海とドライブと重箱弁当1
「やあやあ、諸君。本日は、ボクの新発明お披露目会にお越しいただき、どうもありがとう! 愛してる、愛しているよみんな!」
そして、いよいよお出かけ当日。
晴天に恵まれ、夏の暑さもほどほどのお出かけ日和。
そんな素敵な朝、お城の正門あたりで私たちを待ち構えていたジョシュアは、大仰な一礼と共にそう言ったのでした。
「いや、別に披露目会に来たつもりはないんだけど……」
「今日は、みんなで海に行くからオシャレしてこいとしか言われてないんだけど……?」
と、困惑の声を上げているのは私服姿のアガタとアン。
二人とも夏らしい、涼しげな服装がよく似合っていて、とても可愛いです。
「いやいや、まさにその、『海に行く』という行為そのものがボクの新発明のお披露目会なのさ! さあさあ、それではこちらにご注目!」
困惑している私たちを置いてけぼりにして、男装のジョシュアが背後を指さします。
するとそこには、白い布で隠された、何か大きいものが置かれていたのでした。
「うわ、大きいわ。たぶん危険な奴だわ」
「そうね、サイズが大きくなるほど迷惑度も上がる。数々の失敗を見てきたから、よくわかるわ」
「そこ! サイズで判断するのはやめてくれたまえ! そもそも、ボクは失敗など一度もしていない。あれは、偉大なる成功までの通過点にすぎないのだよ。それに、ほら、失敗は成功の母と言うだろう?」
ジョシュア、結局最後に失敗であることを認めてしまってるわ。
それに、失敗は成功の母って言葉は私の前世のものだから、二人に言っても通じないわよ。
そうツッコミを入れようかと思いましたが、それだと話が長くなりそうだし、前世の話をするわけにもいきません。なので、私はジョシュアにこう声をかけました。
「それはともかく。ジョシュア、そろそろ中身を見せてくれない? 私、待ちきれないわっ」
「ああっ、ボクの可愛いシャーリィ! そうだろうそうだろう、君ならそう言ってくれると思っていたよ。ボクの真の理解者は、君だけさ!」
「うわっ。相変わらずシャーリィは、ジョシュアを乗せるのが上手ね」
「ジョシュアも嬉しそー。シャーリィが戻ってきたら絶対に見せるんだって、ずいぶん張り切ってたもの。はしゃいじゃって、まあ」
なんて、好き勝手に言い合う私たち。
もちろん、そこに悪意はありません。みんなニコニコして、互いの言うことが冗談だと理解しています。
こうしてまたみんなで集まれたことが、どれぐらいの幸福か。
みんな、それがわかっているからこそふざけあっているのです。
それを考えると、ふとした瞬間に涙がこぼれそうになりますが、ここは我慢我慢。
楽しいお出かけの日に、湿っぽさは必要ありません。
「では、勿体つけるのはこれぐらいにして、ご覧いただこう! これこが、世紀の大発明! 自在に地を駆ける、ボクの新作さっ!」
そう言って、ファッサーッ! と格好つけて布を引くジョシュア。
そしてその下から現れた、それを見た瞬間。
私は、思わず驚きの声を上げてしまったのでした。
「うそでしょっ!? まさか、これって……車!?」
※お知らせ※
U4先生が描いてくださっているこちらのコミック版が、7/7日に発売になります!
またDMMではすでに先行配信で販売が始まっているそうです。
凄く面白く描いてくださっていますので、是非よろしくお願いいたします!




