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第七異能学園の帰還者  作者: 名無しの権兵衛


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女子の連絡先GET!

「ごめん。お待たせ!」

「あ、香織ちゃん!」

「やあ、二日ぶりだね、夏目さん」


 急いで来たのか、少し息が乱れている香織。そんなに急いでどうしたんだろうかと、二人は不思議そうに首を傾げた。


「ねえ、香織ちゃん。そんなに慌ててどうしたの?」

「えっと、実は皐月君に言いたい事があって」

「俺に言いたい事? なにかあったっけ?」


 何の思い当たりもない一真は、腕を組んで頭を捻る。


「ゴホン。なんと私! 身体強化の倍率が上がってました!」

『おお~~~ッ!』


 呼吸を整えた香織は、どんと自身の胸を叩いて、誇らしげに身体強化の倍率が上がった事を、二人に報告する。

 それを聞いた二人は、驚きの声を上げながらも、香織が成長したことを称えるように拍手を送った。


「すごいね、香織ちゃん! いくらになったの?」

「3.5倍から4.5倍になったの!」

「ええ~ッ!? それホントに凄くない!?」

「うん。試験官もビックリしてたわ。こんなことは滅多にないって」


 身体強化は少しずつ上がっていく成長するので、大体が0.1倍ずつだ。だから、香織の成長率は驚くべきものだろう。


「え~っと、それで、夏目さん。なんで、俺なんかに話が?」

「そのことなんだけどね、私がこんなにも成長できたのは皐月君のおかげだと思うの」

「え? そんなことはないと思うけど」

「ううん、あるよ。だって、先週の訓練で最後に私が勝てたのは、皐月君のおかげだもん。皐月君が私に教えてくれたんだよ」


 なんと言えばいいか、わからない一真は、とりあえず曖昧な笑みを浮かべるのであった。


「それでね、皐月君にお礼がしたいの」

「え、別にいいよ。それは夏目さんが頑張った成果で、俺はお礼されるようなことは何もしてないよ」

「さっきも言ったでしょ? 皐月君のおかげだって。だから、私がどうしてもお礼をしたいの。ダメ?」

「え、えー、別にダメってわけじゃ……、あっ!」


 一真としては、本当に何もしていないのでお礼など必要はなかった。だから、どうにか香織を納得させようとしたが、ふと、あることを思い出した。それを思い出した一真は、香織に確認を取る。


「ねえ、お礼をしてくれるって話だったよね?」

「え、うん。あっ、でも変なのはダメだよ!」


 急に一真が乗り気になったので、香織も警戒してか釘を刺す。が、香織の警戒は無意味なものとなる。


「実はさ――」


 いざ、一真が香織に話を切り出そうとした時、偶然近くを通っていた幸助が三人の姿を捉える。一真に対して戦闘科の女子が二人。しかも、なにやら親し気な様子。幸助はそれを見た瞬間、脳裏に衝撃が走った。

 一真は、自分を出し抜いて女子と仲良くなっている。しかも、遠目から見ても二人はかなり可愛い。これは、由々しき事態であると判断した幸助は、過去最高のスタートを切った。


「かぁぁぁあああずまぁぁぁあああああああ!!!」


 生涯最高となる走りを見せる幸助は、そのままの勢いで一真の名前を叫びながら、大きく手を振りかぶった。


「へ?」


 聞き慣れた声に振り向く一真は、自分の方へ真っ直ぐに向かってくる幸助を目にする。これが、一真に対して幸助が殺意を向けていたら、一真はすぐさま気が付いただろう。

 しかし、幸助は別に一真を殺す気などない。ただ、一人だけ女子と話しているのが許せないという、しょうもない理由だ。それだけで、幸助は走り出し、一真の頬を大きく振りかぶった拳でぶち抜いたのだ。


「ぐへえっ!?」


 突然の奇襲に抵抗することなく簡単に吹き飛ぶ一真は無様な声を上げて倒れる。そして、一真を殴り飛ばした幸助は、大きく肩を上下させて息を切らしていた。


 突然の出来事に香織と恵は目を丸くしていた。すぐに一真を抱き起こしに行けばいいのか、それとも一真を殴り飛ばした幸助に事情を聞けばいいのか分からず、アタフタとしている。


