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亜人の王 〜異世界転移した僕が平和なもんむすハーレムを勝ち取るまで〜  作者: 藤枝止木
13章 陽光と冥闇の魔導国

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244/511

第244話 黒い交際

土曜分です。遅くなり過ぎてもう朝になってしまいましたm(_ _)m

10/6 18:54に前話(243話)を上げているのでご注意くださいませ。

ちょっと長めです。



「「ジィィィィィッ!!」」


「キャーーッ!」「助けてくれー!」


 現場に近づくほど、巨大なネズミのような鳴き声と悲鳴が近づく。

 そして、路地を曲がった先の大通りの突き当たり。そこの石壁を突き破り、巨大なモグラのような姿の魔物が次々に地下都市へ侵入していた。

 大きさは中型犬から人程もありそうなものまで様々。刀剣のように発達した手足の爪のほかに、鼻先まで鋭く硬質化している。まるで衝角だ。

 そいつらが異様な速度で地を這い、逃げ遅れた地下街の人々に襲いかかっている。


「チッ、やっぱり岩土竜(ラピスモール)か。わえら、根性見せんかい!」


「「おう!」」


 エリネン氏が先陣を切って魔物に斬りかかり、部下の人達もそれに続く。

 確か彼女達は警備部って言われてたけど、まともにこの地下都市の安全を守っているらしい。

 コソ泥に泣きつかれて大勢で僕らを囲んだ夜曲(やきょく)と違って、もしかしたら侠客(きょうかく)と呼べるような人達なのかも。


「僕らも行きましょう! 武装が心許ないので、安全第一で!」


「わかったにゃ!」


 僕とゼルさんは、護身用の短剣を抜き放って手近な魔物に走り寄った。


「うふふっ、わたくしはいつも通りでしてよ?」


 一方キアニィさんは、いつの間にか例の凶悪な形状のナイフを両手に魔物に切り掛かっていた。持っている。マジでどうやって仕舞ってたんだ……

 

 それからエリネンさん達と僕らは、地下街に侵入した岩土竜(ラピスモール)を次々に狩って行った。

 爪や鋭い鼻の攻撃は脅威だったけど、位階は高くても橙銀級程。怪我人を出しならがらも、十数分経つ頃には視界内の全ての魔物を討伐することができた。


 エリネン氏も僕と同じ判断をしたのか、あたりを見回してふぅと息を吐いた。

 そして岩土竜(ラピスモール)達が通ってきた石壁の穴を覗き込み、忌々し気に呟く。


「くそっ…… こんなにでかい穴開けくさって」


 そして穴に背を向け、部下の人たちに指示を飛ばす。


「わえら、討ち漏らしがあらへんか探せや! 怪我人は一箇所に集めて手当せえ! もぐらどもも一箇所に集めろや! 後で処理するさかいな!」


「「へい、姉貴!」」


 彼女の言葉に、部下の人達はテキパキと戦後処理をし始めた。

 指示を出す側も出される側も慣れているように見えるので、こういったことは地下街では日常茶飯事なのかもしれない。

 人手が必要そうだし手伝いを申し出よう。そう思って一歩近づいたその時、彼女の背後、石壁の穴の中の闇が蠢いた。


「後ろだ!」


「ジィィーーーッ!!」


 僕の声と同時に、石壁の穴から牛のような大きさの岩土竜(ラピスモール)が飛び出してきた。

 エリネン氏はすぐに反応して後ろを向いたけど、打ち下ろされた爪をドスで受けるのがやっとで、そのまま地面に叩きつけられてしまった。


「ぐはっ!?」


 悶絶するエリネン氏に、巨大な岩土竜(ラピスモール)が追撃の爪を振り下ろそうとする。

 距離は10m程。今から走っても間に合わない。ならば--

 

雷よ(フルグル)!』


 バァン!


 僕の手から迸った雷撃が岩土竜(ラピスモール)に直撃し、その体を焼く。

 巻き添えを恐れて威力を絞ったのと、巨体故かまだ息はある様だ。しかし、その動きは止まった。

 その隙に身体強化を最大化して地を蹴った僕は、一瞬で巨体の側に到達、その頭部に短剣を打ち下ろした。


「ジュッ……!」


 岩土竜(ラピスモール)が短い断末魔をあげる。

 頭蓋を砕き、無理な力を入れたせいで短剣が折れた感触と共に、巨体は地に倒れ伏した。


「ふぅ…… 大丈夫ですか?」


 魔物が絶命したことを確認し、倒れているエリネン氏を振り返って手を差し伸べる。

 彼女は惚けた様に固まっていたけど、数秒後にはっと我に返った様だった。


「あ、あぁ。おおきに、べっちょないわ」


 そう言って、彼女は僕の手を取り起き上がった。方言なのか、正直何言ってるのか分からなかったけど大丈夫そうだ。

 そこに、騒ぎを聞きつけた部下の人達も駆けつけた。


「エリネンの姉貴、怪我は!?」


「あー、あらへんから心配せんでええ。それより、怪我人の手当てをしちゃれ。急いでな」


「へ、へい!」


 それから僕らも戦後処理に参加し、一時間ほどで怪我人の手当てや魔物の処理などを終えることができた。

 その後、フィリスと呼ばれていた強面の兎人族(とじんぞく)とコソ泥の女性も合流し、自己紹介も含めたエリネン氏への事情説明が成された。

 僕らも別にやましいことは無いので正直に説明したけど、コソ泥氏の、僕らがいきなり彼女の腕を折ったという嘘だけは訂正させてもらった。


「なるほどな…… 事情はわかったで。ほんなら、ポーラの腕を折った件と、フィリスの姉貴達を伸した件。こん二つは、魔物討伐を手伝うてもらた事と、ウチを助けてくれた事とで手打ちにしよか」


