アイス・アイス・ドリーミン6
「ソフトクリーム……。ほう、ほう。今食べたものとは、趣が違うな」
バニラ味のそれを手に取り、見つめながらおぼっちゃまが嬉しそうにおっしゃいます。
そしてそっと口元につけた瞬間、またもやおぼっちゃまの口元が緩みました。
「柔らかい! 美味しい!」
そしてそのままぱくぱくとソフトクリームを頬張っていくおぼっちゃま。
どうやらソフトクリームもお気に召していただけたようです。
「アイスと似た味わいながら、柔らかく口の中で溶けてゆく……。食感の違いでここまで違うものか。美味しい、凄く美味しいぞ!」
ベタ褒めしてくださるおぼっちゃま。
ですよね、美味しいですよねソフトクリーム!
かたいアイスが溶けていくのを味わうのもいいですが、柔らかいソフトクリームをぱくぱく食べていくのはまた違う種類の喜びがあるのです。
私も子供の頃は、親にどこかに連れて行ってもらう度にソフトクリームをねだったものでした。
炎天下の中、笑顔でソフトクリームを頬張ったあの夏の日の思い出は、転生した今でも色あせません。
ああ、また一つおぼっちゃまに私の知る喜びを伝えることができました。
そして調子に乗った私は、さらに次のアイスを繰り出したのでございます。
「おぼっちゃま、こちらはアイスモナカでございます!」
「……? これは……アイス、なのか?」
ゴツゴツとした、黄色いブロックがいくつもくっついているような形のそれをお出しすると、おぼっちゃまは不思議そうな顔をなさいました。
なので、私はにっこり微笑んで説明を始めます。
「はい、おぼっちゃま。このアイスモナカは、中にアイスが詰まっているのでございます。がぶっとかじってみてください、がぶっと」
「ほう、どれどれ……」
私に言われるままに、本当にがぶっとアイスモナカにかぶりつくおぼっちゃま。
するとモナカの皮がぱりぱりっと割れて、中からアイスが飛び出し、おぼっちゃまは驚いた顔をなさいました。
「なんと、またもや驚いた。予想外の食感だが、実に心地よい。これはこの食感を楽しむための入れ物ということか!」
「はい、おぼっちゃま、そのとおりでございますわ! そのパリパリ食感がアイスモナカの命なのでございます!」
そう、二つ目の型焼き機はこのモナカの皮を作るためのものでした。
アイスといえば、私的にアイスモナカは外せません。
本当は中にチョコレートの板を仕込みたかったのですが、チョコは今品切れ中なので断念いたしました。
まあモナカと言いつつ、このアイスモナカの皮は小麦粉で作ったものですが。
作ったのは始めてなので、さすがにちょっと苦労しましたが、最後にはパリパリサクサクに出来上がってくれて大満足です。
「なるほど、食べていると意味がわかるぞ……。アイスの食感はやわらかいから、それだけだと飽きやすい。そのため、食感の変化に力を入れておるのだな?」
と、おぼっちゃまが鋭い推理を披露してくださいます。
なので、私はニッコリと微笑んで答えました。
「さすが、おぼっちゃま! 何でもお見通しで、感服いたしました! まさに、そのとおりでございます!」
本当は、アイスだけ食べさせるとお腹を確実に壊すから、他のものでかさ増ししているだけでございます。
噛んだときに歯ごたえがあれば、満腹感にもつながります。
たくさん噛んで、早く満足してくださいましおぼっちゃま。私は、先程からハラハラしっぱなしにございます。
そして、次に私が繰り出したのは……やや実験作。
最初に貰った型焼き機で作ったワッフル。それを、上下に切り分けてアイスを挟んだもの。その名も。
「ワッフルサンドアイスでございます!」
「ワッフルサンドアイス……。ほう、サンドイッチみたいなものか」
と、ワッフルに挟まれたアイスをしげしげと見つめながらおぼっちゃまがおっしゃいます。
サンドイッチはパンに食材を挟むだけという、とてつもなくノーマルな食べ物なのでこの世界でもよく食べられているのでした。
「しかし、挟んでいるものは実に奇妙な形をしておる。これも食感を楽しむためにこうしておるのだな。どれ」
などと言いつつ、あむっとワッフルサンドアイスにかぶりつくおぼっちゃま。
そして、じっくりと噛み締めた後、じんわりとそのお顔に笑みが浮かんでまいりました。
「美味しい……。これは……いいな。風味豊かな外のものと、柔らかく味わい深いアイスが混ざり合って、実に良き塩梅だ。どことなく、パンケーキのことも思い出す……。場所によって食感が違うのも面白い」
どうやらワッフルサンドアイスも無事おぼっちゃまに受け入れられたようです。
よしよし。せっかく作ってもらった型焼き機を無駄にせずに済みました。
今度は普通のワッフルもお出しすることにしましょう。
そして、ワッフルサンドアイスの後もお坊ちゃまは当然のように次を求め、私はバニラ味以外のバリエーションをお出しすることにしました。
イチゴ味にメロン味、オレンジ味にキャラメル味。
チョコがないのは残念ですが、それはいつかの楽しみに。
私が次から次へと繰り出すアイスを。それはもう楽しそうに味わってくださるおぼっちゃま。
ですが……その時、事件は起きたのです。
「うっ……!」
「お、おぼっちゃま……? どうなさいました?」
「ううっ……頭がっ……頭が、痛い!」
そう、突如としておぼっちゃまが頭に手を当て、苦しみだしたのでございます!
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