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【書籍・漫画化しました!】異世界メイドの三ツ星グルメ ~現代ごはん作ったら王宮で大バズリしました~【旧題・美食おぼっちゃまの転生メイド】  作者: モリタ


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シャーリィの忙しくも穏やかな一日3

「おおおっ、美味しい! このシュークリームとやらも、また最高に美味しいな! シャーリィ!」


 おやつタイム。

中庭にまたおぼっちゃまの美味しいが響き渡り、私たちはぐっと拳を握りしめたのでした。


「このカリッとした外側と、柔らかく味わい深い中身の対比がたまらん! 噛んだ時、もにゅっと中身が顔を出してくるのも、なんとも愛らしい……好きだ!」

「ありがとうございます、おぼっちゃま!」


 そう、今日のおやつはシュークリーム。

満を持しての登場でございます。


 これも私の得意なおやつの一つで、いつ出そうか、いつ出そうかと思っているうちに半年以上も過ぎてしまいました。

そして、シュークリームの生地には硬いタイプと柔らかいタイプがありますが、こちらは硬い方を採用しております。


 それは前世で私が大好きだった、駅によくあるシュークリーム屋さんを目指して作ったもの。

カリッと香ばしい生地と、かなり冷たく冷やしたカスタードクリームがマッチして、頬張るたびに幸せになれる一品にございます。


 しかし、今回はこれだけにございません。

おぼっちゃまが皿を綺麗に空にするタイミングを見計らって、私は次の種類を投入したのでした。


「おぼっちゃま、こういうタイプもございますわ! ぜひ、お試しください!」


 そう言って、手のひらサイズのシュークリームが山盛りの皿を差し出す私。

そう、次なる品はプチシュークリーム。


 おぼっちゃまは目を輝かせると、「どれどれ」と呟いて一つを口に放り込み、しっかり味わった後、ふわあっと頬を緩ませたのでした。


「これも、良い……! 噛むと、柔らかい生地がぷちりと潰れて、中から冷たくて甘い美味しさがぶわっと広がってくる! 良いぞ、とても良い!」


 よし、こちらも大成功!

プチシューは、私的にあの噛んだ時のもにゅっとした感覚が好きなので、生地を柔らかくしましたが正解だったようです。


 子供の頃の私のように、楽しくてしょうがないという顔でプチシューをどんどんお口に運ぶおぼっちゃま。

ですが、ある一つを口にしたとたん、驚いたように動きが止まりました。


「なんだ、味が違うぞ……これは、チョコか!?」

「はい、おぼっちゃま! 実はそちらのプチシュークリームの中身は、いくつかの味に分かれております!」


 そう、今おぼっちゃまが口にしたのは、チョコカスタードクリームが入ったチョコプチシュー。

小さいながらもチョコが濃ゆい味わいを発揮してくれる、満足度の高い一品です。


 最近はアガタからのカカオの供給も安定してきて、こういう品もとっても出しやすくなったのでした。

 ……相変わらず、作る作業は大変ですが。


「なんと、良きサプライズだ……むっ、こっちも味が違う。これはイチゴか!」

「はい、おぼっちゃま! 王宮の農園で良きイチゴが採れましたので、そちらで作らせていただきました!」


 本来いちごの収穫時期はもっと前らしいのですが、そこは宮廷魔女たるアガタですから。

いつでも見事なイチゴを栽培でき、その気になれば冬でも温室で育てられるそうにございます。


 アガタの育てる健康イチゴは見事なほど真っ赤に輝き、糖度も抜群。

一口齧れば甘さが弾け、天国に登れるほどの多幸感を与えてくれます。


 そんなイチゴでクリームを作れば、それはもう言うまでもなく。

砂糖を少ししか入れないのに恐ろしく甘く、トロトロ触感で、イチゴの味わいが口の中で炸裂する最高のプチシューになるのでした。


「違う味わいが、一つの山になっているというのも面白きものだな……! 次食べるのがどの味か、ワクワクしてしまう。た、楽しい……」


 そう言いながら、プチシューの山をあっという間に崩していってしまうおぼっちゃま。

まさに今回の狙いはそれで、色んな味が集まったアソート、いわゆるお菓子の詰め合わせが私は大好きなのでした。


 あれはどんな味かな、これはどんな味かな、なんて選ぶのも好きだし、目を閉じてどれがどれかわからなくして、手に触れたものを食べてみるなんて遊びもよくやったもの。


 そんな楽しさはちゃんと伝わったようで、おぼっちゃまから「今日も素晴らしかったぞ、シャーリィ」なんてお褒めの言葉もいただき。

今日のおやつタイムも、最高の結果で終えれたのでした。


 そして、上機嫌でお仕事に戻られるおぼっちゃま。

それを、深々と頭を下げてお見送りし、そのお姿が見えなくなって、きっかり十秒。


 私とアンは、バッ!と頭をあげると、シュバババッ!と、片付けを始めたのでした。


「急いでシャーリィ、次は名家のご令嬢の皆様におやつをお出ししないと!」

「ええアン、仕上げる準備はできてるけど、移動に時間がかかるからね! もう、本当に王宮は広いんだから! たしか、場所は池のほとりだったわね!」


 なんて言い合いながら、慌ただしく動き回る私たち。

そう、なんと今日は、おやつをお出しする仕事まであるのでした。


 ですが、おやつタイム終了後の後片付けは、一番下っ端の私たちがやる習わし。

急げ急げと慌てていると、二班のメイド長であるクラーラお姉さまが見かねて、こう声をかけてくださいました。


「あんたら、本当に忙しないねえ! ああ、いい、いい。今日の片付けは、うちの班でやっといてあげるから。あんたらは、とっとと行きな!」

「えっ、でっ、でも。そんな、お姉さまたちを使い立てるような真似は……」


 その申し出は、とっても、とーってもありがたいのですが、申し訳なくて困ってしまいます。

すると、二班の皆様が笑顔で言ってくださいました。


「いいっていいって。それぐらい大した手間じゃないし、最近はあんたたちのお陰で私たちも役得だしさ」

「そうそう。もう、料理勝負の話を聞かせてくれって引っ張りだこなんだから。しかも、格好いい殿方に声をかけてもらっちゃったりなんかして。もう、時代が来たって感じ!」


「それに、アンタたちが頑張ってるのは私たちの誇りでもあるのよ。だから、気にせず行きなさい、ほらほら。そのうち、また一緒になにか作りましょ」


 ああ……なんて良い人たちなんでしょう。

私は根が単純なので、ひたすら感謝しかありません。


 「ありがとうございます、お願い致します!」と深々と頭を下げた私たち。

そして、お姉さまたちに笑顔で送り出してもらい、私たちは次なるおやつを仕上げにメイドキッチンへと駆け出したのでした。

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