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【書籍・漫画化しました!】異世界メイドの三ツ星グルメ ~現代ごはん作ったら王宮で大バズリしました~【旧題・美食おぼっちゃまの転生メイド】  作者: モリタ


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素敵なお昼のハンバーガーセット2

 まず、ハンバーガーを完成させるにあたって、私達は役割分担をすることにしました。

それぞれの班にハンバーガーの各種部位について解説し、そこだけを最上に仕上げられるよう練習と研究をお願いしたのです。


 バンズは、クリスティーナお姉さまの一班に。

最初に歯が当たるバンズは、硬すぎず、柔らかすぎず、味を主張しすぎず、それでいて味わい深く。


 肉に合い、ソースと肉汁を受け止め、後味も良い。

なんてなんて、とにかく注文が多い部位なのでございました。

それを、お姉さまたちの一班は、他班と連携を取りながら、ものの見事に作り上げてくださったのでございます。


 出来上がったバンズは、外側は確かな触感を持っているにも関わらず、内側はふかふかまったり。

手で掴んでもしっかり形を保ち、だけど噛みしめると歯を優しく受け止めてくれ、そして通過を邪魔しない柔らかさ。


 炭でさっと炙って香ばしさも加えたそれは、ハンバーガーに使うものとして最高の出来でございました。


 そして、ビーフパティはクラーラお姉さまの二班に。

実家が牧場も経営しているとかで、実はお菓子より肉料理のほうが馴染み深いというお姉さま。


 パティの作り方をレクチャーすると、王宮に入ってくる最高級の牛肉を見事に仕込み、旨味満点の最高のものを作ってくれたのでした。

炭で焼いてしっかり焼き目のついた厚みのあるパティは、噛むとじゅわりと肉汁があふれる、主役として申し分のない出来。


 塩コショウやナツメグなど、最低限の味付けに抑えたとは思えないほど、ハンバーガーの中で存在感を放ってくれています。


 そしてチーズは、得意分野だというエイヴリルお姉さまの三班にお願いしました。

エルドリアは酪農が盛んで、チーズの種類も山のよう。

すべて把握するだけでとてつもない時間がかかるのですが、お姉さまはその中から、ハンバーガーに最適なものを選び出してくださったのでした。


 そのチーズは、僅かな熱でとろけるもののしっかりとした味わいを残し、個性を発揮しながらもバンズとパティを応援する縁の下の力持ち。

味に深みを与えてくれ、そのとろみが口の中で混ざり合い、噛む楽しさを増幅させてくれています。


 そんな素敵な食材で手間ひまかけて作ったハンバーガー、前世で作ったらいくらかかったかわかりません。

ああ、さんざん試食しましたが、おぼっちゃまが美味しそうに食べているのを見ると、もうたまりません。


 ううっ、私もここで一緒に食べたい!

なんて私がもだえていると、そこでふとおぼっちゃまがおっしゃいました。


「のう、シャーリィよ。メインの後は、どういう順番で食べるのが正解なのだ?」


 その視線の先には、サイドメニューであるポテトたちが。

どうしてそういう質問が来るのかと言うと、王宮のお食事は、基本的に順番が決まっているからなのです。


 先程のローマンさんの料理も、一皿一皿順番に召し上がってらっしゃいました。

同時にいくつもの皿を行き来するのは、エルドリア王宮ではアンチマナーなのです。


 ですが。

私が今日お出ししたのは、ハンバーガーセットなのですから。


「おぼっちゃま、このお料理は、色んなものを一緒に食べるスタイルでございますわ! すべては、ハンバーガーの合間に召し上がるためのもの。食べたくなったタイミングで、自由に手をお伸ばしください! ただ、最初なら私のおすすめはこちらのフライドポテトですわ!」


 と、笑顔で元気にお伝えしたのでした。

するとおぼっちゃまは少し考えた後、ニンマリと微笑み。

「わかった!」と言いながら、ポテトに手を伸ばしてくれたのでした。


「あああっ、そんな、油料理を手づかみなどっ……。ああ、ああ、完璧なマナーを身に着けてらっしゃるウィリアム殿下が、そんなっ……!」


 後ろからまたローマンさんの悲鳴が聞こえてきますが、関係ありません。

ポテトは、熱々を手づかみで食べるのが最高なのでございます。

大きなフライドポテトを手にとったおぼっちゃまは、ニコニコ笑顔でそれを頬張り、そしてまたもや目を輝かせたのでございます。


「おっ、美味しいっ……。なんだ、これはっ……。ただの芋ではないのか? 外はカリカリしておるのに、中はホクホクと美味しさが詰まっておるっ……。すごく美味しい!」


 それを聞いた途端、隣でアンがぎゅっと拳を握りしめ、呟くのが聞こえました。


「やったわ、やった……!」


 喜びを隠しきれないアン。

それもそのはず、今回、揚げ物はアンが主に担当してくれたのです。

最近気づいたのですが、アンは揚げ物がすごく上手で、任せればなんでも絶妙に揚げてくれるのでした。


 それに、今回のポテトは特別製。

ただ芋を揚げたのではなく、一度マッシュポテトにし、それを成形して揚げるという手間ひまかかったものなのでした。


 すでに火が通っていてホクホクなので、油で長々と揚げるは必要はなし。

高温の油で外側をカリッとさせたらすぐに上げてあるので、ちっともしつこくありません。


 またマッシュポテトの段階で味付けしてあるので、塩のふり方でしょっぱかったり薄かったりなんて心配も無し。

安心してワシワシ食べられる、最高のポテトなのでございます。


「うむ、これはたまらん、次から次へと食べたくなる……。しかも、ポテトを味わった後だと、ハンバーガーもまた違った味わいに感じる。なるほど、こうして食べるスタイルというわけか!」

「はい、そのとおりですわおぼっちゃま! 色んなものを好きに食べて、好きなだけ味巡りをする。それがハンバーガーセットの醍醐味なのでございます!」


 私がそう言う間にも、おぼっちゃまは次から次へとポテトをお口に。

相当気に入っていただけたようで、その食べっぷりはさながら嵐のごとしでございます。


 そして。

呆気にとられた様子でそれを見ていたアシュリーお嬢様も、やがてゴクリと喉を鳴らして、ついに自分の分に手を伸ばしてくださったのでした。


「しょ、しょうがないわね、私も食べるぐらいはしてあげるわ……って、あれ? ……ね、ねえ、メイド」

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