9月15日 金曜日 荒井さんの代勤者研修
今日は急遽、本社管制の荒井さんの代勤者研修になりました。
「忘れられてると思ってましたよぉ。」
勤務が始まって第一声がそれでした。いや、忘れていたわけではないのですよ。荒井さんなら当たり前にやってくれそうな予感がしていたもので・・・。スミマセン、川室くんが終わったところで一段落したと思っちゃってました。
荒井さんは元々現場の方でしたが、本人の希望もあって事務方がやりたいと、2年前に総務部総務課に異動されましたが、現場経験者ということと、各種イベント警備(コンサートや展示会上の警備等)が増えてきたこともあって、管制業務を任されるようになったそうです。
「亮さん。あ、亮さんじゃなくて山盛隊長ですね。」
いたずらっぽく言う荒井さん。
「勘弁してください。今まで通りでいいですよ。」
「はは、急に隊長になったから大変でしょう。」
「隊長っても、普段は一人ですからねぇ。」
「あれ? 聞いてませんか??」
荒井さんはそう言うと、
「中町隊長の考えもあって、いずれは亮さんにキチンとした現場任せたいってことですよ?」
ニコニコしながら麦茶をすすりました。
「どういうこと?」
「山盛さんの経験や人柄は、中町さんはじめ社内でも評価高いんですよ。いずれは複数人現場の隊長をしてほしいって考えているそうです。中町さんもいつまでも兼任兼任じゃ大変ですし、そのために山盛さんもそうですし、丸木くんや佐藤君たちを教育しているところです。」
初めて知りました。確かに、中町さんは埼玉にある世界的に有名な大手物流会社ANAZONの施設警備隊を2つ兼任して統括隊長をしているほか、埼玉警防課と東京第二警防課の課長代理も兼任しています。課長じゃないのは現場を見ているからですね。社内で一番忙しい方だと思います。
「それだけ人手不足なんですよ。」
確かに、ここ数年で隊長クラスが何人か辞めていかれました。伊豆元隊長みたいのは例外ですが、他の方たちはどうやら小寺部長と合わなかったからということを聞いた気がします。けっきょくのところ、人手不足ってことですね。
「これだけ世間で不況で職がない職がないと騒がれていても、人手不足の業界って多いですよね。」
「選り好みされているということなんでしょうか。」
「そうだと思いますよ。うちもそうですけど、本社だって人が足りているわけじゃないですから。」
本来、荒井さんのやっている管制業務も、各警防課が用意するのが筋なんですが、そこまで人がいません。自分の警備隊を持たないで統括されているのは東京第一警防課長の渡瀬さんくらいですね。他の警防課長は兼任隊長がほとんどです。そのため課長代理扱いになっています。これは何でも、本社にいて業務を統括するのが課長で、現場に出ずっぱりの方は課長代理という謎ルールです。
とは言っても、渡瀬課長も4つの現場を預かっているので出ずっぱりだと聞いています。
「きちんと体制整えないと、管理職の仕事が増えるばかりですよね。その分、小寺部長がフォローしているかって言えば、全くですし。」
荒井さんは困ったように笑っていました。確かに、小寺部長は普段何をしているのかよくわからない謎の多い方です。たまに行方不明になることがあるそうで、どこに行ったかわからずに困っていると、いつの間にか仕事を取ってくるんですから、優秀なのかそうでないのかよくわかりません。
ただ、広域警防課の評判はすこぶる悪いですね。弊社は社員数265名ですが、そのうち本社勤務が25名ほどですので、警備員として公安委員会に届け出しているのは240名ほど、そのうちの200名が施設警備の現場配置者ですので、イベント警備や身辺警護を担当としている警備員は60名ほどしかいません。それなのに200人とか300人規模の警備体制の現場契約を取ってくるので、調整が大変だそうです。
200人体制の警備業務の契約をしてくると、広域警防課の社員で足りない分は外注になります。外注ということは、うちの代わりに警備業務をやってくれるところを探さなくてはいけないので、広域警防課の人はてんてこ舞いするそうです。
「そのうち刺されなきゃいいけど。」
なんて言って荒井さんは笑っていましたが、広域警防課の仕事は絶対に必ず継続して仕事がある部署ではないので、それ以上増やせないと言うのも難しいところなんですよね。
さて、一通り業務を終えたところでいい時間になりました。
「亮さん。終わったらご飯食べに行こうよ。」
「いいですね。じゃあ、締め業務やっちゃいましょう。」
仕事を終え、私達は夕方の八王子市外に繰り出すのでした。
警備日誌 09月15日 金曜日 晴れ
本社総務部総務課の荒井恭教社員の代勤者研修を実施。
次回からの勤務に支障はなし。
ほか、異常なし。