12月6日 水曜日 結婚式の招待状
警備室で事務作業をしていると、郵便の配達員さんが警備室にお見えになりました。
「警備室の山盛亮様宛です。」
「あ、私ですか?」
珍しいこともあるものです。手紙を受け取ると、なんだか立派な装飾のされた封筒に私の名前が書かれていました。裏を見ると、差出人は、
「川室先任からだ。」
川室くんと高田愛さん。連盟の封書ですね。ってことはこれは、結婚式の招待状でした。
「へぇ。川室くん結婚するんだ。」
自衛隊上がりで口数も少なく硬派な川室くんですが、隅に置けないとはまさしくこのことですねぇ。奥様になる方は愛さんと書いて「めぐ」さんと読むようですね。
結婚式なんていつぶりでしょうか。この年齢になると、結婚式よりもお葬式の案内の方が多くなります。いやぁ、着ていくものどうしましょ。なんて思いながら、とりあえずすぐに出席に丸を付けました。来年の2月11日に挙式ですか。楽しみですねぇ。
返書を用意して、私は電話の受話器を取りました。
『はい。こちらANAZON川越倉庫警備防災室です。』
「お疲れ様です。東京第二警防課八王子管理センターの山盛です。」
『あ、山盛隊長。お疲れ様です。川室です。』
「川室くん。招待状頂きました。結婚おめでとうございます。」
『恐縮です。』
「是非、出席させてもらいますね。そのことで中町隊長に相談があったんですが。」
『はい。代わりますのでお待ちください。』
タイミングよく、本人におめでとうと言えてよかったですね。しばらく保留音がすると、中町さんが電話口に出られました。
『お待たせしました。中町です。』
「お疲れ様です。川室くんの結婚式のことで相談がありまして。」
『余興のことですか?』
そうなんです。招待状の中には当日の余興を依頼する旨のメモが同封されておりました。結婚式自体久し振りですし、余興なんて何をすればいいのか悩んでしまいます。
『丸木と佐藤も頼まれたみたいなんで、ちょっと何か考えてみましょう。』
「よろしくお願いします。」
『歌でも歌っとけって言ったんですけどね。2人とも歌は苦手だっていうもんですから。』
「私だって、人様に聞かせられるようなものじゃないですよ。」
『はは。何か知恵を出しましょう。』
受話器を置いた後、何をしようか悩むのでした。せっかくの門出の席ですので、何か盛り上がるようなことをしてあげたいのですが、何がいいんでしょうねぇ。
警備日誌 12月06日 水曜日 晴れ
万年兵補修工事で西海建設作業員7名が入構する。
ほか、警備業務に異常なし。