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きみの肩を抱き寄せた

作者: 清水漱平

記憶なんてごちゃごちゃしてる。すでに意味不明の領域。それを言語化したりストーリー仕立てに整理整頓すると、どうしたってフィクションになっちゃうんだよ。だから覚えていることでも、『あれ?』って違う物語になっちゃったりするし、覚えていないし知らないし経験のないことをスラスラ語っちゃったりするんだよね。

大雨で集団下校の日のことさ、いつもと同じような帰路さ。違ったのは、相合傘だったこと。

梅雨になりベタツク素肌と素肌で触れ合う

抱き寄せた肩は かなり濡れていたし

どんなに思いが強くても

守りきれないなにか

せつなさにじんで まぶたが はれる

どうにもならないのかな


このままいそ傘を投げ捨てて駆け出してしまいたい

泥が跳ねて汚れてしまう

そんな心配ばかりだ


気づかないうちに惹かれあうことも

忘れたままでいる他愛ない時間

からかわれている気配だけ

こんなにつまんないなんて


なにも変わらない

なにも変わらない

なにも変わってない

瞬間絶望グルグル

なにか変えたい

なにか変えたい

なにがなんでも

変えてしまいたい

さらに強く 

きみの肩を抱き寄せた


ただでさえ ひとり用の ちいさめの傘のなか

ひやかされるのを避けて 寄り添えないふたり

どうせくだらぬうわさになるなら

こちらも勝手にするさ


おれだけワルモノならいい

そんなの都合のいい話

やるならやるで覚悟を決めて

世界中に孤立してやるさ


あなたのとまどう顔が痛くて見てられない

わがままなやつと嫌えばいいさ

抱き寄せた肩 びしょ濡れじゃん

素肌と素肌が触れあって夏服ベタツク


見るに耐えかねて目を閉じれば

なぜか負けた気がしてしまう

どうせ味方のいない世界なら

好き放題に生きていくか


あなたを巻き込んでしまったことを

あやまりたくてしかたない

のを必死に こらえ はぎしりのあと

さらに強く 

きみの肩を抱き寄せた

もっと上手に対処できたんだろうさ。って大人になってから、なんとでも言える。いや。大人になったからこそ言える、おまえの態度と行動は正しかったよ。世間的に誉められたことじゃないかもだけど、おまえは立派に立ち振る舞った。あれでいい。それでいい。だからいい。よくやった、がんばった、恥ずかしくて悔しくて情けなくて泣くに泣けなくて怒りにまかせて殴ることもできずに耐えて堪えて耐え抜ききって、それで。それで。それで、どうなったって?

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