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ティオの詮索を必死でかわしている最中、ようやく待望のランチが運ばれてきた。イリアが持った銀のトレーの上で、オムレツの黄色が鮮明に輝く。
「どうぞ!」
丁寧に盛り付けられたその料理は、確かに食欲がそそられる逸品だった。ドレスのように広がった玉子に、クリーム色と茶褐色のソース。上に置かれた微かな緑が、「早く手を伸ばしてほしい」と訴えかけているみたいだ。カゴに入ったスティック状の主食も、焼き立ての香りを漂わせていた。
「ありがとうございます!」
「ごゆっくりー!」
イリアの一言を見送った後、ティオは早速と言わんばかりにスプーンに手を掛けた。その先で黄色を崩し、中にゴロゴロと入った具を覗き込む。
「美味しそう!!」
ウルカはゆっくりとオムレツを観察し、嗅覚を研ぎ澄ませた。温かな玉子のにおいと、優しいバターの香りがする。
スプーンで真ん中をほぐす。すると、中に入った具材のにおいがした。先ほどの村で作られたものか、はたまたどこかで買い付けたものか。いずれにしろ、新鮮な野菜であることには変わりなかった。
「ウルカ、食べよう!」
そう言いながら、ティオは両手の指を複雑な形に組み始めた。これは、彼が食事の前に決まっておこなう、宗教的な儀式。かつて一族にいたときの習慣が、今も抜けないらしい。
「……」
ウルカは無言でスプーンを持ち上げ、その上に乗った具材のにおいを嗅いだ。彼がそうしている間に、ティオはブツブツと古代語をつぶやき終え、いざスプーンを口に運ぼうとしていた。




