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亜人の王 〜異世界転移した僕が平和なもんむすハーレムを勝ち取るまで〜  作者: 藤枝止木
12章 四八(しよう)戦争:急

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216/510

第216話 三国首脳部会談(2)

遅くなりましたm(_ _)m


翻訳装具を着け忘れていたので、前話を修正しました。

2024/09/04 末尾付近を修正


 ロスニアさんの開始宣言のあと、会議は主要な参加者の自己紹介から始まった。

 しかし、三国の重要人物しか居ないとは言え、会議室の大きなテーブルに着席している人数だけでも20人以上居る。正直覚えきれない。特に連邦の州長はヒルデガルド氏以外に初対面の人が11人もいるので厳しい。

 しかも、それぞれ僕らのような護衛や補佐の人物を従えているので、彼女達も合わせるとこの場には100人近い人数が居ることになる。全員の顔を覚えるのは諦めた。

 ロスニアさんの隣にはバージリア枢機卿の部下の方が書記として座っているので、後で議事録を見せてもらおう。


 自己紹介に際して連邦側の州長達からは、両国に対するしつこいくらいの感謝と、先だって侵攻した王国への正式な謝罪の言葉が続いた。

 思えば、王国は国内に四人しか居ない紫宝級の戦力を全てここに投入した上、莫大な支援物資まで提供しているのだ。

 支援を受ける連邦の方が恐縮、というかビビってしまうくらいの全力投球振りだ。

 

『皆様、自己紹介をありがとうございました。では、本題に移ります。本会談の目的は、邪神を討滅可能な作戦を立案することです。

 それにはまず、邪神とその眷属の戦い方や脅威度、そして弱点や行動の傾向などについて、この場の全員が正確に把握するのが良いと思います。ヒルデガルド様、今の点についてこの場の皆様に共有していただけますか?』


『承りました、御子殿。まず邪神についてですが--』


 ロスニアさんは大分こういったことに慣れてきたようで、重鎮達に臆さずにスムーズに会議を進行させていった。

 ヒルデガルド氏から語られた内容は、プルーナとオルテンシア氏から聞いた内容と概ね同じものだったけれど、邪神の絶望的な戦闘能力を再確認させられたかのような内容だった。

 邪神は紫宝級の戦士が放った全力の延撃(えんげき)でも少々傷を負う程度で、魔法の一撃でその戦士をバラバラにし、紫宝級の風魔法使いによる大気への干渉を全く寄せ付けなかった。

 眷属の方も、おそらく生後1年も経っていないのに戦略的に動く知能を有し、高い戦闘力を誇る上に繁殖力も凄まじい。

 ここには人類の最高戦力である紫宝級の強者が何人も集まっているけど、それでも連中を討伐できるとは思えない。全員似たような感想なのか、自然と会議室にいる人達の表情も沈んでいく。


『--と、奴らの戦い方や脅威度に関してはこんなところでしょう。残念ながら弱点らしきものは発見されていませぬ。

 強いて言うなら邪神はその巨体故、木々の間隔が狭い場所では移動速度が鈍るといった程度でしょう。

 そして、行動の傾向ですか…… 奴の行動理念は、餌が豊富な人里を襲い、そこで子孫を増やすという単純なものに見えました。

 まだ新たな連邦の位置は掴まれていないようですが、聖国の方々はすでに眷属に遭遇したと言う。奴らは我々を追って、きっとここを見つけるでしょう……

 将軍。君はかつての討伐作戦を指揮した。何か気付いたことはないだろうか?』


 ヒルデガルド氏から指名を受けたエーデルトラウト将軍が、ざっと椅子から立ち上がった。


『は。自分も州長殿と概ね同意見であります。付け加えるとすれば、自分が指揮した邪神の包囲殲滅戦においては、強大な力を持つ巨体の邪神と万に届く眷属が、高度に連携して戦っていたという印象でありました。

 恥を晒すようでありますが、エスター殿達…… 前作戦で自分が死なせてしまった連邦の紫宝級冒険者達は、邪神との戦いに際して相応に眷属からの妨害も受けていたであります。

 奴らの分断が、今般の三国合同討伐作戦の成功確率向上に資すると愚考するであります』

 

 将軍は発言を終えると、またキビキビと椅子に座った。

 眼光の鋭さとは裏腹に、軍人らしくも丁寧な言葉遣いに面食らってしまった。あと話し方が似ているせいか、なんだかシャムがそわそわしている。

 

