8月8日 火曜日 救命講習打合せと肩章授与
お昼休みが終わるころ、
「暑ぃなぁ。山盛、なんとかならへんのか。」
と言いながら小寺部長がお見えになりました。今日はこの後、救命講習に関する打ち合わせがあります。
「台風が逸れたみたいだからその影響もあるかもしれませんね。平尾様来るまで涼んでください。」
そう言いながら、私は麦茶を入れました。心配していた台風は、九州と沖縄の間を通過して大陸へ抜けていくみたいですね。ただ、次の台風の卵が南海上にあるので心配は尽きません。
「お、そうや。」
そういうと、小寺部長はカバンから何やら包みを取り出しました。
「隊長就任おめでとう。山盛隊長。」
渡された包みを広げると、星が3つ付いている肩章が入っていました。弊社の制服の型には、階級を表す肩章を付ける決まりになっています。『一般警備員』は星1つ、社歴5年以上の『先任警備員』は星1つに金の横線、『副隊長』は星2つ、副隊長の中でも警備検定1級と指導教育責任者という資格を保有すると、星2つに金の横線、『隊長』は星3つ、中町さんみたいにいくつかの現場を任される『統括隊長』になると星3つに横線が入ります。
さっそく肩章を取り換えました。今までは『先任警備員』の星1つに横線だったものですから、なんだか一気に責任が重くなった気がして肩が重いです。
「頑張ります。」
「9月の隊長会議から出席してもらうから、中町にいろいろ聞いといてくれんか?」
「了解です。」
隊長会議というのは、毎月1回、本社で全隊長が集まって、事案や人事教育の報告、会社からの共通連絡事項などを共有したり、人事異動の調整を話し合ったりします。
そんなことを話していると、平尾副所長がお見えになりました。一緒に救命講習の話し合いをしましたが、ご希望としては、
・なるべく15名まとめてやりたい。
・時間は60分から90分程度。
・場所はオフィス棟1階の会議室
・金曜日や祝日前に実施。
といったものでした。もちろん、通常業務外のことですので、費用は別途研修費を出してくださるそうです。
「山盛、なにかあるか?」
「はい。4.5名1チームでやったほうが呑み込みが早いと思いますので、講師は最低でも司会者プラス講師3.4名が必要です。機材は準備するとして、問題は講習時間ですね。」
私は用意していた救命講習の資料を出しました。
「普通救命講習で3時間のカリキュラムです。60分だとけっこうあっという間に終わりますので、できれば90分にして、応急手当の流れを見ていただいた後、実践で体験してもらうのがいいと思います。それでも90分でぎりぎり終わるかどうかというところです。」
上級救命講習は8時間、普通救命講習で3時間です。ただ、90分の体験コースというのもあるので、今回はそのカリキュラムで考えるのが妥当だといえます。
「では、90分コースでカリキュラムを考えればええな。」
「わかりました。」
開催日時は急がないということでしたので、少しでも身に着けていただくために、準備をしっかりすることで話はまとまりました。一応、9月末までには実施したいとのことでした。費用に関しては、今後、平尾副所長と小寺部長が話し合うとのことでした。お金に関することは営業の担当ですからね。
話がまとまったところで、小寺部長が思い出したように、
「あー。平尾さんには遅れた報告で申し訳ないのですが、このたび、代勤者として山盛以外に4名の兼任者を用意しました。つきましては、1日付で山盛を八王子管理センター警備隊の隊長ということで、役職を付けましたのでよろしくお願いします。」
そう言うと、平尾副所長は満面の笑みを浮かべ、
「そうですか。ご昇進ですね。おめでとうございます。」
そう祝ってくださいました。
「ありがとうございます。一層頑張ります。」
「いや、山盛さんは本当によくやってくださっておりまして、こちらとしてもすごく嬉しいニュースですね。みんなにも、これからは隊長とお呼びするように申し伝えます。」
ニコニコそうおっしゃるので、
「あ、いや。気恥ずかしいので今まで通りで。」
と言ったのですが、どうやらこれからは『山森隊長』と呼ばれそうな気配です。うぅ、プレッシャーが胃に重くのしかかった気がします。
話がまとまると、小寺部長は早々に引き上げていかれました。さぁ、またまた忙しくなりそうです。
警備日誌 08月08日 火曜日 晴れ
救命講習実施について、平尾副所長と小寺部長が打ち合わせ実施。
90分コース、1日で受講予定。
開催時期は未定だが9月末までには開催。
ほか、異常なし。




