12月3日 日曜日 深見さんのお料理レッスン
今日はお約束通り、八王子郊外にある深見さんのおうちにお邪魔しております。いや、おうちというには失礼なくらいな立派なお家で、何度も表札に間違いがないか見直してしまいました。この大きなお屋敷にお二人で住んでいるそうですので、すごいことですね。
「今日はよろしくお願いします。これ、大したものじゃないんですけど。」
私は用意してきた茶菓子をお渡ししました。こんなものでいいのか怖くなってしまいますね。
「ありがとうございます。緊張なさらないでくださいね。」
「い、いや。立派なお宅ですので驚きました。」
「主人と主人のお父様が立派なだけで、私はただの人ですから。さぁ、おあがりください。」
リビングに通されると、すでに福原さんや徳平さん、そしてマネージャーの松原さんがおそろいでした。
「山盛さんこんにちは。ふふ、プライベートだとなんだか不思議な気分ですね。」
花柄のワンピースを着こんだ私服の福原さん。受付の時はジムのユニフォームですから、なんだか新鮮ですね。
「じゃあ。皆さんお揃いだからさっそく始めましょうか。」
深見さんの指導で、今日のメニューであるデミグラスソースのハンバーグを作り始めました。最初は王道がいいとの福原さんのリクエストだそうです。いや、一人暮らしでデミグラスソースとか、ハンバーグとかは作らないので、これは楽しみですねぇ。
玉ねぎの皮を剥いてみじん切りにするのは私の仕事です。
「あら。山盛さん、包丁の使い方お上手ですのね。」
「ありがとうございます。お恥ずかしながら自炊歴も長いですからね。」
そうなんです。悲しいかな、やっているうちにできるようになってくるもんなんですよね。かわいい奥さんに作ってもらう人生を送ってみたかった!!
具材をみじん切りにすると、ひき肉に合わせてかき混ぜます。
「私の出番ですね。」
気が付くと、ずっとボールに手を入れて冷やしていた徳平さんがビニル手袋を手ににやりと笑いました。ハンバーグはこねすぎるとよくないという方もいますが、深見さんのお話では、良くこねられたハンバーグは、しっかりと空気を抜いて焼くことで、ふんわりと仕上がって絶品になるそうです。反対に、こねるのが足りないと、ぱさぱさしたり重厚感がないものになるそうです。
大事なのは、こねるときに手が温かいと、うまみ成分のある脂が溶け出してしまうので味が落ちる。ということだそうです。あ、だからボールに手を浸して冷やしていたんですね。って、ボールの中氷水じゃないですか! 何事もない顔でこね続ける徳平さん。さすがマッスルマン、気合の大きさが違いますね。
ひき肉の玉がなくなるくらいにこねて、いよいよ焼き上げです。その間に福原さんや松原さんが難しいデミグラスソースを完璧なまでに作り上げました。
「おおっ!」
思わず声が出るほどおいしそうなハンバーグが出来上がりました。テーブルに並べて少し早めのランチタイムです。
「そういえば、旦那様は?」
「あいにく仕事が入ってしまいまして。朝、残念そうに出かけていきました。」
松原さんの問いかけに、深見さんは苦笑いしながら答えます。深見さんのご主人は、八王子市内に本社を置く上場企業の役員だそうです。なるほど、立派なおうちにも納得ですね。
「うちには子供がいないものですから、どうしても仕事人間になってしまうのは仕方ないことですね。私も、専業主婦だけだと退屈で、ジムに行かせてもらったりしてますが、今度、趣味を活かしてお料理教室をやろうかななんて。」
深見さんはそうお話しされました。料理の腕だけではなく、指示の出し方や教え方など、とても丁寧で、素人の私でも、教室を開かれたらきっと人気になるとわかります。
おなか一杯食事を堪能した後、おいしいコーヒーをいただきながらお菓子をいただき、夕方には解散しました。教室が始まったら松原さんも福原さんも通うみたいですね。私も考えてみようかな。
いくつになっても、夢を追いかける人は素敵ですね。私には何ができるだろうか。ちょっとそんなことを考えるのでした。