6
芸術祭も終わり、メレ国には大量の雪が降り落ちる。ウルカのアジトは地下にあるため、真冬の夜を過ごすのは、毎年中々に大変だ。当然、今年も例外ではなかった。
「ヴァニラ」
部屋の隅を陣取るヴァニラ。その角では、何本もの赤い花が炎を現出させている。ウルカが見極めて採取してきた、「ウラプア」という名の珍しい花だ。一見ただの花だが、ある特殊な反応を促すと、このような赤い炎を纏う。
「あまり近くにいると、火傷するぞ」
彼女は頑として動かず、じっと炎を見つめている。灰色の尻尾に引火してしまいそうだ。
「ヴァニラって、本当に寒がりだよね。パルフェに耐性付けてもらえなかったのかな?」
緑のソファに座るティオが、呆れたようにヴァニラを見遣る。薄手の長袖に、七分丈のズボン。まるで秋口のような格好だ。
「毎年思うが、おまえは寒くないのか? 極寒の地で育ったとは言え、限度はあるだろう?」
「まぁね。でもここら辺は、随分あったかい方だと思うよ」
「……そうか?」
ルラ国などの北国に比べれば、確かにこの地域は温かいのかもしれない。だがウルカには、この辺りも大分寒いように感じられる。かつての故郷の森が、南の方にあったからだろうか。
「じゃあ、そんな寒がりのために、僕がチョコレートドリンクを作ってあげるよ。昔、よく姉さんが作ってくれたんだ」
「気が利くな。なら頼む」
ヴァニラに目を向けると、大きな耳をぴこぴこと動かしている。食べ物・飲み物のことに関しては、彼女は非常に目ざとい。
「はーい。キッチン借りるよ」
上階のキッチンに比べれば簡素だが、一応地下にも調理場がある。元々ここもカフェとして使われていたようで、軽食や飲み物を作るには苦労しない造りとなっているのだ。
ウルカはティオの銀髪を見送りつつ、空いた緑のソファに座った。最近は依頼もほとんどなく、彼らは実に平穏な日々を過ごしていた。




