表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/484

第011話 ケンタウルスの騎士(1)

前章のあらすじ:

 もんむす好きの高校生、狭間立人(ハザマ タツヒト)は、突然異世界に召喚されてしまった。

 召喚された先で女の子が魔物に襲われているところに遭遇し、その娘を助けて無事村に送り届けることに成功する。

 その際、行き違いから村にいたケンタウルスの女騎士に叩きのめされてしまったが、誤解が解けて村に招き入れてもらった。


 イヤホンのような形の翻訳機を触りながら、目の前の女騎士さんが僕を見つめている。

 異邦人、確かにそう言った。

 僕が別の世界から来たことを知っているのだろうか。


 『……この装具』『訓練』『必要』


 『……了解』


 女騎士さんからそう提案されて現実に引き戻された。

 そこからしばし会話の練習をすることになった。

 内容は今の天気だとか、この場に人が何人いるかと、その場でお互い正解がわかるようなものばかりだった。

 驚いたことに、体感で15分ほど会話したあたりからかなり翻訳が滑らかになってきた。


 『ふむ。かなり円滑に会話ができるようになったと思うのだが、どうだろうか』


 『はい。ほとんど違和感なく会話できています。この装具はすごいですね』


 『ふふっ、そうだろう。貴殿のような、他国の人間とやりとりする時には特に重宝している』


 ちょっとドヤ顔になってる女騎士さんかわいい。

 結構年上かと思ったけど、もしかしたら意外と年が近いのかも。

 しかし、”他国と人間”といった瞬間はわずかに鋭い気配がした。





 

 『さて、そろそろ本題に入ろう。私はヴァイオレット・ド・ヴァロンソルという。ここヴァロンソル侯爵領において、領軍騎士団の中隊を指揮している』


 ……翻訳が正しければ、軍人かつかなり上位の貴族の血縁の方っぽい。

 ここはの文明レベルは中世くらいに見えるから、不敬を働かないようマジで気をつけよう。

 結構フランクに話してしまったけど、寛大なお心で許してくれているんだろうな……


 『僕はハザマ・タツヒトといいます。タツヒトの方が名前です。職業は…… 学生です。あの、ヴァイオレット様とお呼びして良いでしょうか』


 僕の言葉に、ヴァイオレット様の眉が僅かにはねた。

 気分を害している様子はないけど、驚かれた様子だ。

 あ、ヴァイオレットの方が名前か…… 早速不敬を働いてしまった。


 『かまわんよ。こちらもタツヒト殿と呼ばせてもらおう』


 『はい、もちろんです。ありがとうございます』


 よかった。許してもらえた。


 『しかし学生か…… いや、まずは良くぞ当家の領民を救ってくれた。礼を言う』

 

 そう言ってヴァイオレット様は僅かに頭を下げた。

 両脇から、息を呑む声が聞こえた。

 あ、忘れてたけど、村長夫妻(多分)も同席していたんだった。

 そうか。貴族様が平民、と言うか怪しい風体の小僧に頭を下げるのはだいぶ不味いよな。


 『えっと…… なんというか、恐縮です』


 こちらもガバリと頭を下げながら返答する。

 

 『それと、襲いかかってすまなかった。別の開拓村での任務を終え、隊の者達に後を任せてここの様子を見に来たら、エマがいないと皆が騒いでいたのだ。

 そこに…… 失礼だが素性の怪しいタツヒト殿がエマを連れて現れたというわけだ』


 『いえいえ、お気になさらずに。あの状況では誤解されても仕方ないですから』


 傍から見たら、幼女に覆い被さる不審な男だったからなぁ…… 地球でもいきなりぶん殴られるかも。

 というか、村から全身甲冑の騎士が飛び出してきたのに違和感があったけど、そんな経緯だったんだな。

 ……ん? いやでも、中隊長のヴァイオレット様が単独でこの村の様子を見に来るのも変な気が……

 あー、エマちゃんとすごく仲良さそうだったから、本当は任務を抜け出して彼女に会いにきたとかかな。

 だとしたらちょっと微笑ましいな。


 『そう言ってもらえると助かる。ところで、加減はしたつもりだったが、腕は痛まないだろうか?』


 『えっと、実は結構痛みます』


 『そうか…… 重ねてすまなかったな。あとで治療の手配をしておこう』


 おぉ、ありがたい。ポーションは使い切ってしまったので、どうしようかと思ってたんだよね。

 ヴァイオレット様はそこでお茶を一口飲み、少し鋭い視線を僕に向けた。


 『タツヒト殿、通常であればこのまま恩人を歓待したいところだが、如何せん貴殿は怪し過ぎる』


 『……と、言いますと?』


 自分が怪しいやつだと自覚しながらも続きを促す。


 『貴殿の顔立ち、服装、言語、そのどれもが私には馴染みがなく、私の一撃を防げるほどの手練でもある。正直、隣国が放った間者と言われた方が納得できる。エマを助けてくれた件がなければ、今すぐ拘束しているところだ』


 ひぇっ、怖いことをおっしゃる。

 

 『なるほど…… エマちゃんに救われましたね』


 そう答えると、ヴァイオレット様は一瞬キョトンとした顔をしてから声を出して笑い出した。


 「ハッハッハッ」


 おぉ、この世界でも笑い声は同じなんだな。そして笑顔もお美しい。


 『確かにそうだな。私としても貴殿を問答無用で拘束する真似はしたくない。疑いを晴らすためにいくつか質問をするので、正直に答えて欲しい』


 ……ここからは、さらに慎重に受け答えした方が良さそうだ。

 僕は神妙な顔で頷いた。


 『まず、貴殿の所属や立場などについて詳しく教えてもらおう。出身国、領、村、現在の所属や職業などだ』

 

 『はい……あの、信じ難いことだと思うのですが、どうやら私はこの国というか、この世界の外の世界から来たようです』


 『……ん? よく理解できなかった。装具の調子が悪いのか?』

 

 『いえ、多分正常です。話すと長いのですがーー』

 

2章開始です。お読み頂きありがとうございました。

気に入って頂けましたら是非「ブックマーク」をお願い致します!

また、画面下の「☆☆☆☆☆」から評価を頂けますと大変励みになりますm(_ _)m

【日月火木金の19時以降に投稿予定】


※ちょっと下に作者Xアカウントへのリンクがあります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