第36話
4日後、ようやく体が治りました。
実はカルロも怪我をしていたようです。
レッドドラゴンの時も無理していたようです。
その怪我も癒えています。
そこまで多くの肉を食べることができませんでしたが、今日から食べることができます。
出したのはレッドドラゴンの肉。
白い線が無数に入っており、非常に美味しそうです。
『おっ、ついに出すのかレッドドラゴンの肉を。』
『今日でこのダンジョンも終わりですから、景気よく行きましょう。
それに私もようやく内臓が治ったようですから。』
『しかし、あれだな。
肉が焼けるまでに時間がかかり過ぎるのはいけんな。』
『そんなことを言われましても…。
どうしても時間がかかるものですよ。
魔法でやると緻密な魔法制御が必要となりますから。
そこまでの魔法の技術を習得しなくても普通に焼けばいいじゃないですか。』
『いや、お前もここまで監視しなくなったら時間がかからないし、それ以上に美味しいかもしれないぞ。』
カルロの言いたいことも分かりますが、意味がないというか待てばいいだけです。
すぐに強火で焼いても美味しくないですから。
出来るだけじっくりと火を通しながら肉を見ます。
『うーん、良い匂いですね。』
『良すぎるぞ。早く食いたい。』
『待ってくださいよ。
涎は垂らさないように。』
カルロの体は小さいので私の顔に垂れるくらいの話ですけどね。
肉に垂らせば私がものすごく怒ることは目に見えていますので近づくことはありません。
ただ、やはり肉が早く食べたいのは本当のようで、私の隣に構えています。
そこまでする必要はありませんけどね。
カルロに先に渡していますからね。
充分に食べることができているはずですけど。
そろそろいいですね。
カルロに肉を渡します。
『おお、めっちゃうま、うま。』
私も食べてみましょう。
肉汁が一杯広がります。
噛めば噛むほどに広がっていく肉の香りです。
あっという間になくなってしまいます。
中毒になりそうです。
『おい、次はまだか。』
『すぐには焼けませんよ。
少し待ってください。
しかし、ドラゴンの肉というのはここまで美味しいのですか?』
『食べたことあるわけでないだろう。
人間とかくらいなれば食べたことがあるやつもいるだろうけどよ。
それでもドラゴン単体に勝つことができる人間なんていやしないから、食ったことがある人間もそんなにいないと思うぞ。
師匠は人間の住んでいる場所にドラゴンが出たら災害だと言っているのを聞いたことがあると言っていたし。』
ドラゴンはそれくらいの強さであるということですね。
そのドラゴンを倒している私たちもそれに次ぐ強さであるということでもあります。
これでは人間と仲良くなるのは難しいかもしれませんね。
この肉の調理法とか人間ならばかなり詳しく知っていそうですけど。
『まあ、どちらにしてもこのダンジョンを出てからの話ですね。』
『どうした、肉はまだか?』
『はいはい。』
カルロは肉に夢中です。
レッドドラゴンの肉は本当に美味しいですからね。
私とカルロはレッドドラゴンの肉を堪能しました。
『ああ、食った食った。』
一体あのお腹の中にどうやって肉がはいっていったのでしょうか。
しかし、このダンジョンも今日でお別れです。
入ったところではなく進んでいけばおそらく出ることができるというのです。
カルロが再三言っていることですので信じています。
『今後の話だがな。』
カルロは横になりながら真剣な話をします。
『俺にもいくつか師匠に言われていることがある。
そのことをしなくちゃならねえ。
ただな、一人ではかなり難しい。
ショウスイ、手伝ってくれないか?』
『わかりました。
一緒に行きましょうか?』
『いいのか?
