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第七異能学園の帰還者  作者: 名無しの権兵衛


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あとは任せろり!

 同時刻、イギリスの首都ロンドンではアーサーを始めとした円卓の騎士が不審者に襲われ、壊滅的な被害を受けていた。


「ランスロット、ガウェイン!」

「他人の心配をしている余裕があるのか? お前に」

「くっ!!!」


 円卓の騎士総出で不審者の襲撃に備えていたが意味を成さず、アーサー以外の騎士はすでに戦闘不能に陥っている。

 幸いな事に不審者はアーサーのみを標的と定めている為、他の騎士に犠牲者はおらず、全員が意識を失っているだけだ。


「特異な異能スキルだが所詮は戦闘力2000の雑魚に過ぎないか」

「さっきからごちゃごちゃと!」

「お喋りは嫌いだったか? 気分を悪くさせたなら詫びよう」

「ぐあっ!」


 聖剣を振るい、不審者に迫るも簡単にあしらわれてしまい、無様に転がるアーサー。その姿は傷だらけで、もう満足に戦う事も出来ないだろう。

 それでもアーサーは聖剣を杖代わりにして立ち上がり、不審者に向かって聖剣を構えた。


「僕はまだやれるぞ……!」

「気概だけは素晴らしい! だが、それだけだ」


 アーサーの強い意思が籠った目を見て不審者は彼を称えるも、すぐに興味をなくしたように腕を振るい、アーサーをなぎ倒した。


「うわああああっ!」

「さて、そろそろ終わりにしよう」


 もう十分に遊んだ不審者は仰向けに倒れ、首だけを起こして自分を睨みつけてくるアーサーに向かってゆっくりと歩きだす。

 つまらない仕事であったと欠伸をしながら不審者は止めの一撃を刺そうとした時、アーサーは一真から貰っていたお守りを握り締めた。


「む! 新手か?」


 アーサーと不審者の間に光と共に姿を見せるのは蒼穹の騎士。

 不審者とアーサーの間に悠然と佇んでいる。

 新たな戦力に不審者は戦闘力を計測し、脅威かどうかを調べた。


「……5? 異能スキルは置換? ふざけてるのか?」


 計測機に表示された戦闘力は5、そして所持している異能は置換。

 全くもって論外でしかない。

 突然、現れたから空間系の異能を所持している事は分かっているが、よりにもよって置換だ。

 ただ物体と物体の位置を置き換えるだけの異能であり、はっきり言って戦闘には向いていない。

 つまるところ、助っ人に来たのは非戦闘員であり、アーサーを逃がす為の要員である事を不審者は理解した。


「なるほど。逃げる為の算段か……。ならば、戦闘力5のゴミでも理解出来る」


 そう言って頷いていた瞬間、頬に固いものが当たるのを感じて不審者は近くの建物にめり込んだ。


「は、へ……?」


 致命傷ではないが重傷だ。

 たったの一撃で不審者は戦闘を続行する事が出来ない体になっている。

 めり込んでしまった体を建物から引き抜こうにも、手足に全く力が入らず、蒼穹の騎士に首を掴まれるまで動けなかった。


「来てくれてありがとう。危ないところだったよ」


 アーサーの傷を治し、不審者の首根っこを掴んだままサムズアップする蒼穹の騎士であった。


 場所は変わり、エジプトの首都では太陽王が不審者と激闘を繰り広げていた。

 不審者の襲撃にあった太陽王は即座に市民の避難を誘導し、街を焦土にする勢いで対峙している。


「炎の巨人よ! 我が敵を打ち砕け!!!」


 とてつもない温度で形成された炎の巨人は周囲の建物を溶かし、街中に建言した。

 炎の巨人が拳を握って大きく振りかぶると、不審者目掛けて振り下ろされる。

 不審者目掛けて振り下ろされた拳は地面に着弾すると、大爆発を起こし、周囲一帯を吹き飛ばした。


「……無傷か」

「素晴らしい錬磨だ。炎の異能をここまで極めるとは!」


 爆心地の中心にいた不審者は太陽王を絶賛するように両手を広げている。

 本当に褒めているのは分かるが太陽王からすれば嫌味にしか聞こえない。

 炎の巨人による攻撃が一切通じず、不審者は無傷で立っているのだから。


「我らが神に奉る! 太陽神ラーよ! その威光をもって我らが敵を撃ち抜き給え!」


 凝縮された炎の球が太陽王の頭上に現れると、数千本もの熱線が放たれる。

 まるで熱線が意思を持っているかのように空中で軌道を変え、不審者に向かって雨のように降り注ぐ。

 建物に風穴を開けている熱線は直撃すれば無事では済まないだろう。

 逃げ場など一切ない全方向から一斉砲撃に不審者は包まれた。


「……これでもダメか」


 直撃したはずの熱線はローブの裾すら貫く事が出来なかった。

 とてつもない強度で作られているのか、もしくは不審者の能力か、どちらかは不明だが少なくとも一つだけ分かる。

 太陽王の勝ち目が薄いという事だけは確かだろう。


「我らが神々よ。我らに加護を……!」


 空に救いを求めるように太陽王は両手を掲げると、不審者を炎の竜巻が包み込み、鳥の形をした炎が竜巻に向かって真っ逆さまに落ちていく。

