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廊下を歩き切ったオスカーは、自室のドアを乱暴に開け、机の前に立った。大きな窓から夜を象徴する恒星の光が差し込み、彼の顔を青白く照らす。
「あれだけ手を掛けても成長しなかったジークが、追放した後に覚醒するだと……!? あり得ん!! 俺たちをおちょくっているのか!?」
かつて祖母が利用していた、メレ国の辺境の地。そこに飛ばされたジークが、まさかスキルを覚醒させて一躍有名になるなど、一体誰が予想していただろうか。本当ならば喜ばしいことだが、名を売りたいロール家からしたら、妬ましい以外の何物でもない。
仲間の貴族から聞いた話によると、ジークは祖母の地でレストランを開き、非常に美味な料理を振る舞っているらしい。その腕が、なんとあのオルアン家の目に留まり、近々料理人として雇われるのだそうだ。ジークがどうするつもりなのかは知らないが、オスカーたちは自分の息子を追放してしまったのだ。悪評が広まってしまう可能性すらある。
もちろん、その話を聞いてから、ロール家は何度もジークを連れ戻そうとした。手紙を出し、使いを送り、何度もなんども訴えかけた。……結果は見ての通り、全て失敗に終わったが。
「くそっ……、どうしたらいいんだ……!」
拳でドンッと机を叩くと、鈍い痛みが返ってくる。それが妙に虚しくて、オスカーはギリギリと歯軋りをした。




