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第4話

 彼女が去ってからすでに周りは暗くなっています。

この世界に来て初めての夜です。

どうしても不安が多いのです。

今までは家の中の玄関で寝ていましたから。

守られていないというのはこんなにも不安なものなんですね。


 家みたいに落ち着けるところはありません。

草原というのは広くて全く障害物がないので不安になります。

守ってくれるような人もいませんし。

まだ何かを背にしていた方が安心です。

少し遠くに木があります。

大きな木ではありませんが、私が体を預けるくらいには大きな木です。

それにしても変わった木ですね。

木の周りに蔓が巻いている木なんてなかなかありません。

私が木の硬い皮が背中に当たります。

今まで木はストレス解消のために噛んだり蹴ったりして使っていました。

体を預けるとここまで頼りになるとは思ってもみなかったです。


 疲れていたのかあっという間に寝てしまって、朝日がまぶしくて目が覚めました。

気が付けばすでに朝です。

喉も乾きましたし、お腹も減りました。

そういえば昨日から何も口にしていません。

1日という僅かな期間でしたが、修行に没頭していましたから。

そういえば、昨日、彼女が倒した魔物があったはずです。

近くまで行ってみると魔物の死体はありませんでした。

血の跡はあるのですが。

他の魔物が食べてしまったのかもしれません。

人間も食べると言っていましたからね。

ただ、私もこのままでは餓死してしまいます。

とりあえず、水だけでも飲まないと。


 少し走っていくと水の音が聞こえます。

大きな川が流れていました。

岩ばかりで難しいところですが、喉が渇いているので滑らないようにしながら頭を水に近づけます。

川の水を少し舐めてみます。

美味しいですね。

毒は入っていないようです。

魔法の水は魔法レベルが高くなれば飲料水にできるとのこと。

私の魔法レベルではまだ難しいです。

飲むことはできるそうですが、腹痛になるそうです。

腹痛になるのであれば意味がありません。

何か体に良くないものが含まれているらしく、専用の魔法を使う必要があります。

その魔法を水魔法に付与できるのはレベルが上がってからとできるようになると。

まだ、魔法を覚えたての私ではその魔法を使うことができません。

充分に水を飲みましたので、何かが通った獣道があるのでその道を進んでいきます。

よくよく見れば岩も蔓が生えていますね。

この世界では蔓が主流なのでしょうか。

獣道と言っても草原の中に少し草が少なく、短い草が生えているような道ができているだけです。

獣道をそのまま進むとさらに大きな川に出ました。

運よく砂地が広がっており、浅瀬で簡単に水が飲めそうです。

ここら辺に居を構えましょう。

しかし、このような立地の良い場所で動物がいないのはどうしてでしょうか。

ただ、砂地では安定しないので少し離れたところに家を作りましょう。


 大丈夫だとは思いますが、もう一度水を飲みます。

水に口をつけると元の世界よりも随分と美味しい気がします。

大して変わらないはずですが、何が違うのでしょうか。

そのまま水を飲んでいると僅かに水面の真ん中の方で水が円を描いて揺れています。

辺りを見回しましたが何もいません。

…、気のせいですかね。

思ったよりも喉が渇いていたようで、先程水を飲んだにも拘わらず喉が渇いています。

口に水を含みました。

やはり元の世界よりも美味しいですね。

今度は水の音が聞こえるように大きく水面が揺れます。

首を上げると水面から蛇のような魔物の頭が私の前に現れました。

蛇の魔物は私を食べようと口を開きます。

ほとんど無意識に魔法を放っていました。

私の体が痺れて激痛が走ります。

私が苦痛に耐えながら顔を上げると水面に蛇が浮かんでいます。

体中が痺れています。

ゆっくりと体を起こし、再度蛇の様子を見ます。

死んでいますね。


 それにしても大きな蛇ですね。

今まで見たことがないほどの大きな蛇です。

テレビというもので蛇を見たことがありますが、人間よりもだいぶでかいです。

3倍近くはあるのでしょうか。

それに青色という蛇は珍しい。

そういえば鑑定というスキルがあるのでしたね。

早速鑑定して見ましょう。


 【 名 前 】 ビッグブルーアジャラ

 【 年 齢 】 30

 【 職 業 】 毒蛇

 【 レベル 】 30

 【 体 力 】 2000/2000

 【 魔 力 】 200/200

