第3話
雷の音で地面が抉れます。
私の魔法で雷が地面に落ちました。
簡単そうに彼女は雷を落としていましたが結構難しいです。
雷は天の上から落ちている印象でした。
魔法で雷を起こすとそこそこの高さから落ちるのですね。
かなり近い印象を受けます。
そして、目の前からも出るのですね。
どこからでも出てしまうのが魔法のようです。
魔法は気をつけなければ自分にも被害が出ます。
魔力が大きいからといって好き勝手に落としては大変なことになります。
今彼女から教えられているのは魔力の制御です。
魔力の制御を覚えることができれば、大小の魔法を使いこなすことができます。
使いこなせなければ自分が死ぬことになるでしょう。
『大きい魔法なんてな、魔力を糞ほど込めれば勝手になるんだ。
問題はその魔力を込めるにしてもどのように暴発しないようにするか。
その時にも魔力の制御は必要になる。
基礎にして一番重要視しなければならないのがこの魔力の制御だ。
何百年と積み重ねてきた私でも難しいのだから奥が深いぞ。』
彼女の話では制御を鍛えるやり方もいろいろとあるらしいです。
一番良いのは体中の魔力を動かす魔力循環を行えばよいようです。
魔力というのは血液のように絶えず動いているため魔力を一定程度の動かすのは難しいです。
彼女は体中の魔力循環を行っていましたが私のような未熟者は一部の魔力循環しかできません。
しかもその魔力循環もうまくできていないような気がします。
魔力の量も少ないのであまり無理はできませんしね。
実際に彼女もそれなりに強くなってから行ってきたようです。
それでも彼女は毎日魔力循環を行っているということ。
『この魔力循環というのは難しいですね。』
『そうだ。私もまだ完璧にできていないからな。』
『え、できていたように感じましたが。』
『君の基準ではそうかもしれんな。
だがな、一定程度の魔力を流すことと一定の速度を保つことの両方は難しい。
昔に比べて魔力が増えているせいで体に流す魔力も制限されるからな。
魔力の制御も合わせると3つになる。
同時に3つを制御するのは難しいぞ。』
魔力が大きいというのも結構大変なことなのでしょうね。
私はまだまだですから、彼女のように思うのはまだ先ですか。
『魔力循環についてはここまでだ。
時間をだいぶ使っているから、他の系統の魔法に移るぞ。』
そこから、火、水、土、風、闇の魔法を教えてもらいました。
派生型として氷、幻惑、爆発、砂を覚えました。
時間的にこれが限界の様です。
しかし、ここまでくれば自分の得意な魔法を見つける方がいいそうです。
『魔法を使っていれば自然に分かってくる。
後は制度を高めていく。
それだけだ。
…、どうやら私の命もここまでのようだな。
貴様に魔法の技術を教えたことで役目を終えたようだ。
1日というわけではなかったのだな。』
先程までの痛々しい血の跡は全て消えています。
彼女の体は神々しい光に包まれて、徐々に薄くなっていきます。
すでに後ろの草原が見えています。
死とはまた違うようです。
先ほどの生き物、いや魔物は死体が残っていましたから。
これも彼女の運命というものと関係があるのかもしれません。
『ありがとうございました。
おかけでこの世界でも生きて行けそうです。』
『私が教えなくても君はおそらく生きていけたぞ。
ただ、魔力や魔法に関しては基礎を教えてもらう方が早く覚える。
その点では私が役に立てたか。
いろいろ教えたが、私の教えを必ずしも守る必要はない。
自分で考えてやっていけばいいのさ。
私だってそうしてきた。』
『はい。いろいろやっていきます。』
『君の人生はかなり厳しいものになる。
どうしてもフェンリルの意志を受け継ぐのはそういうことだ。
魔物もそうだが、人間も油断はできない。
君の世界の人間は優しい印象かも知らんが、中には悪い奴もいる。
そのことを忘れるなよ。』
『はい。』
『じゃあな。』
彼女は僅かに光を残して消えました。
彼女の顔に苦痛はありませんでした。
思い残すことなく、あの世に行っていればいいなと思います。