俺が頼んでおいてあれなんだが。』
『大丈夫ですよ。
私は何も言われていません。
ただ、強くなれと言われているだけですから。』
私は何になれということは言われていませんし、役目はいずれわかると言われています。
だから何も任務というかやらなければならないことはありません。
強くなることだけ。
いずれ誰かと戦うことになるのだろうとは思います。
『そうか。
すまんな。
飯もショウスイに頼りきりだしな。』
『肉を焼いている時にせかされること以外は何も思っていませんよ。
もう少し美味しく焼きたいと思っていますけどね。
そのために人間に仲間が欲しいと思っています。』
これにはさすがにカルロは渋い顔をしました。
『人間を仲間にというのは難しいだろうな。
俺たちのレベルが上がったのもあるが、普通の人間であれば魔物に従うことはない。
それこそ教えてもらうというのであれば別かもしれん。
ちゃんと対価を用意してな。
レッドドラゴンの牙とかな。
人間の間では高く売れるはずだ。』
『なるほど。
そこまで強くなっている印象がないのですよね。』
『それはしょうがない。
ダンジョンでは周りの魔物が強いことが多々あるからな。
気が付いたらということはある。
しかし、俺もそこまで長いダンジョンには入ったことがないからな。
今回は例外だろう。』
そうなのですか。
カルロもそれなりに生きていたと思いますが、それでもこのようなダンジョンには入ったことがなかったのですね。
相当に珍しいダンジョンということですか。
『そうですか。
しかし、そこまで強いということですが私たちは外で生活できますかね?』
『ああ、そういうことか。
心配いらん。
魔物が逃げたとしても追いついて倒すことができる。
食料には困らんと思うぞ。』
カルロが言うのであれば正しいのでしょうね。
『わかりました。
じゃあ、最後に鑑定してからダンジョンを抜けますか。』
『おう、頼んだぞ。』
【 名 前 】 ショウスイ
【 年 齢 】 4
【 職 業 】 異世界に紛れ込んだ動物
【 レベル 】 30
【 体 力 】 9000/9000
【 魔 力 】 9000/9000
【 攻撃力 】 2500
【 防御力 】 2000
【 俊敏性 】 4500
【 スキル 】 幻影LV.3 鑑定LV.3 アイテムボックス(最大LV) 全魔法LV.3 倍化
【固有スキル】 最強種進化
【 加 護 】 なし
【 称 号 】フェンリルの意志を継ぎし者
【 名 前 】 カルロ
【 年 齢 】 50
【 職 業 】 カーバンクル
【 レベル 】 45
【 体 力 】 2700/2700
【 魔 力 】 8500/8500
【 攻撃力 】 1000
【 防御力 】 1000
【 俊敏性 】 6500(+1000)
【 スキル 】 俊足LV.3 全魔法LV.4 倍化
【固有スキル】 最強種進化
【 加 護 】 ジャブタルの加護
【 称 号 】スピードスター
2人ともだいぶレベルが上がりました。
レッドドラゴンは強かったのですね。
鑑定のレベルも上がっています。
今までになかったカルロのところにプラスの補正があります。
【 称 号 】スピードスター…ある種族の中で一番の俊敏性を持つ称号。俊敏性が上がる。
おお、説明がついています。
カルロがかなりの俊敏性を持っているのが分かります。
レベルが低い時でも速かったのはわけがあったのですね。
加護やスキルの項目はまだ分からないようです。
レベルが上がれば見える物も増えてくるのでしょう。
『どうした?
大丈夫か?』
『大丈夫です。
少し驚いていまして。
見える項目が少し増えています。』
『おお、見えているのは何だ?』
『称号です。
カルロにはスピードスターという称号が付いていますが、俊敏性がより上がるようです。』
『なるほどな。
それでレベルが低いときも俊敏性が高かったのか。
納得がいく。』
『そういえばショウスイにも称号が付いていただろう。』
『あ、忘れていました。』
【 称 号 】フェンリルの意志を継ぎし者…フェンリルにとって避けることができない運命を背負う者。運命を乗り越えた証にはフェンリルの王となることが約束される。
『…。』
『どうした?
少し顔が青いぞ。』
これはどのように説明すればいいのでしょうか。
あまりにも重い話です。
それに運命って、一体何なのでしょうか。
しかも乗り越えるということは生半可なことではないでしょう。
私にとってはあまりにも大きな話過ぎます。
『おいおい、隠すことはないだろ?』
『えっと、驚かないでください。』
『おうよ。』
『フェンリルには運命があるらしく、その運命を背負っているようです。』
『…、お師匠さんはフェンリルだったのか?』
『はい。』
『そうか。
ならば珍しいことではない。
ただ、そのお師匠さんはかなり焦っていたはずだ。
死に瀕しているとかな。』
『死に瀕していました。』
『だろうな。
俺の師匠も運命を背負っておられた。
ショウスイの師匠と同じような状況だったらしい。
一定の条件を満たせばその運命を別の種族に譲渡できるというものだ。
しかし、これは最終手段だ。
相手の運命を大きく変えてしまう。
良くも悪くもな。
あまりしないことではある。』
『そうですか。
私だけではなかったのですね。
その運命を乗り越えるとフェンリルの王となるようです。』
『…、多種族の者が王になるだと?
そんなことは聞いたことがないぞ。』
あれ、こちらは聞いたことがないのですか。
『まあ、いいさ。
これから一緒に行くんだ。
俺もついていくぜ。』
『いいんですか?』
『俺だって役目が終われば暇だしな。
同族の中にももう入れんほどに強くなった。
だからもう1人で生きていくか別の誰かと生きていくしかない。
ショウスイならば大丈夫だ。』
そういわれると少し照れくさいです。
でも、嬉しいですね。
そのように思ってくれているのであれば。
『では、決まりましたね。』
『おう。
このダンジョンを出るぞ。』