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【書籍・漫画化しました!】異世界メイドの三ツ星グルメ ~現代ごはん作ったら王宮で大バズリしました~【旧題・美食おぼっちゃまの転生メイド】  作者: モリタ


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あなたに届け!あつあつデリバリーピザ7

「おお……」


 目の前に置かれた、いくつものピザの籠をじっと見つめながら、おぼっちゃまが声を上げました。

その目はキラキラしていて、まさにピザを前にしたお子様のもの。

ああ、やりました。ピザは、間違いなく大成功です。


「おぼっちゃま、こちらのピザは、全て中身が違う味となっております。どれかお好きなものを開けてみてください!」


 私は、おぼっちゃまに微笑みかけながらそう言いました。

これは、何が出るかなというお楽しみ要素。そして同時に、おぼっちゃまに手ずから籠を開けてもらいたいという考えがあります。

ピザは、箱を自分で開けるときが一番楽しいのです。


「うむ、どれにするか……よし、これだ!」


 言って、楽しそうなおぼっちゃまが右から二番目の籠を引き寄せ、がばりとお開けになります。

すると、その中には。


「まあおぼっちゃま、おめでとうございます! そちらは、私イチオシのエビマヨでございますわ!」


 なにがおめでとうなのかはさておき、エビマヨ。エビマヨでございます。

その名の通り、エビとマヨネーズがトッピングされたピザ。


 しかも、ただのエビではございません。

王宮に上がってくる、新鮮で、でかくて、異様に美味しいエビを炭火でじっくり焼いた物を使用しております。


 その味たるや、塩を付けてがぶりといくだけで思わず「美味いぞー!」と絶叫してしまうレベル。

そんなおエビ様に、本邦初公開のマヨネーズを合わせているのですから、それはもう、美味しくないわけがない!


 なお、マヨネーズは卵と油とお酢があれば、混ぜるだけでできてしまいます。

混ぜるだけ、と言っても美味しく作ろうと思えば手間や工夫がいりますが、この世界でもお手軽に真似できるのは嬉しいところですね。


「エビマヨ……珍妙な名前だ」


 そう呟きながら、吸い込まれるようにピザを見つめているおぼっちゃま。

エビマヨの特に良いところは、色合いがカラフルで美味しそうに見えるところです。

エビの赤みと、格子状に塗られたマヨネーズの白。それにチーズの色が合わさってまさに最強の布陣です。


 もちろん、味だって最高ですとも。

一切れ手にとって口に運んだおぼっちゃまが、また驚きの表情を浮かべます。


「先程のものとは、味がまるで違う……! これも、すごく美味しい! いや、こちらのほうが食べたことのない味でさらに好きかもしれぬ!」


 そのまま、たまらないとばかりにバクバク口に運ばれるおぼっちゃま。

そうでしょうとも、そうでしょうとも。お子様にとって、エビマヨがどれほどの破壊力を持つのか。

それは、私もよーくわかっています。


 様々な味わいが口の中でパレードを始め、天国への扉を押し開ける……それが、エビマヨ。

子供が食べようものなら、一発でピザに恋してしまうこと請け合いなのです。


「あっ。終わってしまった……」


 かなりの勢いでエビマヨを一枚平らげてしまわれたおぼっちゃま。

しばらく残念そうに空の籠を見つめてらっしゃいましたが、やがて次の籠に手を伸ばされ、それを押し開けて嬉しそうな声をお上げになりました。


「次は、違う種類の肉か!」


 次のピザは、アン特製のローストビーフと、小さなウィンナーがたっぷり乗ったピザです。

甘辛いソースで味付けしており、ボリュームたっぷりの迫力満点ピザでございます。


 それを美味しそうに平らげるおぼっちゃまを見るアンは、どこか誇らしげで、私も嬉しくなってしまいました。


 そして三つ目、それを開けた途端、おぼっちゃまは不思議そうな顔でおっしゃいました。


「……? これは、更に見たことがない。シャーリィ、この上に乗っているのはなんだ」

「はい、おぼっちゃま。そちらは、ツナでございます!」


 笑顔でお答えする私。

ツナ。そう、ツナサンドのツナ。

その正体は、マグロの身を煮込んだものなのでございます。


 マグロの切り身を下処理し、オリーブオイルにニンニクや胡椒などを加えたもので煮込むだけ。

ただそれだけの料理ですが、その味は皆様御存知の通り。

一度食べれば忘れられない、特別な味わいなのでした。


 そんなツナは、パンとの相性が最高。

ピザに乗せても当然美味しく、さらにマヨネーズがかかっているとなれば、もう。

これ以上の言葉は、必要ないでしょう。


「……ツナ、とはまた面妖な言葉が出てきたな。だが、美味しそうだ」


 そう言って勇猛果敢にピザにかぶりついていくおぼっちゃま。

その顔がまたもやぱあっと輝き出しました。


「美味しいなこれも……! それに、先程からかかっているこの白いソースのようなものが、すごく良い!」


 どうやら、おぼっちゃまがマヨネーズの存在に気づかれたようです。

それはそうでございましょう。ケチャップとマヨ、それはお子様の味覚を直撃する二大調味料。

それが合わさっているのですから、気に入らないほうがどうかしております。


 ああ、神様。あなたがどのようなお気持ちで私に前世の記憶をお与えになったのかはわかりません。

ですが、あなたのせいで私は罪を犯してしまいました。

そう、おぼっちゃまにマヨを与えてしまうという大罪を……!


 などと私が空を仰ぐ間にも、おぼっちゃまは四枚目に突入。

パカリと開いたその中身を見て、また驚きの声をお上げになりました。


「端っこが、今までのやつと違うぞ!」


 そう、そのピザは端っこを大きく丸め、あるものが詰め込まれていたのです。

そう……ソーセージを!

いわゆる、耳まで美味しいやつです。はい、パクリです。ごめんなさい。


 ですが、耳まで美味しいやつのエンタメ力は抜群でございます。

そしてそのピザの中央の具材は、じゃがバタコーンとなっております。


 これもまた、お子様がだ~いすきな具材。

おぼっちゃまは大喜びでむしゃむしゃなされ、そして、最後のひとつ、私があえて一番遠くに置いた籠に手を伸ばされました。

その中身は……。


「……四種類が全部乗っている……!?」


 そう、それはクォーターと呼ばれる、四種類の具材を四分割で乗せた禁忌のピザでございました。


 一枚のピザで、四種類を楽しめる欲張りピザ。

内容は、ミートにエビマヨ、ツナ、そしてジャガバタコーン。

今まで食べ進めてこられた物との、それはまさに劇的な再会。

口の中に美味しさが残っている状態でまたそれと出会う……それは、とても心地よいものなのでございます。


 おぼっちゃまは、なんだか感慨深げにそれを手に取り、一つ一つ、再会と再びの別れを楽しむように口になされたのでした。

読んでいただいてありがとうございます!

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