2月10日 土曜日 サムシングブルー
目が覚めると、いつもと違う風景に一瞬戸惑ってしまいます。
「あ、実家に泊まったんだっけか。」
そうなんです。明日の結婚式用のスーツを取りに実家に来たついでに泊まったのでした。冠婚葬祭用に礼服と、隊長会議用にスーツは部屋に置いてあったのですが、結婚式などに着るようなきちんとしたスーツは邪魔になるので実家に置きっぱなしでした。しばらく着ていなかったのでウエストが心配でしたが、どうやら太ってはいないようですので安心でした。
「ふふ。」
思わず夕べ中町さんから頂いたメッセージを思い出します。
『礼服にアジャスターが付いているのに入らなくなってる!!』
ということで、丸木くんや佐藤くんは礼服を持っていないということもあり、関東SS出席者は全員スーツにしようと連絡が来たのでした。メーカーにもよると思いますが、礼服のアジャスタ-って前後6センチ動くそうですね。だいたい2キロ太ると1センチ変わるそうですので(諸説あり)、中町さんは少なくとも10キロ以上はお太りになったということでしょう。礼服をいつ買ったかはわかりませんが。心配になって私も着てみたのでした。
「おじさん、おはよう!」
萌絵ちゃんがノックもなしに入ってきたので、思わず毛布で身体を隠してしまいます。私は寝る時はけっこう薄着で、肌着みたいなものですので、姪っ子と言えどもちょっと恥ずかしいです。
「ノックくらいしなさい。」
「はは、ごめんって。それより、明日結婚式でしょ? ワイシャツとネクタイ買ってきたから着てみて!」
「わかった。わかったから!」
差し出されたワイシャツとネクタイを腕を伸ばして受け取ります。
「大丈夫だよ。私、看護師だよ? おじさんの裸なんて下も含めて見慣れてます。」
ケタケタと笑う萌絵ちゃんを部屋から追い出して、受け取ったワイシャツとネクタイを身に付けます。ブルーのクレリックカラーのワイシャツとサックスブルーのネクタイ、ネクタイと同じ記事でできたポケットチーフ。あれ、結婚式って温かい家庭を築く意味で、暖色系以外駄目じゃなかったっけ?
聞いてみようかとリビングに行くと、
「お! おじさん似合うじゃん!」
と、萌絵ちゃんがオッケーサインを出してくれました。母も父もよく似合うと褒めてくれます。
「でもさ、結婚式って暖色系じゃないといけないんじゃないの?」
「なんで?」
「寒色系は冷たい家庭をイメージさせるからダメだって聞いた気がしてさ。」
「大丈夫だよ。サムシングフォーって言って、古い物、新しい物、借りた物、青い物を花嫁が身に付けると幸せになれるって文化があって、それにちなんでお祝い事に青いコーディネートをすることも多くなってるの。幸せの青い鳥なんて話、おじさんの方が詳しいでしょ?」
「ああ、あるほど。」
確かに幸せの青い鳥はよく言いますね。後で調べたのですが、サムシングフォーの意味は面白いものです。
・サムシングオールド(Something old):古いもの
先祖から受け継がれてきたようなものを差して、『家族の絆』をあらわすそうで、祖母や母から譲り受けたものを身に付けるのが一般的です。
・サムシングニュー(Something new):新しいもの
新しいものは『未来への希望』を意味していて、新品の物を身に付けます。
・サムシングボロー(Something borrowed):借りたもの
幸せな結婚生活を送っている人の『幸運にあやかる』という意味があり、すでに結婚して幸せになった友人などから何かを借りることが多いそうです。
・サムシングブルー(Something blue):青いもの
幸せを呼ぶ色とされる『青』をさし、花嫁の純潔や清らかさを表す色。結婚式では人目につかないように青い物を身につけるのが良いとされています。
いろいろあるのですね。結婚式にはほとんど縁がないもので、結婚式に付いて調べてみるとなかなかいろいろなことが知れて楽しいです。サムシングブルー。川室くんたちに幸せになってほしいので身に付けていくことにします。
コーディネート指南代ねと、その日の夕食は焼き肉をおごらされたのは、また別のお話です。。。