 再びの大爆発。轟音が耳をつんざき、大気を揺らす。

 映画の爆発シーンにも負けない大迫力の光景を太陽王は静かに見つめていた。


「ッ……」

「どうした? もっと見せてくれ」


 黒煙が晴れ、焼け野原の中心部には汚れ一つない真っ白なローブに包まれている不審者が太陽王へ早く次の技を見せてくれと、せがむように両手を広げて立っていた。


「腹を括らなければならないか……」


 パンと両手を合わせると太陽王は戒めとして封印していた禁じ手を使う。

 この技を使えば周囲一帯が焼け野原になるどころか地上から消え失せてしまうかもしれない。

 だからこそ、炎に指向性を持たせる為に太陽王は自身の背後に炎で象られた神を顕現させる。


「アテムよ。彼の者を包み給え」

「ぬっ!?」


 太陽王が顕現させた神は両手を大きく広げると不審者を慈しむように優しく手の中に包み込んだ。

 並大抵の人物ならばこの時点で焼け死んでいるが不審者は火傷の一つも負っていない。


「何をする気だ?」


 このまま蒸し焼きにでもするつもりだろうかと考える不審者。

 しかし、自分がどれほど頑強かはすでに証明している。

 であれば、蒸し焼きではなく、もっと別の何かだろう。

 果たして、それが何なのか。分からないが楽しみであると不審者は不敵に笑う。


「人類が作った最高温度をとくと味わうがいい! 創世神話ビッグ・バン!!!」


 アテムの掌の中で桁違いの炎が生まれる。

 人類が作ったとされる最高温度5兆度という想像すら出来ない炎が不審者を包み込んだ。

 どのような生物であろうとも5兆度の炎に包まれれば無事では済まないだろう。

 太陽王は極限の集中力で炎を維持し、不審者が燃え尽きるまでその手を決して離さなかった。


「実に素晴らしい! まさか、ここまでの錬磨だとは思いもしなかった!」


 無常にも太陽王の禁じ手は破られ、アテムは霧散し、不審者が全くの無傷で地上に降り立った。


「……化け物め」


 大量の冷や汗を流し、不審者を睨みつける太陽王は奥歯を噛み締めている。


「おい! もう他にはないのか!?」

「…………」

「……そうか。もうないのか」


 太陽王の沈黙で全てを察した不審者は残念そうに肩を落とす。

 もう少しくらいは楽しみたかったが、これにてお終い。

 この星の生物に圧倒的な戦力差を知らしめる為に不審者は太陽王を殺す事に決めた。


「残念だ。お前ほどの戦士を殺す事になるなんて」

「確かに私ではお前に勝てないという事が分かった。しかし、まだ打つ手は残されている」

「ほう? まだ力を隠していたのか? であれば、早く見せてくれ!」

「期待させて申し訳ないがこれは私の力ではなくてね」


 そう言って一真印のお守りを握り締めると、空から光が落ちてくる。

 その光が消えると、そこには黄金の鎧に包まれた騎士が両腕を組んで立っていた。


「なんだ、これは?」


 太陽王の異能が炎だけという事はすでに知っている。

 計測器で戦闘力と異能を計り終えいているからだ。

 しかし、目の前に現れた黄金の騎士は炎で出来ているようには見えない。

 不審者は先程の太陽王の言葉を思い出し、黄金の騎士に計測器を向ける。

 すると、計測器に表示された数値は5。異能は置換。

 バカにしているとしか思えない数値に不審者は腹を立てた。


「ふざけているのか、お前は! 期待させて申し訳ない? これのどこが期待出来る戦士だと言うのだ!!!」


 太陽王に向かって怒鳴り声を上げている不審者に向かって黄金の騎士は不良キックを決める。

 突然、腹部に衝撃を感じ、大量の息を吐いて不審者は吹っ飛んでいった。


「かは……! な、何が起きたのだ?」


 強烈な痛みを感じている腹部を押さえながら不審者は何が起こったのかと混乱している。

 黄金の騎士が何かをしたのは見当がつくが、何をされたかまでは分からない。

 そもそも戦闘力5の雑魚に傷つけられたという事実が一番理解できていないのだ。


「馬鹿な……。まさか、そんなはず……」


 戦闘力5の雑魚に自分はやられたのかと脳裏をよぎるが、そんなはずはないと不審者は首を振って自分の考えを否定した。

 恐らく、油断していたところを置換の異能で飛ばされたのだろうと都合のいい解釈をして倒れていた不審者は起き上がる。


「そうだ……。そうに違いない! 戦闘力5のゴミにやられるはずが!」


 そう口にした瞬間、目の前に黄金の騎士が突如として姿を現し、脳天に拳骨を落とされ、戦闘力5に負けたという現実を知らないまま不審者は意識を失うのであった。


「もう終わったのか?」


 しばらくすると、太陽王が様子を見にやってきた。

 黄金の騎士が不審者を縛り上げている所を見て片付いた事を理解する。


「君がいてくれて本当に良かったよ。今度、改めてお礼をさせてくれ」


 相変わらず喋れないので黄金の騎士はサムズアップするだけだった。

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