表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍・漫画化しました!】異世界メイドの三ツ星グルメ ~現代ごはん作ったら王宮で大バズリしました~【旧題・美食おぼっちゃまの転生メイド】  作者: モリタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

184/278

誕生会と暗躍と激映えスイーツ8

昨日は事情により投稿できませんでした。

ごめんなさい!

 シュークリーム。

シューとはキャベツのことで、それはキャベツみたいな外見のクリーム入りお菓子、という意味だそうでございます。


 プチシュークリームは以前おぼっちゃまにお出ししたことがありますが、大きいものはこれが初めて。

いつか困った時に出そうと思っていた切り札を、私は今日この機会に切ることにしたのでした。


 そして、いくつかある種類の中から、その皮に選んだのは……クッキー生地!

プチシューの皮は、プチっとつぶれる感じを重視して柔らかいものにしましたが、大きいほうの皮は私的に断然これ!


 カリカリと食感が気持ちいい皮の中から、甘くてとっても冷えたクリームが出てくる。

これが、最高なのでございます!


 そう、それは、前世で私が大好きだったシュークリーム屋、『ビアード・パパ』の物を目指したものなのでした。

駅の構内でやばい匂いを垂れ流す、私の最大の友にして最強の敵、ビアード・パパ。


 今日は駄目だ、買っちゃ駄目だと何度言い聞かせても、気が付いたら私はシュークリームの入った箱を手に、最高の笑顔で家路についてしまうのでした。


 そんな、私の特別なスイーツ、シュークリーム。

これぐらい、異世界でも簡単に再現できるでしょ、と思いきや。

クリームが生ぬるいと、これがまた美味しくないのなんの。


 そう、よく冷える冷蔵庫なしには、美味しいシュークリームなど作れないのでございます!

ゆえに王宮に来るまでは、ああ、もう二度とあれを味わえないのね、なんて嘆いたものでした。


「やだ、ほんと美味しい! これ、最高に素敵だわ!」

「ああ、正しく幸福だ。幸福の味だ……」

「これは、王宮でしか食べられないそうだ。今のうちに食べておかねば!」


 なんて、大絶賛のシュークリーム。

まあそうでしょうねえ。

人生初シュークリームが、美味しくないわけがないのです!


 それはまさしく感動の味。

そして、そんなスイーツたちだけでなく、お食事のほうもたいそうご好評をいただいている様子。


「なんと、これは、未知の味すぎるぞ! なのに、信じられんぐらい美味しい! どこの国の料理か、見当もつかんがとにかく美味い!」


 なんて、太っちょ貴族様が大絶賛しながら食べているのは、お好み焼きでございました。

そう、あのお好み焼きでございます!


 お祭りならこれがなくちゃ、とシェフの方に作り方をじっくりと教え、鉄板で調理してもらっているお好み焼き。

それは、キャベツがたっぷり入ったふわっふわの生地に、最上級の豚肉や、獲れたて新鮮なカキやイカなどの海鮮を加えた、超デラックス版でございます!


 そしてその上にかかるのは、もちろんたっぷりのソースとマヨネーズにカツオブシ!

これで美味しくないわけがない。


 じゅわじゅわと音を立てて焼ける、生地とソース。

ふかふか食感とわずかなお焦げ、そして鉄板で焼けた具材のうまみ。

ほんと、お好み焼きって、美味しい要素がとびきりの多重構造になった、最強の存在です!


(たこ焼きでは失敗したからね。最初から、お好み焼きで挑戦しておけばよかったわ)


 なんて、お好み焼きに列ができているのを見て、ニコニコしてしまう私。

その隣で焼かれている焼きそばも、大好評のようでございます。

いやあ、立派な服を着た貴族の皆様が、こういう庶民的な料理を喜んでいる姿は、なかなか楽しいものですね!


