表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍・漫画化しました!】異世界メイドの三ツ星グルメ ~現代ごはん作ったら王宮で大バズリしました~【旧題・美食おぼっちゃまの転生メイド】  作者: モリタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

201/278

騎士と戦士と宴会料理1

「おいっしーい!」


 聖職者の皆様へのおもてなしが終わって、しばらく後。

すっかり秋が深まり、お米の収穫も無事終わった頃、昼下がりのメイドキッチンに、私の喜びの声が響き渡りました。


 その理由は、もちろん、美味しいものを食べているから。

今日のおやつは、特別製。

なんと、今日はコメダ珈琲のシロノワールを自作してみました!


 温かいデニッシュパンの上に乗った、冷たいアイスクリーム。

それに、さらにメープルシロップ代わりのハチミツを垂らして食べると、もうそれは完全に罪の味。


 ああっ、糖分を過剰に口にするこの快感!

糖分、糖分、糖分の三段攻撃に、私の心とお腹は嬉しい悲鳴を上げっぱなしです!

その代償として、当分甘いものは控えねばなりませんが、今だけは目の前のこれを思いっきり楽しむとしましょう!


「あっ、シャーリィ、ずるい! 一人でまた美味しそうなもの食べてる!」

「お姉さま、ずるいです! 私達にも分けてください、一口だけでも!」


 そこで、感づいたアンやクロエたちがやってきて、「しょうがないなあ」なんて言いつつ一切れずつ分け与える私。

まあ正直、コメダを意識して大きく作りすぎてしまったので、ちょっと貰ってくれるのはありがたかったりしますけれども。


「うわあ、美味しい! すごく美味しいです、お姉さま!」

「ほんと、おいっしい! 相変わらず天才ね、シャーリィ!」


 なんて、大喜びの仲間たちを見て、私もにっこり満足顔。

ああ、やはりみんなでおやつを食べる、穏やかな時間は最高ね。

と、私が満ち足りた気分になっていると。


 そこで、メイドの一人が飛び込んできて、とんでもないことを叫んだのでございました。


「大変よ! ローレンス様が、決闘なさるらしいわ!」

「っ!?」


 それを聞いた瞬間、驚いてシロノワールを吹き出しそうになってしまう私。

それはどうにか我慢しましたが、あまりの事に激しく動揺してしまいます。

嘘っ! 決闘って、西部劇でガンマンがやるあれ!?


 つまり……殺し合い!?


「けっ、決闘って、誰と!?」

「それが、オーギュステ公の部下の、おっかない傭兵とだって! あの、顔に傷があって、私たちを嫌らしい目で見てくる奴!」


「嘘でしょ、あの筋肉ゴリラと!? あんな化け物とローレンス様が勝負するなんて、絶対嫌よっ!」


 と、メイドキッチンはハチの巣をつついたような大騒ぎ。

私も、思わず顔が青ざめてしまいます。


(嘘でしょ、どうしてそんな荒っぽいこと……。ここまで、あくまで平和にやってきたのに!)


 頭の中に、グルグルと嫌な考えが駆け巡ってしまいます。

傭兵さんのお名前は、たしかギリガンとか言ったはず。

ギリガンさんは、膨れ上がった胸筋と、私の胴ほどもあるたくましい二の腕を持った、いかにも強そうな人。


 なんでも一度の戦場で、数十人を血祭りにあげたとかで、それはもうおっかない人です。

それに対し、ローレンス様は一度も戦場に出た経験がないはず。


 もちろんこの国は長く平和だったのですから、それで当然でございます。

部下の皆様も、山賊討伐などは経験があっても、本格的な戦いは経験していないはず。


 つまりギリガンさんは、平和な動物園に放り込まれた野生の猛獣のようなもの。

そんな人と、ローレンス様が……!


(まっ、負けたら、ローレンス様、どうなっちゃうの? し、死ぬ……とか、ないわよね!?)


 ローレンス様が死んじゃうなんて、とても考えられない。

いえ、そうじゃなくても、逆にローレンス様が決闘で人を殺してしまったら?

もちろんローレンス様は騎士なのだから、戦争になればそういうこともあるでしょうけども、だけど必要もないのにそんな……。


 恐ろしい想像に、手足が震えてしまいます。

どちらにしろなにかが失われてしまいそうで、考えがまとまらない。

ですが、そんな私をよそに、事態はどんどん動いていってしまいます。


「いっ、いつよ、いつ決闘するの!?」

「今からだって! 訓練場で、馬に乗ってやるらしいわ!」


 嘘っ、今から!?

展開が早すぎる!

もっと、こう、一か月ぐらいは心の準備をする時間をください!


 いえ、それはそれで一か月なにも手につかなくなっちゃうけども!


「なによ、急すぎるわよ! おっ、応援に行かなきゃ!」

「ええ、そうね、メイド長にお願いして少しだけお時間をいただきましょう! シャーリィ、それでいいわよね!?」


 と、私に視線が集まってきて、ぎょっとしてしまいます。

えっ、今から、見に行くの?

ローレンス様の決闘を!?


(そ、それって、場合によってはローレンス様が、その、し、し……あれするところを、見なくちゃいけなく……やだ、これ以上考えたくない!)


 メイド頭として決断しなければいけないのに、半泣きになって何も考えられない私。

ですが、そんな私の肩にアンが手を置いて、こう声をかけてくれました。


「シャーリィ、不安なのはわかるけど、行かないときっと後で後悔するわ。私たちにできることは少ないけど、せめて応援に行きましょう」

「アン……」


 私の賢い相棒の言葉に、心のざわめきが収まっていくのを感じます。

そうよね、行かないときっと後悔する。

決意を固めると、私はみんなに向き直り、こう言ったのでした。


「ええ、わかったわ。応援に行きましょう。少しでも、お力になれるよう!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