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異世界「ざまぁ」代行業者  作者: 田中なも
5-追放、覚醒、そして誘拐
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5

「憎くて憎くて仕方がない。そんな顔をしてるねぇ」

 ――オスカーは驚いて、ばっとドアの方を向いた。誰もいないが、確かに声が聞こえたような気がする。

「おいおい、おっさん。こっちだ、こっち!」

 一通りぐるっと部屋を見回した彼は、ようやく声の主が分かった。窓の外、豪華な縁の端。藤色の髪を持った吸血鬼が、そこに腰掛けていたのだ。

「……!?」

「そんなに驚くことないだろ。通りすがりの吸血鬼さ」

 オスカーが窓を開けると、吸血鬼はふわっと室内に飛び込んできた。咄嗟に警戒したものの、特に襲ってくる様子もない。

「……何なんだ、一体」

「おっさん、困ってるみたいだからさ。いい場所教えてやろうと思って」

「いい場所だと……?」

 オスカーが引きつったような顔をすると、吸血鬼は藍色の瞳でじっと見つめてきた。心中を探るような、鋭い目つきだ。

「妬ましい相手がいるんだろ? そいつに、復讐の一つでもしてみたいんだろ? だったらおれが、いい場所を教えてやる」

 ……オスカーの頭の中に、ジークの顔が描かれる。あれほど手を尽くしたのに、スキルを使いこなせなかった息子。苦渋の決断で追放した後に、あっけなくスキルを覚醒させた息子。高名な貴族の目に留まって、名を馳せた息子。その全てが浮かんでは消え、彼の顔を醜く歪めた。

「紹介料は金貨一枚。どうだ? いい話だろ?」

 吸血鬼の甘い誘惑。これが、最後のチャンスだ。

 

 ――オスカーはガタッと引き出しを開け、皮の袋を掴み取った。その中には、金貨が二十枚。もしもの時の、非常用だ。

「連れて行け」

 右手の指で金貨を一枚取り出し、吸血鬼に手渡した。吸血鬼はニヤッと笑みを浮かべ、受け取った金貨を指で弾く。

「りょーかいっと」

 黄金のコインが、夜空で美しい軌道を描く。それが、復讐の合図だった。

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