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10月19日 木曜日 八王子自然動物園

 ケンカが始まりました。私はそれを受付から眺めて見守っています。止めに入れって? ええ、怖いんですよ。近寄れませんね。


「ありゃ。ケンカしてますね。」

「もう30分くらいやってますよ。」

「意外と強いんですね。カラス。」


 自販機補充に来たアンファンの河本さんがそう言って笑います。そうです。ケンカの主はカラスとトンビ。餌を取り合っているんだか、さっきからずっとギャアギャアやっています。河本さんはオフィス棟の補充をしてくると言って中に入っていきました。ケンカをしているのは広場の方ですから、外の自販機補充のタイミングでまだやっていたら追い払わなきゃなんですが、トンビもカラスも羽を広げるとけっこう大きいですよね。


「どうしたもんかな。」


 トンビもカラスも自然のものですので攻撃するわけにもいきませんし、かといって素手で挑むにはあの嘴は危険すぎます。雑菌対策もしなくてはいけません。


 私は警備室内に設置してある刺す股を取り出し、引出しからガムテープを取り出すと工作を始めました。


「まだやってるんですか?」


 河本さんが戻ってきました。


「はい。ちょっと待ってくださいね。」


 私は点検時用のヘルメットをかぶって外に出ました。指す股を伸ばしてカラスたちに向かいます。そして、近くまで言った時に、指す股の先に取り付けた傘を広げました。さっきガムテープで固定したのはワンタッチ式の傘です。バッと広がったのに驚いたのか、トンビもカラスも一斉に飛び立っていきました。傍らに落ちていたのは無残なネズミの残骸。これを取り合っていたんですね。


「もう大丈夫ですよ。」

「ありがとうございます。考えましたね。」


 河本さんはそう言うと、広場の自販機の補充を始めました。私はその間にトングとゴミ袋を持ってきてネズミの死骸を回収し、感染対策のマニュアルに則って二重にしてゴミ置き場に置きました。明日、清掃さんにお願いして処分してもらいましょう。


 補充を終えると河本さんはまたお礼を言って次の現場に出発されました。タヌキに熊にトンビとカラス、ついでに猫と、八王子って一応東京都なんですが、こんなに野性味あふれた地域でしたっけ??


 指す股に取り付けた傘を取り外しながら、今日も平和だなぁ。と、しみじみ思うのでした。





警備日誌 10月19日 木曜日 晴れ


 トンビとカラスが餌の取り合いをしていたため追い払う。

 ネズミの死骸を発見したため回収。

 明日、清掃担当者に処分を依頼する。


 ほか、異常なし。

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