 双方の話を聞いたエリネン氏は、全員を見回しながらそう言った。


「……まぁ、しゃあないやろ」


「そ、そんな…… あんまりですよ、フィリスの姉貴!」


「じゃかぁしい! あの放射光見て無かったんかわれぇ! 青鏡級のバケモンに喧嘩売って、命があっただけでも感謝せぇ!」


「ひぃ……!」


 フィリス氏に凄まれて悲鳴をあげるコソ泥のポーラ氏。ちょっと可哀想だけど、自業自得だから仕方ない。


「ありがとうございます。助かりました、エリネンさん」


「エリネンでええて。 --ところでタツヒト。おまはんら、何か探しよーらしいな?」


「ええ。多分この地下街のどこかにあると思うんですが…… 古代遺跡ってわかりますかね? 見慣れない造りの建物とか、どうやっても扉を開けられない頑丈な部屋とかって、見たことあります?」


 ダメもとで聞いてみたら、エリネン氏。いや、エリネンは意外にも何か知っているような反応を見せた。


「あん? それって、やたらのっぺりした金物でできた、けったいな部屋のことか? 開け方のよー分からん扉のついた」


「「……!」」 


 エリネンの言葉に、僕らは三人で顔を見合わせた。


「そ、それです! どこにありますか!?」


「--ほーう。よっぽど知りたいらしいな?」


 思わず問い詰めてしまった僕の反応に、エリネンはニンマリと頬を歪めた。


「う……」


 失敗した。こういった人達に弱みを見せるのはとてまずい。


「もう…… 素直なんだから」


「仕方にゃいにゃ。そこもタツヒトのいいところにゃ」


「へっへっへっ。そない警戒せんでええ。これは取引や。まぁ話だけでも聞いとくれえな」






 エリネン達との交渉を終えた僕らは、日の出と共に地下街から地表に登り、宿に向かって走り始めた。


「はぁ…… 勝手に夜曲(やきょく)の人達と取引した事、怒られちゃいますかね?」


「いいえ、大成果だと思いますわぁ。古代遺跡の場所に関しては全くの不明だったんですもの」


「期間限定だし、やることは冒険者と同じだにゃ。ロスニアも怒らないと思うにゃ。多分……」


 エリネンが僕らに持ちかけた取引とは、彼女の知る古代遺跡の場所と引き換えに、僕らに地下街の魔物討伐を手伝えというものだった。

 彼女達夜曲(やきょく)は一言で言うと犯罪組織だ。比較的白よりな活動として、地下街の合法な賭博や売春の元締めを行なっている。

 一方で、揺りやたかり、非合法な賭博や売春、人身売買、違法や薬物等の密売など、真っ黒な事も行なっている。

 その中でもかなり白よりの活動が、エリネン達警部がやっていたような、地下都市に侵入してきた魔物等への対処だ。

 普段はあの人員で回せているだそうだけど、最近出現する魔物が増え過ぎていて、彼女達だけでは対処しきれなくなっていたそうなのだ。

 よく分からないけど、冒険者に討伐を依頼するのは夜曲(やきょく)の主義に反するけど、今回のような対等な取引ならばOKらしい。

 魔物の増える時期は大体数ヶ月ほどで落ち着くというし、魔導大学の件もあってどうせ暫くはこの街にいるので、取引に応じることにしたのだ。


「だといいんですけど…… それより、まずは朝帰りを隠蔽することが先決ですね」


「ですわねぇ。こんなにかかるとは思いませんでしたわぁ」


「にゃー…… こっちはバレたら怒られそうだにゃ……」


 なるべく足音を立てず、かつ急いで宿に戻った僕らは、入り口を静かに開け、階段を可能な限り静かに登った。

 宿の部屋は、正に大人の事情でお子様組と大人組で分けている。その大人組の扉にゆっくりと鍵を差し込み、そ〜っと回す。


 カチャリ……


 思ったより大きく鳴った金属音に心臓が跳ね、後ろからゼルさんが文句を言う。


「ばか、もっとそ〜っと開けるにゃ!」


「いや、これ以上静かには無理ですよ!」


 二人して小声で罵り合っていると、キアニィさんがため息をついた。


「お二人とも、ここで騒いだらそれこそ気付かれますわよ? もっとも、もう無駄のようですけど……」


 そして止める間もなく、扉を開け放ってしまった。

 もっと静かに! そう抗議しようとしたけど、部屋の中の光景を見てその必要が無かったことを悟った。

 ベッドに腰掛けて微動だにしないヴァイオレット様とロスニアさんが、こちらに目を向けていたのだ。


「「あ……」」


「やぁ。三人とも、随分早いお帰りだな。まだ朝日が出たばかりじゃないか」


「本当ですねぇ。ゼルはまだしもタツヒトさんやキアニィさんまで…… 今日ばかりは神も私が怒りに身を任せる事をお許しになられる気がします」


 声色は普段と同じ、いや、むしろいつもより優しげなのに、その表情は能面のようだ。

 殺気を向けられているわけじゃないのに、背中が冷や汗で濡れて喉が渇く。


「あ、あの…… これは--」


「そんな所に立っていないで、中に入ったらどうだ? そして精々我々の怒りを鎮めるに足る言い訳をしてくれ」


「でないと、私達どうにかなってしまいそうです。ほら、早く」


「は、はい!」


 まるで巨大な質量を持つかのような言葉。まるでその重力に引き摺り込まれるように、僕らの体は部屋の中(死地)へ入っていった。


お読み頂きありがとうございます。

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【月〜土曜日の19時以降に投稿予定】


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