10月18日 水曜日 熊対策は必要か?
ま、まさか!
「隊長! なんとかしてください!!」
「な、何とかと言われましても!」
私は特殊警棒を取り出して対峙します。3メートルはあろうかという巨大熊が、こちらを睨んでいます。
「と、とにかく建物の中へ避難を!」
そう誘導し始めた時、熊は立ち上がって咆哮し威嚇すると、一直線にこちらに向かって突進してきました。熊は直線で走るから避ける。ああ、でも避けたら社員様方が被害に!!
「うわぁっ!」
身体が宙に浮くくらいの勢いで飛び上がりました。あ、あれ? 暗いな。
「部屋??」
はあぁぁぁっ! 超どでかいため息が出ます。時計を見ると午前3時、当然外は暗く、辺りは静かです。遠くから高速道を走る車の走行音がかすかに聞こえています。
昨日の熊騒ぎのせいでしょうか。何ともおっかない夢を見てしまったようです。夢にしてはリアルでした。心臓がドキドキ鼓動を打っています。夢で心臓発作とか起きないものでしょうか。
熊出没の注意放送はかかりましたが、その後の情報がありません。熊、どうなったの熊? 思えば昨日の帰りも散々でした。最終巡回を終えて、恐る恐る正門を開けて帰ろうとすると、路地から突然猫が飛び出してきました。いや、びっくりしたのなんのって。
「しゃーっ!」
威嚇してから猫さんは走り去りましたが、いや、驚いたのはこっちもですっての。そんなこともあったからか、クマに襲われる夢なんて。。。こりゃ、熊対策のマニュアル作っとかなきゃダメですかねぇ。
なんとなくそのまま寝付けなくて、寝不足のまま出勤しました。警備室で顔を洗って社員様方を出迎えますが、頼むから出て来ないでくださいね。熊。
「どうしたんですか?」
「ひゃ、ひゃいっ!」
突然声をかけられて、思わず声が上ずってしまいます。気が付くと、受付の窓越しに出社した新垣さんが挨拶してくれていました。
「お、おはようございます。」
「どうかされましたか? 顔色が悪いみたいですけど。」
「はは。」
私は新垣さんに昨夜、熊に襲われる夢を見たことと、そのせいで寝不足だったことをお話ししました。
「あはは、それは災難でしたね。」
「いや。お恥ずかしい。」
「夜眠る時には、リラックスするためにアロマを漬かったり、落ち着いた音楽を聴きながら寝ると言いそうですよ。」
新垣さんはそうアドバイスをしてくださると、笑顔でオフィス棟に入っていかれました。いやぁ、お騒がせしてしまいました。一応、熊に襲われた時のシミュレートはしたことがあって、熊の習性なども調べたことはあるんですが、野生動物というのは甘く見ないほうがいいと言うのは間違いないです。
改めてネットで対策を調べてみます。熊に襲われた時、木に登るのは御法度です。熊は木登り得意です。また、死んだ振りなんてもってのほか。死んでるか生きているかくらい熊にもわかります。熊は直線に走ってくる習性があり、方向転換が苦手です。逃げる時は目を見ながらゆっくりと後退し、ジグザグに逃げるのを心掛ける。追いかけてきたら帽子など、何か興味を示しそうなものを目の前に投げる。ということだそうです。
また、女性の悲鳴など、甲高い声には興奮して攻撃的になり、男性の低い大きな声は恐怖して委縮するそうです。最終的に追い付かれたら、熊の懐に潜り込むようにタックルすると、大抵は驚いて逃げていくと何かに書かれていましたが、そんなおっかないことできないですよね。
八王子を少し行くと、奥多摩の山の中に入っていきますが、熊だけでなく猪や鹿なども生息しているそうで、どの動物も近付くのは非常に危険だということです。食べる分にはいいものなんですがねぇ。
今夜は新垣さんにおススメされたとおり、優しい音楽でも聴きながら休もうと思います。
警備日誌 10月18日 水曜日 晴れ
昨日のクマ出没に際し、
熊の習性や出没の際の対策を調べる。
その他、異常なし。