5月26日 金曜日 お名前決定!
今日は朝から新垣さんがそわそわしっぱなしでした。何といっても、今日は子猫ちゃんを引き揚げ、明日は新居にお引越しです。
「ようやくおまえさんとの同居も終わりだね。」
「ナ~。」
「亡くなった兄弟の分も大事にしてもらいなよ。」
「ナ~。」
子猫もわかっているのか、今日はよく顔を出して鳴いています。ミルクを上げるのも今日が最後です。そう考えるとなんだか寂しいですねぇ。
お昼休みに、新垣さんが子猫の様子を見に来られました。
「こんにちは。」
「新垣さん、お疲れ様です。今日も子猫ちゃんは元気いっぱいですよ?」
「はい。ありがとうございます。」
子猫を抱き上げてすりすりしている姿が本当にかわいらしいですね。
「そう言えば、お名前は決まったんですか?」
私がそう質問すると、新垣さんは困ったような顔をして、子猫を段ボールに戻し、お弁当を広げました。
「実は、いろいろ考えているんですけど、あんまりしっくりくる名前が浮かばなくって。このままだと、そのまんまでミケちゃんになりそうです。」
「あの、よかったらなんですけど。。。」
私は受付の引き出しから一枚の紙を取り出しました。
「先週お泊りした時に、時間があったのでちょっと考えてみたんです。」
そう言って、私は用紙をお渡ししました。雨の日に保護され、三毛猫のメス、兄弟は倉庫裏に埋葬して、今日までいろいろありましたね。
・アイリス 日本語で花のアヤメのこと。語源はギリシャ神話の虹の女神イリス。
新垣さんは何度も用紙に書かれたメモを読み、
「アイリス。」
と、何度もつぶやきました。
「雨の後には虹がかかります。この子猫は捨てられて、兄妹も死んでしまいましたが、新垣さんと言う素敵な飼い主に恵まれました。それに、埋葬した倉庫裏にもあやめが咲いていましたので、どうかなと。」
「すごい! すごく素敵です!!」
新垣さんは満面の笑顔でそう言うと、もう一度子猫を抱き上げて、
「アイリス。君の名前はアイリスだよ。これからよろしくね!」
そう言って何度も何度も撫でていました。
「ナ~。ナ~。」
子猫、改めアイリスも自分の名前を気に入ったようですね。
「ありがとう山盛さん! すっごい素敵な名前です!」
「気に入っていただけて良かったです。」
今日は浜崎所長がわざわざ車で出社されて、新垣さんとケージにいれたアイリスを送っていきました。電車に乗るのはちょっと気が退けたそうです。警備室前で見送ると、ケージに入ったアイリスがこっちを見て鳴いた気がしました。ようやく、肩の荷が下りた気持ちです。幸せになってね。
警備日誌 05月26日 金曜日 晴れ
保護した子猫の搬送のため、本日は浜崎所長が車にて出社。
子猫の名前は「アイリス」に決定。
新垣さんに引き取られて無事に退館する。
ほか、異常なし。