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異世界「ざまぁ」代行業者  作者: 田中なも
5-追放、覚醒、そして誘拐
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12

 先ほどの女性が言った通り、村からひたすら真っ直ぐ歩いたところに、例のレストランはあった。

「あそこだな」

 ウルカはポツンと佇むその建物に近付き、辺りの様子を見回した。かなり大きな、二階建てのレストラン。こじゃれたデザインの窓が、店内に光を取り込んでいる。

 裏側に回り込むと、そこはテラス席になっていた。大木が何本か植えられているが、きっと夏には緑を茂らすのだろう。ガラス張りの出入り口は、隙間がほんの少しだけ空いている。

「……誰も、いないのかな?」

 店内の様子を覗き込んだティオが、小さく首をかしげた。裏から見た感じ、店内に客の気配はない。立地のせいか、はたまたターゲット層のせいだろうか。

「とりあえず、中に入るぞ」

 腰を屈めていたウルカは、そう言いながら立ち上がる。ゆっくりと外周を確かめながら、二人は再び入り口へと回った。


「いらっしゃいませ!」

 装飾が美しい扉くぐると、赤いポニーテールの女性が爽やかな笑顔で出迎えてくれた。スラリとした体形に、シンプルな白いエプロン。その下の動きやすそうな格好を見るに、彼女があのイリアだろう。

「僕たち、近くの村の人から紹介されて来たんですー」

 ティオも負けず劣らずの笑顔。すでに、演技は始まっている。

「そうなんですか! ようこそ!」

 そう言いながら、彼女は二人を窓際の席へと案内した。日当たりの良い、いわゆる一等席だ。

「少々お待ちください。今、お水とメニューをお持ちしますから」

 イリアが去っていく姿を確認した途端、ティオは真面目な顔になってウルカの白い瞳を見つめてくる。

「この店、あれしか店員がいないのかな?」

「分からん。奥にいるのかもしれないな」

 戻ってくる赤いポニーテールの動きを見つめながら、ウルカは適当に答えた。茶色の表紙が机の上に置かれ、隣に透明な水が添えられる。

「わぁー! 選べるメニュー、多いですねー!」

 目の前のティオが嬉々とした声を上げているが、おそらくこれは本音だろう。

「おすすめの料理とかありますか?」

「オムレツとパンのセットが、一番人気ですね!」

 イリアの明るい声色を聞きながら、ウルカは紙に目を落とす。料理名の横に可愛らしいイラストが描かれているが、これは店員が描いたものなのだろうか。

「じゃあ僕、それにします!」

「俺も、そうさせてもらおう」

「はーい!」

 彼女は満面の笑みで返事をすると、そのまま奥へと消えていった。頭部の黒いリボンの裾が、風とともに右に折れる。

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