2月17日 土曜日 一つの答え
いろいろなことがあった今週末、私はジムに来ています。悩んだ時は身体を動かすのが一番です。ランニングマシーンで汗を流した後、ウェイトトレーニングを繰り返します。あまりに鬼気迫る顔をしていたのでしょうか、
「山盛さん。なにかございまして?」
と、気が付いたら隣にいた深見さんに声をかけられました。
「あ、これはどうも。こんにちは。」
私は自分が一心不乱に身体を動かしていたことに気が付き苦笑いしました。
「なにか嫌なことでもあったんですか?」
「はは。嫌なことではないんですが。」
ジムでのトレーニングを終えた後、深見さんのお誘近くの珈琲店に移動しました。美味しいコーヒーをいただきながら、私は新垣さんのバレンタインでのことや、これまでの顛末を相談しました。やはり、女性のことは女性に相談するのが一番なような気がしたものですから。
深見さんは黙ってじっと私の言葉を聞き、話を聞き終えると一口コーヒーを飲んでから微笑みました。
「私と主人は10歳年が離れていることはお話ししたと思うのですが、それでもこれからのことに不安はあります。この人生を後悔はしていませんが、順当に行けば、いつか主人が先にいなくなります。そのあと、私はどうすればいいのか考えも及びません。山盛さんの不安はそう言うこともあるのではないですか? それに、その彼女さんのことを考えると、恋ではあっても愛にはなっていないような気がします。」
そうですよね。ましてや新垣さんと私は30歳以上も歳が離れている。世の中にはそういうご夫婦もいるかもしれませんが、新垣さんの感情は『恋』であって、『愛』ではないと私も思っています。普通に考えたら、人生の長い時間を一人にすることになってしまいます。そんなこと、私には耐えられません。
「彼女のためにも、私はお断りしようと思いますが、傷付けない様にするにはどうすればいいのか、まだ考えがまとまりません。」
「ふふ。山盛さんはお優しいですものね。今のお気持ちを素直にお話すればいいのではないですか? 恋人や夫婦にならなくても、年の離れた友人というのも素敵なものですよ。」
「歳の離れた友人、ですか。」
そういうスタンスも確かにあるのかもしれません。新垣さんが望まれるかはわかりませんが。でも、あの子を大事に、、、
「あ、そう言うことか。」
深見さんにお礼を言って別れた後、私は自分の中で何となく考えがまとまったような気がしてきました。私、山盛亮に取って新垣さんがどんな存在なのか。
私は一度大きく息を吐くと、夕日の中を家路に着くのでした。