さん三名だ。

 彼女達は王城から地下街の開発と整備を委託されているけど、夜曲(やきょく)とズブズブで、殆ど後者の身内と言っていい。


 地下街の面子を紹介し終わった後は殿下にバトンタッチし、王城と魔導大学のメンツの紹介をしてもらった。

 王城の主だった面子は、まず殿下の母上でありこの国の女王、エメラルダ4世陛下だ。

 真っ白な純白の毛並みに緑色の瞳をしていて、ルフィーナ王女殿下と似たその顔は、為政者としての威厳に満ちている。

 続いて、王国軍の騎士団長と魔導士団長だというお二方。前者は筋骨隆々で武人の覇気を纏った兎人族(とじんぞく)のお姉様で、後者は知的な雰囲気の兎人族(とじんぞく)のおばあ様だ。

 見た目年齢は魔導士団長の方が遥かに上だけど、チラチラとアシャフ学長の方を伺っていて、明らかに気を遣っている雰囲気を感じる。

 あ、学長が眠そうに欠伸している。そんでそれを見て副学長が額に青筋を立てている……


「殿下、ありがとうございました。では本題に移らせて頂きます。この場で初めて耳にされる方もいらっしゃると思いますが、地下街の下層、地下八階にて、魔窟の入り口が発見されました」


 僕がそう口にした瞬間、王城側の何人かが驚愕に目を剥いた。

 それから僕は、ざっくりとした発見の経緯と、予想される魔窟の規模や主の強さを述べた。

 お頭、リアノンさんの書状に書かれていた内容の繰り返しだけど、全員に今共有しておくべき内容だ。


「--以上が本会議を開いて頂くに至った経緯でございます。リアノン殿、何か補足などはございますか?」


「いや、あらへんわ。せやけどおおきにな、タツヒト。まさかこんなに早う繋いでもらえるとはなぁ。

 王城の皆様方もおおきに。わしらみたいなもんの話を信じてくれるとは、正直驚きやったわ」


 お頭さんが頬を歪めながらそう言うと、殿下と女王陛下は硬い表情で頷きあった。


「--わたくしが信じたのは、共に魔導を学んできたタツヒト達ですわ。ですが、この国難に国の総力を持って当たろうという意見には賛成致します」


「左様。この国の中枢の真下に魔窟が存在するなど、あってはならぬことだ。すぐに部隊を編成し、早急に魔窟の討伐に当たらせるとしよう。

 リアノンと言ったか。もちろん其方らにも協力してもらうぞ?」


「それはもちろん。そのために、わしらはここに来たんや」


 おぉ。まだ緊張感は漂うものの、王城側と地下街側が共通の大きな問題を前に一緒に動こうとしている。ちょっと感動だ。

 しかし、話がまとままりそうになった所で、意外な所から予想外の文句が飛んできた。


「それは止めておくべきだな」


 つまらなそうに会議の聴いていたアシャフ学長が、突然そう言い放ったのだ。


お読み頂きありがとうございます。

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【月〜土曜日の19時以降に投稿予定】


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