 【 攻撃力 】 1562

 【 防御力 】 789

 【 俊敏性 】 695

 【 スキル 】 毒液LV.3

 【固有スキル】 鰓呼吸

 【 加 護 】 なし

 【 称 号 】 なし


 【注釈】食用可



 …この蛇は食べることができるのですか。

体が青いので毒があるのかと思っていました。

それにしても私よりもだいぶレベルが高かったのですね。

どおりで嫌な予感がしたわけです。

咄嗟に出した雷の魔法が効いて良かったです。

お腹も減っていますし、ご飯としたいのですが、この魔物はどのように食べるのでしょう。

とりあえず、噛んでみましょう。

何かピリッとしますね。

舌が痺れています。

毒液とありましたから体から毒を出すのかもしれません。

噛んでもねばねばしているため美味しくありません。

毒を食べているせいか少し気分も悪くなってきました。

ステータスボードで私の状態を確認しましょう。



 【 名 前 】 ショウスイ

 【 年 齢 】 3

 【 職 業 】 異世界に紛れ込んだ動物

 【 レベル 】 11

 【 体 力 】 475/500(毒状態)

 【 魔 力 】 500/500

 【 攻撃力 】 430

 【 防御力 】 215

 【 俊敏性 】 859

 【 スキル 】 幻影LV.1 鑑定LV.1 アイテムボックス(最大LV)

 【固有スキル】 最強種進化 

 【 加 護 】 なし

 【 称 号 】フェンリルの意志を継ぎし者


 …いつの間にかレベルが上がっています。

とりあえずレベルのほうは後回しで。

体力の横に毒状態となっています。

気分が悪いのでこれが毒状態なのでしょう。

少しすると楽になりましたが、毒状態になると体力が減っていくようですね。

気を付けるようにしましょう。

おそらく、蛇の皮の周りに粘着質の液体が分泌されています。

この透明な液体が毒状態にさせるもの。

しかし、この皮をどうにかしなくては肉…なのでしょうか、食べることができません。

美味しいかどうかは別にしてお腹に何か入れないと。

火の魔法がありましたね。

では、火の魔法を。

私は吹き飛ばされました。


 一体今の爆発は何だったのでしょうか。

火魔法を使っただけなんですが。

だいぶん、遠くまで飛ばされてしまっています。

体中が傷だらけです。

毛も砂まみれになりました。

本当に何が起こったのでしょうか。

食べ物を食べようとしているだけですが、思った以上に大変です。

ヒロシ殿はどのようにして私に食べ物をくださったのでしょうか。

不思議でなりません。

近くまで行くと蛇が黒焦げになっています。

確かに毒の液体はなくなったのかもしれません。

しかし、食べ物としての状態ではありません。

明らかにゲテモノです。

うーん、とりあえず、皮をはいでというか焦げを取り除いてみましょう。

皮を取り除いていくと中から白い肉が見えてきます。

ここら辺は食べることができそうですね。

ガブリといきましょう。

…モグモグ。

…思った以上に美味しくありませんね。

何が足りないのでしょうか。

でも、今まで食べていたカリカリよりは美味しいです。


 そういえば、ヒロシ殿は火で焼いているのを見たことがあります。

良い匂いをしていたのに私にはくれませんでしたけど。

ならば、火で熱を。

先ほどのように全力で放つことはしません。

少しずつ焼いていきましょう。

ほんの少しで…。

小さすぎましたか。

では、もう少し大きく。

おっと、いい感じですね。

しかし、この状態を保つのは非常にしんどいです。

さて、食べてみましょう。

うーん。美味しい。

なるほど、肉というのは生で食べるよりも焼いて食べる方がおいしいのですか。

私は蛇を焼きながら食べていきました。


 …美味しかったからでしょうか。

蛇のお肉は全てお腹の中に消えていきました。

今までこんなに食べたことはなかったのですけど。

しかし、美味しいお肉でした。

異世界にはこんなに美味しいお肉があるのですね。

それだけでも救いがあります。


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― 新着の感想 ―
[一言] 私もステイホームで7月から小説なるものを書き始めようとした一人です。ちなみにコレストロール値もあきらかにあっかしました。やはり人は歩かないとだめのようです(笑)。 犬が主人公ですが、語り口…
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