第32話
見張りをしていましたが全く魔物の気配がしません。
何もいないようです。
あの火山があったからでしょうかね。
それでもかなりの魔物が死んでいると仮定されます。
ボスは信じられないほどの強さを持っていることになります。
まあ、遭遇しないことにはわかりません。
寝ぼけた顔でカルロが出てきます。
すでに夕方ですが、少しだけでも寝たいですね。
『寝ぼけているところすみませんが、寝てもいいですか?』
『すまんな。
少し傷が深かったから思ったよりも熟睡していたようだ。
もちろん、大丈夫だぞ。』
私も少しだけ仮眠を取ります。
夜になれば私が見張りをしなくてはいけませんからね。
少し経ちました。
…、遠くの方が少し明るいですね。
何かあったのでしょうか。
あの明かりは火ですか。
火事が起きているようですね。
『あの火事は?』
『起きたか。
少し前に火山が再度噴火した時に火が上がったようだ。
しかし、こうも広範囲が燃えるとなると気が抜けないな。』
何かが動いているような気配があります。
とても大きな魔物のようですが。
ゆっくりとこっちに来ているように見えます。
『何かが動いているのか?』
すでにカルロは目が見えていませんね。
どうにかしたいのですが、いざとなれば運ばなくてはなりません。
『すごく大きな魔物がこっちに向かってきます。
しかし、まだ肉眼では見える位置に居ません。』
『どんな感じの…。』
カルロも魔物の気配を感じたのでしょう。
少しの間黙っていました。
『ショウスイ、逃げるぞ。』
『え?』
『あの魔物はおそらくドラゴンだ。
出るのではないかと思っていたが、本当に出るとは。
今は俺の目が効かん。
この状態で攻撃されたら大変なことになる。
おそらくショウスイが俺の守りをしなくてはいけなくなる。
個々は逃げて隠れた方がいい。』
私の背中に素早く乗ったカルロが言いました。
この状態では倍化のスキルは使わないほうがいいでしょう。
私はドラゴンと思われる魔物から反対方向に駆け出しました。
それを察知した魔物は私たちの方向へ進路を変えます。
『これは不味いな。
気配を辿ることができるのか。
俺とショウスイがいるのが原因か?』
『どういうことです?』
『今の俺たちは以前よりだいぶ強くなったろ?
それこそそこら辺の魔物には負けないくらいに。』
『そうですね。』
『その魔物はダンジョン内でかなり目立つだろ。
ボスと戦うことができる程度に強いのだから。』
そうです。
一緒にいたのでわかりませんでしたが、その通りです。
強い魔物がいればそれだけで居場所が分かる場合もあります。
そのことにどうして気が付かなかったのでしょうか。
『とりあえず、逃げまくれ。』
私は速度を上げます。
どうしても魔物は私たちを探しながら来ているので少し遅れます。
かなり離れたところで私たちは一息つきました。
『ん、なんかここは少し雰囲気が違うぞ。』
すぐに鑑定します。
【 セーフエリア 】 ここにいる間は新しい魔物に襲われない。
『セーフエリアです。
奇跡ですね。』
『よし。』
カルロがその場で踊っています。
カルロがこんなに喜んでいるのは初めてみるかもしれません。
それほどまでに休んでいませんでしたからね。
魔物の気配もないのでセーフエリアに入ってくることもないでしょう。
『とりあえず、今日は寝よう。
家を作ってくれよ。』
ああ、そうでしたね。
すっかりと忘れていました。
家を作り、皮を引いて、木を集めてくるともうかなり遅くなっていました。
すでにカルロは寝ています。
目が見えないので手伝いもできないですからね。
明日頑張ってくれるそうです。
私も疲れたので寝ます。
久々にゆっくりとできそうです。