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「そう言えば、ヴァニラはどうしてる? 相変わらず、元気?」
「ああ。食費は掛かるが、有能であることには変わりないな」
「そりゃそうさ。何たって、あたしの最高傑作だからね」
パルフェはうんうんと頷いて、煙草の端を咥えた。白い煙が、ふわっと辺りを漂っていく。
「……まぁ、失敗作であることには変わりないけど」
彼女の瞳はウルカを見つめているようで、どこか遠くを見通しているように思える。
「未だに、ヴァニラ以上のホムンクルスは作れないのか」
「亜人はほぼほぼ成功したようなもんなんだけどねぇ。ヴァニラは声が出ないけど、まぁあの程度なら誤差だろ?」
ひらひらと手を振りながら、彼女は言葉を続ける。
「でもねぇ、やっぱり人間となると難しい。亜人と似てるってのに、何が違うんだろうね?」
「知らん。自分の姿を鏡で見たらどうだ」
「見たみた! 何千回も見たよ」
ウルカは自称・「キニ国の天才」をじっと見つめる。天才には天才なりの悩みがあるのだ。
「会う度にヴァニラ、ヴァニラと言うが、おまえはヴァニラに会いたいのか? 会いたいのなら、今度連れて行くが」
「会いたいけどさぁ、ヴァニラはあたしのことなんて、覚えちゃいないよ。売り物の記憶は完璧に消してるからね」
どことなく寂しそうな顔をしているパルフェ。体勢が辛くなったのか、足を完全に投げ出している。
「そうか」
ウルカが淡々と返事をすると、彼女は歯切れの悪そうな表情を浮かべた。
「そっけないねぇ。『そんなこと言うな』とか、普通言うでしょ」
「会いたいなら、はっきりとそう言え」
「はいはい。今度会わせてください」
わざとらしい発音。しかしその中には、微かな喜びが混じっていた。