 そんな二人を差し置いて、幸助はふうと一息吐くと、一真の方へゆっくり向かう。しかし、その足取りは重たいもので、ズンズンとしていた。

 そして、倒れて頬を擦っていた一真の胸倉を掴んで持ち上げると、カッと目を見開き、大きく口を開いて声を張り上げた。


「俺達、童貞同盟を忘れたか!」

「いや、なんのこと?」


 さっぱり分からない一真は、幸助の言葉を聞き返す。理解していない一真に、幸助は顔を近づけて小さく耳打ちをする。


「今、咄嗟に思いついただけなんだ。それよりも、殴ってすまん。でも、お前が女子と仲良さそうに話してるのが、どうしても許せなんだ」

「うん、まあ、素直なのはいいことだけど、限度ってもんがあるからね?」


 素直に謝罪をしたことは認めるが、やはり理由わけも分からずに殴られた一真はいい気分ではなかった。


「ほんと、すまん。で、さ。あの二人とはどういう関係なんだ?」

「ん? あー、先週の実習で同じチームだった人」

「そうなのか。しかし、随分と親しげだな」

「まあ、そこは俺の人徳ってやつ?」

「それはない」

「なんでだよ!」


 一真のボケをばっさりと切り捨てる幸助。二人がそうしていると、視線を感じたので振り向いてみると、そこには香織と恵が説明を要求するといった様子で睨み付けていた。

 これは、すぐに説明をしなければ不味いと一真は、幸助から離れて二人の元へ向かう。


 ジト目で見てくる二人に一真は、一瞬気圧されるがここで引いてはダメだと、前に出る。


「えっと、話の途中でごめん。友達がちょっと勘違いしてたらしくて」

「友達? 思いっきり殴られたのに?」

「まあ、悪気はなかったみたいだから。それよりも、さっきの続きなんだけど、夏目さんって座学の成績はいい方?」


 香織が幸助に対してマイナスな印象を抱いてしまう前に、一真は話題を変えた。先程の続きに戻して、一真は香織に成績を聞く。


「どうして、そんなこと聞くの?」

「実はさ、俺、次の期末テストがやばいの。今のままだと夏休みに補習まっしぐらなんだ。それで、友達に勉強を教えてもらおうと頼んでる所なんだけど、夏目さんはどうかなって」

「それで、成績のこと聞いたのね。う~ん、私、座学の方は普通くらいなんだよね。テスト順位は大体真ん中あたりなの」

「そうなんだ。それなら、他に誰か心当たりない?」

「あるけど……、お礼はそれでいいの?」

「うん。夏休みを補習で潰したくないからね」

「わかったわ。ちょっと、考えてみる」


 二人の会話を横で聞いていた恵が、心当たりがあるようで一真に問いかける。


「ねえねえ、皐月君。誰でもいいの?」

「木崎さん達の知り合いで、支援科に偏見を持ってない人なら誰でもいいかな」

「わかった。香織ちゃん、楓ちゃんとかどう?」

「え? 槇村さん? 確かに彼女なら頭もいいけど、聞いてもらえるかしら?」

「楓ちゃんは、皐月君のこと割と気に入ってたから、問題ないと思うよ」

「そう? それじゃあ、頼んでみましょうか」

「え~っと、二人に任せても大丈夫かな?」


 目の前で香織と恵が相談するのを見て、一真は自身は役に立てないと思い、二人に任せようとする。


「ええ、任せて。それじゃ、決まったら教えるから、連絡先を教えてくれるかしら?」

「あ、ついでに私とも連絡先交換しておこうよ!」

「え! いいの!?」


 まさかの提案に一真は驚いてしまう。戦闘科の女子二人から、連絡先を貰えるとは思いもしなかった一真は、戸惑っていた。


「だって、携帯に連絡した方がいいでしょ? わざわざ、支援科のクラスにまで行くのは面倒だし」

「うんうん。それに皐月君になら、連絡先を教えてもいいかなって思うしね」

「おお……!」


 二人からの信頼に、一真は思わず感動に震えてしまう。

 その後、すぐに二人と連絡先を交換した一真は、二人と別れて背後の方で固まっている幸助の下へ向かう。


「お~い、幸助~」


 魂が抜けたように固まっている幸助に、手を振ったりして呼び戻そうとしている一真。しかし、一向に反応がないので一真は仕返しの意味を込めて、幸助の頬を殴った。


「いてっ!?」

「やっと気がついたか」

「は! お前! さっき女子と連絡先を交換してただろ! ずるいぞ!」

「いや、これは正当な報酬なんだよ」

「正当な報酬ってなんだよ! どうやったら、あんな可愛い子の連絡先を貰えるんだ!?」

「う~ん…………。まずは、実習の訓練を頑張る所からかな」

「はあ? なんだよ、それ! もっと詳しく教えろよ!」


 一真の説明に納得のいかない幸助は、一真の肩を掴んで何度も揺するが、一真はそれ以上答えることはなかった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 話してる相手が急に殴り飛ばされても ちょっと印象悪くなるくらいで済むのか… この学校めちゃくちゃ治安悪いのでは
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