表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍・漫画化しました!】異世界メイドの三ツ星グルメ ~現代ごはん作ったら王宮で大バズリしました~【旧題・美食おぼっちゃまの転生メイド】  作者: モリタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

223/278

シャーリィと恋と決戦の舞踏会8

「皆の者、よくぞ来た。お主らの日頃の労に応えるため、今宵こうして宴を用意した。大いに楽しんで欲しい」


 そして、ついに舞踏会が開始する時間。

王宮の大広間には何百という国のお偉い方が集まり、きらびやかな衣装を身にまとって、おぼっちゃまのお言葉に耳を傾けていました。


 貴族に、軍人、聖職者。

そう、この一年、私たちが精いっぱいおもてなしさせていただいた方々が、この夜、一堂に会しているのでございます!


「ウィリアム様、さすが堂々としたお言葉! 素敵だわ……!」


 なんて、目をウルウルさせて感動しているのは、大貴族の娘アシュリーお嬢様でした。

お付きのミア様を伴い、豪華に着飾った彼女も、舞踏会に参加してくださったのでございます。


 その他、宰相のティボー様や、大将軍のモーガン様、大司教様にハンバーガー貴族のマグダナウ卿。

ローレンス様のご両親までお出でで、さらに会場を埋め尽くす、一流貴族のご子息やご息女の皆様!


 いずれも、精いっぱい自分の家の権威を表すべく、豪華な衣装や宝石を身にまとい、実にきらびやかな光景にございます。

ですが、そんな会場の空気は、明確に二つに分かれておりました。


 一つは、おぼっちゃまの周りに集まった皆様。

そして、もう一つは……オーギュステを取り巻く、三分の二ほどの方々!

その輪の中で、ワイン片手にニヤニヤとした笑みを浮かべたオーギュステが、そこで憎たらしく言ったのでした。


「おい、ウィリアムよ。挨拶が済んだのなら、そろそろ食事の時間といこうではないか。皆も、どうやらそろそろ我慢できぬようだしな!」


 その言葉通り、オーギュステの周りの皆様は、血走った目でテーブルに飾られた料理を見つめているのです。

そこにあるのは、もちろん魔女エレミアの作った料理たち。


 そう、今やこれほどの人々が、あの魔女の作った恐ろしい料理の虜となっているのでした!


「ああ、やっと魔女の料理が食べられるわ! ようやくよ!」

「今日を、どれほど待ち望んだか……。もう、あれ以外はちっとも美味しいと思えないの。ああ、早く食べたい。早く!」


 妖しい様子で、よだれを垂らしながらつぶやく皆様。

それは本当に不気味で、私たちの陣営から、不安の声が漏れました。


「思っていたより、ずっとたくさん取り込まれてる……これ、やばいんじゃ……」

「正気には見えないわ。あの魔女の料理、やっぱり何か変よ。皆様、大丈夫かしら」


 たしかに、エレミアの料理は恐ろしいです。

一度ハマってしまった私には、皆様の気持ちが痛いほどわかる。

本当に、あの時食べたお菓子はこの世のものとは思えない美味しさでした……もっとも、今の私は、臭いを嗅ぐのも嫌なほど嫌いですけれども。


 なんて思っていると、その時、オーギュステの脇に立っていた魔女エレミアと目が合いました。

彼女は、ふふんと笑みを浮かべると、モデル歩きでこっちにやってきて、尊大に言ったのでした。


「シャーリィ。意外だったわ、あれから一度も会いに来てくれないなんて。よく我慢できているわね、私の料理を」


 それは、かたくなに餌を拒否するペットにかけるような言葉でした。

彼女の中では、私はすでに彼女のものなのでしょう。


「しかも、懲りずにまた料理を出すつもり? 私の料理に勝てないことぐらい、わかってもよさそうなものだけど」

「……エレミア。そうだとしても、私は自分の料理を作ること、そして人に食べてもらうことを諦めたりしないわ。だって、それが私の全部なんだもの」


 そう。そうです。

たとえ誰かの料理がどれほど人気でも、私が料理を作ることには関係ありません。

私は、私の美味しいを追及して、そして皆に知ってもらいたい。


 私の前世、日本にはこんなすごい料理があったんだと。

それがとても素晴らしく、とっても美味しいのだということを!


「あらそう。ま、正直、アンタのそういうところ嫌いじゃないわ。せいぜい、頑張りなさいな。容赦なく踏みつぶすけどね」


 そう余裕たっぷりに言うと、エレミアは自分の陣地に戻って行きました。

正直、不安ではありますが、彼女の相手はアガタがすると言ってくれたのです。

なら、アガタを信じてまかせるだけです。


「さて、それでは。皆様。今宵、我らが偉大なる王の計らいにより、珍しくも素晴らしき料理を用意しておりますぞ。どうぞ、ご覧ください!」


 と宰相ティボー様が口を開き、私たちのほうを指し示しました。

一斉に集まってくる、視線。

ですが、すぐに皆様の口から困惑の言葉が上がりました。


「……なんだ、これは。なんだか変わった木製のカウンターが並んでいるが」

「その上に乗っている、ガラスのケースはなんだ? 中に入っているのは……もしかして、魚の切り身、か?」


 そのお言葉通り、私たちの陣地に設営されているのは、木製のカウンターでございました。

中には、総料理長のマルセルさんとローマンさんに、その部下の皆様。


 ただ、いずれもいつものコック服ではなく、私が用意した、日本の板前さんが着るような白衣を身にまとっています。

そして、今日のために特注した、木の香りが心地よいカウンターの上には、中が見えるガラスのケース。


 そこには、綺麗に切り分けられた、マグロやタイにカンパチなどのお魚の切り身に、エビや貝類などのネタが陳列されています。

そしてカウンターの中では調理が行えるようになっていて、いつでも料理を提供できるようみんなが万全の態勢で待っていました。


 これこそ私たちが今日のために用意した、渾身の出し物。

ですが、皆様の最初の反応は……困惑でございました。


「なんだ、まさかあそこから直接料理して出してくるつもりか?」

「あの魚、まさか生か? あれをどうするつもりだ」

「意味が分からん。なんなのだ、あれは」


 そして、遠巻きに見つめるだけで来てはくださらない皆様。

あれ……これ、やばい……?

