1月3日 水曜日 平和な正月
正月もああという間に時間は過ぎ、明後日からは新年の仕事が始まります。年末の事件のおかげで、仕事始めは少し違った意味で大変かもしれませんね。警察で事情聴取を受けている八木沢さんの情報はいまだに入らないそうで、新垣さんからのメッセージも辟易しているものばかりでした。
ただ、メッセージのやり取りの中で進展があったことと言えば、お父様の強いご希望で実家に帰ることになったそうです。まぁ、実家のある吉祥寺からでも、八王子は30分くらいで着くので、その方がいいかもしれませんね。もともと、社会人になるから一人暮らしも始めたということだそうで、絶対に独り暮らしじゃないとだめというわけではなかったそうです。自立したかったんでしょうね。
さて、今日の山盛家も何をするでもなく、おせち料理を突きながら、箱根駅伝をテレビで流し見しつつ、雑談をして過ごしていました。本当にのんびりした正月です。昨夜は秀美の発案で、夜遅くまでトランプやらUNOやら、カードゲームをして遊びました。みんなもういい大人のはずなのに、カードゲームってついつい熱くなっちゃいますよね。
「お兄さんは今日帰るんだっけ?」
「うん。明後日からの仕事の準備もあるし、ジムも行きたいしね。」
「そう。じゃあ、帰りは送ったげるわ。」
秀美はそう言って準備をし始めた。相模原の実家から八王子のアパートまでは片道10キロほど、時間で言ったら30分もかからない。私は秀美の申し出をありがたく受け、昼過ぎにはみんなに挨拶すると帰宅することにした。
八王子へ向けて北上していると、
「普通の生活に戻れるといいわね。そのお嬢さん。」
「ん? ああ、そうだね。飼い猫がかわいいから、少しずつでも癒されていくんじゃないか?」
こういう時、アイリスのように側にいてくれるペットの存在は大きいのかもしれない。
「明るくて真っすぐな人だからね。少ししたら自分のペースを取り戻してくれると思うんだ。」
「そうね。」
新垣さんのことだ。きっと大丈夫だと信じたい。
「さてと、買い物していきたいから八王子駅でいいよ。」
「わかった。」
秀美は八王子駅のロータリーに車を進入させると、適当なところへ停車した。
「ありがとね。」
「いえいえ。大変だと思うけど頑張ってね。」
そう言うと、秀美は帰っていった。新垣さんのことで、何かあったら秀美に相談するのもいいかもしれないな。乙女心はおじさんにはわからんものですからね。
私は八王子駅周辺で買い物を済ますと、自宅に帰り、明後日からの仕事の準備をするのでした。