2月3日 土曜日 人の生き様
昨日はだいぶ飲んでしまいました。だいぶ御寝坊さんでしたね。目が覚めた時には外はもう明るくなっていました。選択と掃除を済ませていつも通りにジムに向かいます。今日も雲一つない快晴ですが、ただ、凍えるような寒さですね。北風も強く、体感温度はかなり低いです。
「寒い寒い。」
ダウンジャケットの襟を立てながら、足早にジムへ駆け込みます。
「こんにちは。今日は寒いですね。」
「はい。もう手足が冷たくなっちゃいました。」
「しっかりほぐして、怪我しないようにしてくださいね。」
福原さんにそう言われて、私はトレーニングウェアに着替えた後、入念にストレッチをしました。歳を取ると身体は固くなると言いますが、ジムに通っているおかげか、私の身体は柔らかい方だそうです。みなさんは前屈は得意ですか? 私は両手が地面にベタッと付くくらいまで曲げられます。中町さんなんかは膝下くらいまでしか手が行かないので、最初はふざけているのかと思ったくらいです。
身体が温まってきたら、ウェイトトレーニングをして筋肉を鍛えます。身体を鍛えて汗を流すと、昨日までのことが少しでも忘れられます。歳を取ると涙もろくていけません。最期の浜崎さんの姿を思い出すと涙が出てきてしまいそうです。
「山盛さん。何かありましたか?」
気が付くと、隣の器具で深見さんがトレーニングをされていました。夢中になっていたので気が付きませんでした。
「はは。すみません。」
「なんか、鬼気迫るものがありましたけど。」
「いや。実は。。。」
私は浜崎さんのことをお話ししました。
「そうでしたの。それはお辛かったですね。近しい方が亡くなるのは本当につらいものです。私も、昨年母が亡くなりまして、しばらくは何も手に尽きませんでしたから。」
「トレーニングに夢中になっている時は、なんとなく気がまぎれるんですよ。」
「悲しみは時間が過ぎることでしか良薬はありません。でも、そんなに皆様に思われていかれたのでしたら、きっとその方は幸せな人生を送られたのだと思いますよ。」
深見さんに言われてはッとなりました。確かに、誰かが亡くなるのは悲しいことですが、でも、あれだけの方に見送られたと言うのは、実はすごく幸せなことなのかもしれませんね。世の中には、人知れず最期を迎えられ、そして気が付かれるまでに時間のかかってしまう方もいますし、身内のいない方だっていらっしゃいます。私もお葬式であれだけの人数が集まっているのは見たことがありません。それだけ、浜崎様が誰かに与えた影響は大きかったのでしょう。
浜崎様の生き様が、あれだけの方を集めたのですね。
「ありがとうございます。少し気が楽になりました。」
「また、気分転換にお料理教室でもしましょうね。」
人だけでなく、生きてこの世に生まれたからには必ず最期の瞬間があります。せめて、先人に恥じないような生き方をしていきたいものです。私は改めて心に思うのでした。