「ほう、なんと。実に美味しい、これがハンバーガーですか! マクダナウ卿、あなた、こんな美味しいものを出す店を始めるのですか? ああ、羨ましい!」

「左様、左様! これは国を席巻する料理ですぞ! ああ、もちろん店のオープン記念にはお招きしましょう。もちろん、お友達もいくらでも連れてきてくだされ。ハッハッハ!」

 

 なんて考えている間にも、向こうではハンバーガーを囲んだ皆様が大盛り上がり。

先日味方に引き込んだマクダナウ卿が、ここぞとばかりに宣伝を行っています。


 他にもピザや唐揚げ、カレーパンなどなど、ここぞとばかりに出した料理はどれも大好評!

すると、ふとそこで、調理にいそしんでいるランチシェフのローマンさんと目が合い。


 彼は、顔面に悔しさをにじませてこう言ったのでした。


「ええい、お前の料理ばかり人気で、わしらのものがかすんでおるではないか! うおおお、悔しい、悔しい!!」


 そして、ぐぎーっとハンカチを噛むローマンさん。

相変わらず、考えていることがそのまま口から出る人です。

そうは言っても、彼が焼いているお肉もよく出ていますけどね。


「ねえ、こちらにも見たことのないスイーツがあるわ! 凄いわ、夢の中みたい!」

「あああ、どれもこれも食べたくて目移りしちゃう! どうすればいいの!」

「駄目よ、食べすぎたら後で後悔するわよ! ああ、でも食べなくても後悔しそう……!」


 なんて、きょろきょろしながらお菓子の中を移動していく、着飾った一団。

クリスピードーナツにパンケーキ、いちごショートにチョコレートパフェ。

一つ一つに目を輝かせ、大盛り上がりの彼女たち。

 

 どうやらそれが名家のご令嬢の皆様と見た私は、そこで用意しておいた作戦に移ることにしました。

すっと手を上げて合図すると、側に控えていた彼女がやってきて、ご令嬢方にこう声をかけたのでございます。


「失礼、お美しい皆様。よろしければ、今日の記念に、私めに一枚描かせていただけませんか?」

「えっ……」


 突然話しかけられ、驚きの声を上げるご令嬢。

ですが、すぐにその頬が赤く染まり、感動の声が上がりました。


「まあっ! あなた、先ほど空を飛んで見せた……!」


 そう、そこにいたのは、華麗に男装したジョシュアだったのです。

綺麗に化粧を施し、男性ものの服を着たその姿は、まさに絶世のイケメン。

しかも、先ほどみんなの前で凄いパフォーマンスをやってみせたという、有名人補整付き!


「えっ、嘘、私たちを描いてくださるの……?」

「ええ、ぜひ。さあさあ、どうぞお並びください。あ、どうぞスイーツはお持ちになったままで。そのほうが、今日の日の思い出になりますから。ああ、良いですね、素敵です。どうぞそのまま、少しだけじっとしておいてください」


 きゃあきゃあと盛り上がる彼女たちに並んでもらい、筆を手にし、キャンバスに向かうジョシュア。

するとその手が、信じられないほど素早く、精密に動き始めました。


「……よし。後に清書いたしますが、このように描かせていただきました。いかがでしょう」

「まあっ、素敵っ……! 素晴らしいわっ!」


 ものの数分でその作業は終わり、そう言ってジョシュアが見せた絵に、またもや歓声が上がりました。

それもそのはず、なにしろそこには、かなり美化されて、しかも色とりどりのスイーツを手にした皆様が、素晴らしい技術で描かれていたのですから!


「凄い、凄いわ! あの、これって、一枚だけなのかしら?」

「いえいえ、まさか。同じものを複製させていただき、皆様全員に送らせていただきますとも」


「うそ、本当!? 凄い、嬉しいっ……!」


 きゃあきゃあと、大喜びの彼女たち。

それは、ジョシュアと事前に打ち合わせていた作戦でございました。

今日の日を特別にするためにと言って、スイーツとともに彼女たちを描き、渡す。


 すると、彼女たちはそれを他人に見せて、大いに自慢してくれることでしょう。

そうすれば、今日この場に来なかった皆様は大いに悔しがり、次の機会には必ず、と考えてくれるのではないでしょうか。


 これはそれを目的とした、いわば勝手に宣伝してくれる人を増やす策略。

前世でもネットを通じて大いに活用されていた、アレ。

そう、すなわち……“映え”にございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