『ヒルデガルダ様、エーデルトラウト将軍、ありがとうございました。他に何か情報をお持ちの方は…… いらっしゃらないようですね。

 では次に、私たちの保有戦力について確認していきたいと思います。最初に連邦の方々から--』


 前回連邦が邪神討伐に当てた戦力は、ざっくり紫宝級3名、青鏡級20名を含む総勢6万程の戦力だったそうだ。

 結果は、紫宝級冒険者2名と青鏡級の半数、そして全戦力の半数を失うという大敗を喫した。

 今回の三国の総戦力を集計すると、紫宝級6名、青鏡級30名を含む総勢6万の勢力だ。

 前回と総数は同じだけれど質は確実に向上している。ちなみに兵数の比率は、王国と連邦とで半々程度だ。

 連邦は邪神討伐の失敗と王国侵攻の失敗により、その勢力を激減させてしまっている。各里の最低限の警備人員も考えると、邪神討伐には3万程しか当てられないのだ。

 王国の遠征部隊が連邦に来た際、捕虜の中でも手練の連中を返還したそうだけど、焼石に水の状況だ。

 

『さて、おおよそ情報は出揃ったかと思います。では次に、具体的な討伐作戦について組み立てていきましょう。何かご意見のある方は--』


 最初は三国とも活発に意見を出し、やはり邪神と眷属を分断し、包囲殲滅する基本方針を貫くのがよかろうということになった。しかし、そこからは重苦しい時間が流れるばかりだった。

 討伐対象である邪神は、強力すぎる防御力と即死攻撃のような魔法を操る。分断した末に邪神をどのように倒すのか、その具体的な方法を誰も提案できないでいたのだ。


 以前僕が魔導士団にいた時にやったように、超遠距離から強力な重合(じゅうごう)魔法で不意打ちするという手もあるだろうけど、相手は極まった紫宝級の風魔法使いだ。

 ヴァランティーヌ魔導士団長が他の魔法使いの力も借りて全力で狙撃しても、風魔法でそらされるか威力を減衰させれ、まともにダメージを与えられないだろうと言う結論になってしまった。

 何か根本的な部分を変えないと、きっと前回の二の舞になる。連邦の重鎮達の表情が雄弁にそう物語っており、その雰囲気は会議室全体に広がっていった。


 そんな不毛な時間がしばらく続いた後、ロスニアさんはパンと手を叩いた。

 

『皆様、まだ王国の紫宝級冒険者の方々がいらっしゃっていません。一時会談を中断して--』


 カァン、カァンッ、カァンッ、カァンッ……!


 しかし、突如として外から鳴り響いた鐘の音に遮られた。同時に連邦側の人員の顔がさっと青ざめる。


『何事であるか!?』


 僕らも含めた王国と聖国の人間が臨戦体制に入る中、王国のベアトリス騎士団長が鋭く叫ぶ。


『……見つかってしまった』


 それに応えるように、連邦の州長の一人が項垂れながらポツリと呟いた。

 その数秒後、会議室の扉が音を立てて開き、息を切らして兵士の人が走り込んできた。


『ほ、報告します! 連邦外郭の里数十が、ほぼ同時に邪神の眷属から襲撃を受けたようです! 連邦軍への救援要請を伝えてきています!』


「「……!」」


 王国と聖国に人々が息を呑む。


『ほぅ…… なるほど。大森林に散った里同士が連絡を取り合う手段があるのですな。これは知らなかった』


 一方、聖国のヴァランティーヌ魔導士団長が一人だけ少し冷ややかに呟いた。

 言外に、そんな作戦上重要そうな通信手段聞いていないのだが? と言っているように聞こえる。

 実際僕もそう思う。国防上秘密にしたいのだろうけど、今はもうそんな段階じゃないでしょうに……


『--その通りです。我らは糸の扱いに長じています故…… しかし、申し開きは後にさせて頂きたい。エーデルトラウト将軍!』


 ヒルデガルダ氏の声に将軍が立ち上がった。


『は! 兵士よ、邪神の姿は確認されていないのだな!?』


『は! 邪神出現の報告は受け取っておりません!』


『了解した! すぐに救援を送ると返答せよ!』


『は!』


 伝令の兵士さんが会議室から出ていくと、将軍とヒルデガルド氏が頷き合い、二人揃って王国と聖国の人達に頭を下げた。


『早速でありますが、王国、並びに聖国の友軍に要請…… いや、お願いするであります。

 我々の現在の戦力では到底被害地域全域に対応しきれない…… どうか、ご助力を!』


『--元よりそのつもり。さあ、どこへ戦力を向かわせれば?』


『勿論、聖国も協力は惜しみませんよ』

 

 王国の代表であるであるプレヴァン侯爵と、聖国の代表であるバージリア枢機卿。その双方が、将軍の懇願に大きく頷いた。

 そしてそれを目にしたロスニアさんが僕らを振り返る。懇願するような表情だ。


「わかっています。僕らだって、そのためにここに来たんですから」


 僕が応えるの合わせて、『白の狩人』のみんなも力強く頷いてくれた。


「皆さん、ありがとうございます……!」


累計Pvが6万を超えました!

いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m

【月〜土曜日の19時以降に投稿予定】


※ちょっと下に作者Xアカウントへのリンクがあります。

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