1月18日 木曜日 ウサギのぬいぐるみ
昨日までの寒さが嘘のように、今日は穏やかに晴れた日になりました。冬場の暖かい日は本当に嬉しいものですね。自販機補充でお見えになったアンファンの河本さんも、暖かい日に動いていて暑くなったのか、今日は腕まくりして作業されていました。
昨日の最高気温は7℃、本日は14℃まで上がっています。まったく、暖かくていいのですが、高寒暖差が激しいと身体の感覚がおかしくなってしまいますよね。
「あれ?」
モニターのチェックをしていると、正門前の道路にウサギのぬいぐるみが落ちているのに気が付きました。あのままでは、車に轢かれてぐちゃぐちゃになってしまいますね。私は外に出て、車が来ないことを確認するとぬいぐるみを拾い上げました。すでに何度か轢かれたのでしょうか、汚れてしまっていますね。よく見ると手作りのようですね。お母さんが我が子のために作ってあげたものでしょうかね。
私はぬいぐるみを警備室に持ち帰り、洗面台で手洗いしてから洗濯機に入れました。警備室には宿泊用の仮眠室とシャワー室が完備されていますが、洗濯ができるように洗濯機と、ガス会社らしくガス乾燥機が付いています。洗濯して乾燥機にかけると、ぬいぐるみは新品同様きれいになりました。汚れが染みにならん無くてよかったです。
おそらく、時間的にも涼風保育園の園児さんの落とし物でしょうか。PCで調べて涼風幼稚園に電話をかけます。
『はい。涼風保育園です。』
「突然失礼いたします。私、隣の東都ガス八王子管理センターで施設警備をしている山盛という者なのですが、こちらの正門前でウサギのぬいぐるみを拾いまして、時間的に園児さんの物ではないかなとご連絡差し上げました。手作りのようですので大事な物ではないかと思って。」
『ホントですか?』
電話口に出た保育士さんが驚いたように声を上げました。
『さきほど、園児のご家族から問い合わせがあったので多分そうだと思います。』
「そうですか。あの、申し訳ないのですが、こちらは1人で警備業務をしているので外すことができません。恐れ入りますが、どなたか引き取りに来ていただけると助かるのですが。」
『はい。今からうかがいます。』
電話を切ってしばらくすると、エプロン姿の中年の保育士さんと、若い保育士さんがお見えになりました。
「涼風保育園で延長をしている東野と申します。」
「保育士の天田です。」
「東都ガス八王子管理センターの警備隊長で山盛と申します。こちらが連絡したぬいぐるみです。」
東野と名乗った園長先生にぬいぐるみをお渡しすると、園長先生は天田さんと名乗った保育士さんに確認をしていますた。
「間違いないです。亜美ちゃんのぬいぐるみですね。」
どうやら園児さんのもので間違いないようですね。
「何度か車に轢かれてしまったようで泥だらけでしたので、勝手ながらこちらで洗濯させていただきました。」
「ご丁寧にありがとうございます。保護者から連絡をいただいていたので園内を探していたのですが見つからなくて。」
「そうでしたか。」
天田さんは嬉しそうに頭を下げると、
「亜美ちゃんの亡くなったおばあちゃんが作ってくれたものだそうで、毎日大事に持ってきていた物なんです。これがないとお昼寝もできなくって。本当に助かりました。」
そう言って再び頭を下げました。
「それは良かったです。それでは、先生方からお返しください。」
何度もお礼を言って先生方はお帰りになられました。無くなったおばあちゃんの作ったものでしたら、まごう事なき一点もの。亜美ちゃんにとってはかけがえのない宝物なのでしょう。偶然とはいえ、保護できてよかったですね。
警備日誌 01月18日 木曜日 晴れ
監視モニターチェック中、正門前にてウサギのぬいぐるみを発見し回収する。
涼風保育園に確認し、園児のものと判明。
東野延長と天田保育士に引き渡す。
その他、警備業務に異常なし。