2月26日 月曜日 下期防災訓練日程
昨日の今日ですので、新垣さんにお会いするのがなんだか気まずかったのですが、そうも言ってはいられません。しかし、ここは職場で、彼女はクライアント先の社員様です。
「おはようございます!」
と、とりあえず元気に挨拶をしてみたのですが、
「おはよう、ございます。」
と、元気なく返し、新垣さんはオフィス棟へ駆けて行ってしまいました。やれやれ、困ってしまいましたねぇ。
ため息交じりに外周巡回を終わらせ、3月に予定している防災訓練のカリキュラムを作成していると、お昼過ぎになって、総務の藤田さんが警備室にいらっしゃいました。
「お疲れ様です。」
「すみませんお仕事中、来月の防災訓練の件でご相談がありまして。」
「どうぞ。」
藤田さんに中に入っていただき、お話を伺いました。
「急で申し訳ないのですが、先方様から3月8日金曜日でお願いしたいと打診がありまして。」
3月8日となると、もう準備には10日ほどしか準備期間がない。
「わかりました。人員はこちらで用意いたします。カリキュラムは上期訓練をもとに作成中ですので、完成次第、ご報告いたします。」
「本当に急ですみません。」
「いえいえ。どうかお気になさらず。」
取り急ぎ、小寺部長と中町さんに相談ですね。
「・・・あの。」
戻りかけて、藤田さんが心配そうにこちらをうかがってこられました。
「新垣が元気ないんですが、何かご存じですか?」
藤田さんがどこまで状況を把握されているのかわからず、うかつなことが言えないので困っていると、
「あの、新垣がバレンタインでどうしたかはうかがっています。大事な後輩ですが、仕事以外ではプライベートな友人でもあるので。。。」
「ああ、そうでしたか。」
と、いうことは今の状況もわかっていらっしゃるということでしょう。私はまだ返事をしていないことと、4月から移動になることをお話ししました。ただ、まだ会社から東都ガス様へお話ししていないので、内密にとお願いしました。
「そうでしたか。」
「返事はまだしていないのですが、新垣さんは移動の件を自分のせいだと思ってしまっています。ただ、この人事異動は新垣さんとは関係なく進んでいる話で、何とか誤解を解きたいのですが。。。」
藤田さんは顎に手を当てて少し考えているようでした。そして、
「山盛さんは、新垣にはどう返事されるのですか?」
と、遠慮がちに聞いてこられました。私は少し悩んだ末、首を振りました。
「そうですか。そうですよね。」
「新垣さんの将来を考えたら、そういう結論しか出せません。」
「わかりました。あの子にはうまく話しておきます。どこか、時間を取ってお話ししてあげてください。」
「はい。」
藤田さんが引き上げると、大きく息を吸い込んで、ゆっくり吐き出すと、私は資料つくりに取り掛かるのでした。
警備日誌 02月26日 月曜日 晴
外周巡回を実施、異常なし。
総務・藤田様から下期防災訓練を3月8日金曜日にしたいと打診有り。
その他、警備業務に異常なし。