しまった、この国で出すにはまだ新しすぎた!?


 と、焦ったのもつかの間。

そこで、集団の中からゆっくりとこちらに来てくださる方がいました。

そう、それはおぼっちゃまをお守りするために協定を結んだ相手。


 大貴族の娘、アシュリーお嬢様!

彼女は皆様の視線が集まる中、ミア様を連れて優雅に歩み寄ってくると、私が引いたカウンターのお席にお座りくださいました。


 ですが、彼女は私のほうを見て、不安そうにこうつぶやいたのでございます。


「ねえ、協力している以上、仕方がないから出て来たけど、本当に大丈夫なんでしょうね? 皆様の前で、私に恥をかかせないでよね……!」

「ご安心ください。最高に美味しい料理を、お出ししますわ。この私の全てにかけて!」


「……そう。アンタがそう言うなら、信じてあげる。期待してるわ、メイドのシャーリィ」


 なんと。

予想外のお言葉に、ビックリしてミア様のほうを見ると、彼女はニッコリ微笑んで言ってくださいました。


「シャーリィ、このような状況だけど、君のことを信じているよ。お嬢様も、私もね」

「……ありがとうございます、ミア様……!」


 温かい言葉が、心にじんわりしみました。

この状況で、いの一番にこちらに来るのは、かなり勇気がいたはず。

おぼっちゃまのためとはいえ、本当にありがたい!


 そして、それに続くようにして幾人かの皆様がこちらにお越しくださいました。


「私が来なくては話になるまい。ふふ、期待しているよ、シャーリィ」

「ティボー様! ええ、期待にお答えしますわ!」


 そう言ってアシュリーお嬢様の隣に座った宰相のティボー様に、ニッコリ笑顔で応えます。

そして、次に来てくださったのは、私とハンバーガー屋を経営しているマグダナウ卿。


「ええい、毒食らわば皿までだ。状況が悪かろうと、ワシはこっちに賭ける! スキヤキを超える衝撃に、期待しておるぞ!」


 さらに、ローレンス様のご両親も来てくださいました。


「やあ、シャーリィ。なにやら大変なようだね。だが、なにはともあれ、私は君の料理が食べたい」

「お久しぶりね。忙しいでしょうけど、またうちに遊びに来て欲しいわ。まあそれはともかく、何が出るのか楽しみにしているわよ」


 ああ、なんてありがたいのでしょう。

皆様、こんな状況でも、ひるむことなくこちらに来てくださる。

それはつまり、おぼっちゃまに一票を投じてくれているということでもあります。


 そして、最後に一番大事なお相手。

おぼっちゃまが来てくださり、優雅にお座りになって、こう言ったのでした。


「では、シャーリィ。今宵の料理の、紹介を」


 そのお顔には、わずかな不安とともに、大きな期待が現れていました。

今夜お出しするものについては、まだおぼっちゃまにも秘密でございます。

ただ、私が知る最高の味をお出しする、とだけお伝えしてあったのでした。


 私が視線を向けると、マルセルさんとローマンさんが大きくうなずきました。

そしてマルセルさんは丸い桶に手を突っ込むと、そこに詰められていた白いもの……酢飯を手に取り、慣れた手つきでさっと楕円形に握り始めます。


 そして、その上に白身魚の刺身を載せるのを見ながら、私は皆様に向けて、元気に声を張り上げたのでした。


「さて、皆様。どうぞご覧くださいませ。これなるは、遥か東方の地に伝わる、史上最高の料理。世界でも有数の珍味にして、美食の極み。手のひらの芸術、一口の奇跡!」


 マルセルさんが、完成したそれを、タンッ!と皆様の前にお出しする。

それと同時に、私は、誇らしげに、この世界でのそれの誕生を祝うように、高らかにその名を告げたのでした。


「その名も……寿司にございます!」

忙しさと寒暖差にやられて投稿期間があいてしまいました、ごめんなさい!

あと前の話、いろいろおかしかったみたいでそれもすみません。

誤字報告が一杯あって、びっくりしました……。報告ありがとうございます!


コミカライズのほうなのですが、来月開始いたします!

詳細は、こちらとなります。


=====

漫画アプリ「Palcy」にてコミカライズ連載中!

異世界メイドの三ツ星グルメ ~現代ごはん作ったら王宮で大バズリしました~

原作:モリタ 漫画:U4 キャラクターデザイン:nima

=====


キャラクターデザインのnima先生がとても素敵にシャーリィたちをデザインしてくださり、漫画担当のU4先生がとても面白く描いてくださっています。

アプリで気軽に読めますので、ぜひよろしくお願いいたします!


ただ、それに伴い、タイトルは上記に変更する運びとなっております。

今のタイトルが気に入っているのに、という方もいるかもしれませんが、申し訳ありませんがどうかご容赦ください……!


書籍のほうの情報とともに、また近日中にお知らせさせていただきます。

投稿も頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