2
「『調理』ですね」
……鑑定士の女性にそう言われたとき、オスカーは耳を疑った。ジークが所持しているスキルが、「調理」だというのだ。
「……は?? 『調理』??」
ステラも困惑して、盛大に首をかしげていた。その場に居合わせた長男たちも、理解不能といったような顔をしていたのを思い出す。
「『調理』って……。それはもうスキルではなく、技術の領域では!?」
オスカーは思わず女性に詰め寄ったが、彼女はすまし顔で「いえ、スキルです」と言い放った。この手のいざこざには、慣れている様子だった。
「私が責任を持って、しっかりと鑑定いたしました。紛れもなく、神から与えられたスキルです」
ステラの腕に抱えられた当事者は、何の文句も言わずにスヤスヤと眠っている。赤ん坊には分からない話だ。
「えーっと、ジークのスキルは、一体何なんですか?」
張り詰めた空気の中、長男が口を挟んだ。母親譲りの髪が、動きとともにサラサラと流れる。
「単語の通りです。調理ができます」
「でも、調理って、ほとんどの人ができますよね? 僕だって少しはできますし……。美味しい料理が作れるとか、そういう効果はないんですか?」
「私が見たところ、ないですね。純粋に、調理ができるというだけです」
長男と女性の会話を聞いて、オスカーは卒倒しそうになった。要するに、ジークは料理が作れるだけ。それが美味しいか不味いかは、全くの不明なのだ。
鑑定士の女性のことを疑いたい気持ちはあった。「もう一回、調べ直せ!」と言うこともできた。……しかし、彼女は正式な鑑定士だ。信仰団体であるプレから派遣された、一人前の鑑定士。間違いなど、あるはずなかった。
「神のご加護がありますように」
彼女は定型文を言い残すと、一礼して帰り支度を始めてしまう。オスカーはただただ放心して、幸せそうに眠るジークの顔を見つめた。




