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周囲に他の人影がいないことを確認した後、ウルカは木の上から静かに飛び降りた。ゆっくりとフードを外し、血に染まった剣を持つカエナの元へと歩いて行く。
長い黒髪に真っ白な瞳。透き通った肌と、尖った耳。どことなく人間とは違う雰囲気を持った彼は、カエナの背後に立って「どうだ」と言った。外見からは想像できないような、かなり低い声だ。
「依頼された通りに動いたが、気は済んだか」
その言葉に、カエナがくるりと振り返る。狂気に染まった表情は、黒い愉悦に浸っていた。
「ああ。十分、満足だ」
そう言うと、彼は懐から皮の袋を取り出した。中には金貨が五枚入っており、半年は不自由なく暮らせるほどの額だ。
「おまえのスキル『無効化』には、随分と世話になった。なんせあれがなきゃ、あいつを倒せなかったからな」
カエナから代金を受け取ったウルカは、その中身に軽く目を通した後、黒いローブのポケットにさっと仕舞い込んだ。
「後処理は俺たちがやっておく。おまえはこのまま立ち去れ」
「さすがは代行業者だ。最後の汚れ仕事までこなしてくれるんだな」
カエナの嬉しそうな声色に、ウルカはふっと笑みを浮かべた。
「金を払ってくれたやつが、俺たちにとっての『正義』だからな」
それは真意の読み取れない、裏の世界の言葉だった。