第30話
朝になって、カルロが起きてきます。
『よく寝たぜ。』
『おはようございます。』
『ああ、おはよう。』
『さ、ご飯にしますか?』
『…、ああ、そうするか。』
カルロは私の方を見ています。
どうかしたのでしょうか。
マウンテンスタグの肉を出します。
カルロは肉の匂いを嗅ぎながら食べます。
『この肉うまいな。
何の肉だ?』
『マウンテンスタグという鹿の魔物です。
大して強くはなかったのですが、数が多くて4体ほど倒しました。』
『そうか…。
うまいな、この肉。
草食動物は群れるものだからな。
どうしても戦いは群れになる。
気にすんな。』
そういう問題ではないと思うのですが。
草食動物が群れるのは置いても私の強さの説明がつきません。
どのようにしてここまでの力を手に入れたのでしょうか。
普通の進化とは違うのでしょうかね。
そういえばカルロも倍化がありましたね。
どうなのでしょうか。
『そういえば、カルロも倍化のスキルがありましたね。』
『ああ、あったな。
ングング、試していなかったな。
どうしても後回しになってしまっていたからな。
お前も強くなったと言っていたからやってみるか。
だけど、肉を食ってお前が仮眠を取ってからだ。
まずはこのダンジョンを攻略が先だから。』
それはその通りです。
ダンジョンの攻略のために仲間となったのですから。
これからもともに行動しようと思ってはいますけどね。
『食べましょうかって、だいぶ食べていますね。』
『お前が思ったよりも遅かったからな。』
そうかもしれません。
考え事をしていましたから。
ただ、大事なことですよ。
自分の体のことですからね。
強くなろうとも弱くなろうとも重要です。
『しかし、美味しいですね。』
『ああ、もしかしたら俺たちも肉食になっているのかもな。』
『私はぎりぎり肉食だったかと思いますけど。』
『言ってもそこまで肉を食べていないだろう。
肉を食べていれば生肉で普通は食べるぞ。
焼くなんてことは浮かんでこない。』
肉を食べるにも習慣があるということですかね。
私は雑食です。
というか雑食になりました。
カルロも雑食です。
存分に食べて私は皮を回収しました。
『では、やってみるか。』
『お願いします。』
【 名 前 】 カルロ(倍化)
【 年 齢 】 50
【 職 業 】 カーバンクル
【 レベル 】 20
【 体 力 】 3000/3000(+1000)
【 魔 力 】 7500/7500
【 攻撃力 】 1500(+600)
【 防御力 】 1500(+600)
【 俊敏性 】 7000(+1000)
【 スキル 】 俊足LV.2 全魔法LV.3 倍化
【固有スキル】 最強種進化
【 加 護 】 ジャブタルの加護
【 称 号 】スピードスター
随分と強くなりましたね。
ただ、私ほどではないようです。
【 名 前 】 ショウスイ
【 年 齢 】 3
【 職 業 】 異世界に紛れ込んだ動物
【 レベル 】 10
【 体 力 】 8500/8500
【 魔 力 】 8500/8500
【 攻撃力 】 2250
【 防御力 】 1850
【 俊敏性 】 4100
【 スキル 】 幻影LV.2 鑑定LV.2 アイテムボックス(最大LV) 全魔法LV.2 倍化
【固有スキル】 最強種進化
【 加 護 】 なし
【 称 号 】フェンリルの意志を継ぎし者
俊敏性が少し弱いくらいですか。
倍化の効果は大きいですね。
それだとずっと倍化していると何かあるのでしょうか。
『ふむ、少し体が大きくなったな。
ショウスイと同じくらいになっているのか。
少しは近接ができそうな体だな。』
私たちは近接攻撃の手段がありませんでしたが、これで何とかなるでしょう。
『ショウスイはどの程度だったか?』
私はカルロから離れて倍化を使います。
『おお、でかいな。
これならば強い魔物が出てきたとしても勝てるかもしれん。
ただ、ずっとこの状態で戦うことはできないな。』
『どうしてですか?』
『感じないか?
徐々に体力が流れていくのを。』
確かに疲れやすくはなっているかもしれません。
しかし、それは今だけ…、そうですね。
体力がどんどん減ってきているのです。
『緊急時や魔物を倒す時以外は倍化で過ごしている大変なことになる。
よく覚えておかないとな。
あとは継続時間か。
どの程度で体力が尽きるかということを知っておかないと。
ただ、これだけは試すことができないからな。
生死に関わることになる。』
ダンジョンでは危険ですからね。
それこそセーフエリアがあればいいのですがありません。
『とりあえず、ショウスイは寝ろ。
まだ寝てないだろ。』
『そうでした。』
『話はそれからだ。』
再度皮を敷きました。
目を瞑ります。
ふと目が覚めると昼くらいになっています。
最近は本当にすぐ寝ることができるようになりました。
毎日すっきりですね。
これで充分寝ています。
『起きたか。
何も来なかったが少し妙な感じだ。』
『妙な感じ?』
『来れば分かる。』
何か音がしますが、それはいつものことです。
何がおかしいのか見当もつきません。
『木の上に登ってみたのだが、遠くの方で火山が爆発しているようなのだ。
不思議なことに森の魔物たちはおびえていない。
ここがダンジョンとしてもかなり異常だ。
魔物も危険を感じ取るからな。
ダンジョンの中でも当てはまる。』
そうなのですか。
魔物が動く気配は全くありません。
そんなに大変なことだとは個人的には思えません。
遠くで起こっていることがすぐそこで起こることはそんなにないのです。
『あの噴火がどの程度か知らんが、草食動物も逃げていない。
そんなことはないはず。』
怖がっていないということはコントロールできているというのも考えられます。
しかし、コントロールできているのであればもっと大変です。
それだけの力を持った魔物がいるということです。
もしそうであれば非常に恐ろしい。
『カルロ、この火山の噴火がコントロールできているとしたら。』
『…、恐ろしいこと言うが確かに考えられる。
もし、そうであれば簡単にはこのダンジョンを攻略できんぞ。』
その通りなのです。
このダンジョンはボスを倒さなければ結界が解除されるはずです。
そのボスを倒すことができないかもしれません。
『しかし、ここに居ても意味がない。
まずは進むぞ。
セーフエリアがあれば助かるのだけどな。』