12月10日 日曜日 定年後の過ごし方
昨日のパーソナルベストですっかり気分が上がった私は、久しぶりに氏家君へ連絡し、食事をすることにしました。いつも来てもらっているからと、今日は氏神君が八王子まで来てくれました。
「亮さん!」
改札前で笑顔で駆け寄ってきてくれました。
「久しぶりですね。」
「ええ。今日は誘ってくれてありがとうございます。」
ほんとに久しぶりになっちゃった気がします。今日は八王子駅から少し歩いたところにある和食屋さんにお邪魔することになっています。ここは普通の一軒家にも見える住宅地のど真ん中にあって、定年後にご夫婦でお店をされているそうです。ご自宅の1階を食堂に改装し、一度に入れるのは2組まで、完全予約制になっています。それでいてお値段も安いので、隠れた人気の名店になっているそうです。
「うわぁ。趣のあるいい感じのお店ですね。」
入り口前まで来て、氏神君が感心したようにつぶやきます。お店に入り名前を告げると、店主の奥さんと思われる店員が座席へ案内してくれました。内装はブラウンを基調とした木目調に統一されていて、ぬくもりを感じる作りです。テーブルや椅子なども、基本的に気をそのまま活かしたものになっていてすごくおしゃれですねぇ。
「こんな素敵な店、どうやって知ったんですか?」
「ふふ。実は私も教えてもらったんですよ。ジムの仲間に。」
そうなんです。ここは深見さんのお気に入りのお店だそうで、この間の料理大会の時にこっそり教えてもらったんですよね。たぶん先ほどの方だと思うのですが、ここの奥様がお料理上手で、よくアドバイスを受けているそうです。
食事はお任せコースメニューになるのですが、ほうれん草のおひたしや、酢の物などの先付けの後は、ヤマメの塩焼き、大根の和風サラダ、メインは牛肉のカツ。とどめの豚汁とご飯とお漬物。満腹です。
「いやぁ。満足ですね!」
「ええ。美味しかったです。いいお店を紹介していただきました。」
デザートの柚のシャーベットをいただきながら、お腹を擦る私たちでした。お会計を済ませて外に出て改めて外を見ると、本当に住宅を改装したのだということがわかります。定年後にこういう過ごし方もあるのだなと感心しました。
「どうしましたか?」
不思議そうにこちらを見ている氏神くんに、
「いや。こういう定年後のスタイルもあるんだなって。」
そう答えると、
「ああ、趣味とか特技があるといいですよね。亮さんは定年後、トレーニングジムなんかいいんじゃないですか?」
氏神くんは笑顔でそう言いますが、私に経営の才能はなさそうですからねぇ。笑いながらその後も街へ繰り出して遊ぶのでした。