表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界「ざまぁ」代行業者  作者: 田中なも
3-素晴らしき人間の栄華
64/151

28

 しばらくすると、鬼人たちは満足した様子で席から立ち上がった。想定外の客・コロネも、「はー! なんか久しぶりに、沢山食ったなー!」と喜んでいる。

「ううっ……、疲れた……」

 キッチンの奥で、へなへなと崩れるチャイ。ようやく、妹の催促から解放されたようだ。

「この度は、本当にありがとうございました」

 村の代表格である赤鬼の青年が、ウルカたちに向かって丁寧に頭を下げた。後ろの鬼人たちも、彼に倣ってお辞儀をする。

「ああ」

 ウルカは短く返事をして、ちらりとルーチェの顔を見遣った。青年の陰に隠れて俯いている彼。ついに、代価を支払うときだ。

「さて、報酬についてだが……」

 ビクッと肩を震わせるルーチェに、ウルカはゆっくりと近付いた。不安そうに見つめる彼の母親を横目に、彼の小さな肩に右手を置く。

「ティオ」

 ウルカの呼び掛けに顔を上げたティオは、彼の顔を見て「ふーん」と言って小さく笑った。彼の瞳が、どことなく穏やかだったからだ。

「僕の出番かな?」

「そうだ。こいつの髪を切る」

 

 ……その言葉を聞いたルーチェは、「えっ?」と驚きを露わにした。

「角じゃないのか……?」

「そのつもりだったが、気が変わった。おまえの髪の毛をいただこう」

 ルーチェの手を引っ張り、適当な椅子に座らせる。やや戸惑う彼をティオに預け、そのままヴァニラの下へと戻った。

「何で角じゃなくなったんだ……?」

「さぁ? 何でだろうね」

 首をかしげるルーチェに対し、ティオは大きな声で曖昧に言葉を返した。奥の席でじっと彼らの動きを見ているウルカに、ちらちらと視線を送っている。

「角は鬼人の誇りなんだろう?」

 角の折られたルーチェの仲間たち。完全な角が残っているのは、最早ルーチェしかいない。

「誇りは、おまえ守っていけばいい」

 ウルカのその口調は、少なからず優しさが含まれていた。

「ウルカ、自分で角を折るって提案したのに、どういう風の吹き回し?」

 彼の言葉の裏を薄々感じているティオは、ニヤニヤしながら彼に赤い瞳を向ける。この代替案、実にウルカらしくない。

「気が変わったと言っているだろう」

「へー。本当にそれだけ?」

「鬱陶しい」

 ウルカは面倒くさそうに左手を払い、さっと二人に背中を向けた。その後ろでは、胸が詰まったような表情を浮かべるルーチェの姿があった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